株式会社NO NAME 代表取締役 安間信裕氏 × 株式会社FrankPR 代表取締役 松尾真希

前編では、株式会社NO NAMEの代表取締役・安間信裕さんに、東日本大震災を原点とする事業観と、太陽光×蓄電池による「電力を捨てない」マネジメントの哲学を伺いました。後編では、もうひとつの大きな問いに踏み込みます。再エネ普及と森林・生態系の保護をどう両立させるのか。多様な担い手とどう現場をつくるのか。そして、再エネで得た力を、地域の本物の伝統や若い世代へどう循環させていくのか。安間さんの「コントロールできないものに頼らない」という一本の軸が、開発の現場、組織のあり方、社会への還元という三つの層で、どう貫かれているかを聞きました。
3. 地域と生態系と共に — 開発エリアの「分類」という発想
松尾:再エネ普及と森林・生態系の保護は、しばしば対立軸として語られます。NO NAMEさんは、開発予定地を「積極的開発エリア」と「消極的開発エリア」に分けて運用されていると伺いました。この発想は、どこから生まれたのでしょうか?
安間:大切なのは、開発してよい場所と、慎重に扱うべき場所を、同じに見ないことだと思っています。民家や市街地が近いところ、希少な植物や希少な生物がいるところは、私たちも当然、把握しています。そこをどう除外して、開発を進めるのか。逆に、人が離れたところで、下流域に影響が出にくいところは、積極的に開発を進めてよい場所です。前者を「消極的開発エリア」、後者を「積極的開発エリア」として線引きし、それぞれにきちんとガイドラインを設けることが、再エネ開発に関わる事業者の責任ではないかと考えています。
松尾:実際に開発を進めるとき、どのような調査やルールに基づいて、その線引きを運用されているのですか?
安間:行政に開発申請を出すと、ここは貴重な鳥獣の生育区域だ、貴重な鳥類の餌場だ、貴重な植物がここにいるから伐採してはいけない、といった形で、きちんと管理されているんです。私たちもその情報を前提に判断します。たとえば川が近ければ、開発したときに泥水が川に流れて、清流で生きている魚が酸欠で死滅してしまう可能性があります。そういうことに関しては、絶対に遵守しなくてはいけません。私たちでいうと、調整池という、雨水が発電所から漏れ出て下流域に泥水や汚水を排出しないための設備があります。まずは安全設備をきちんと整える。そのチェックを受けて、それが行政に合格しない限り、本体の太陽光発電の工事はやってはいけない、というガイドラインが今あるんですよね。そういうところは、私たちも丁寧にやっていかなくてはいけないと思っています。
松尾:業界全体で、ルールを守らない開発を締め出していくという視点も大切にされていると伺いました。
安間:申請を出しているのに、違法に伐採範囲を拡大してしまうような事例も、残念ながらあるんです。そういうところは、社内でも厳しく関与しています。自分たちが何のために会社を立ち上げたのか、何を目指してこの事業をやっているのか、というところに立ち返ることが大切だと思います。日本の文化やルールを守らずに違法な開発をしているところは、業界としてもきちんと締め出さなくてはいけませんし、ルールを守る会社に対しては、きちんと開発を認めていく。そういう仕組みを業界全体で作らないと、本来の目的が達成できません。森林が失われれば、生態系だけでなく、地域経済、文化、観光業にも影響が出ます。だからこそ、地域と共生していく開発の考え方を、私たちはきちんと持ち続けたいと思っています。
4. 人を大切にする組織 — 多様な担い手と共に働く
松尾:名古屋市中村区を本社とする株式会社NO NAMEさんは、現場の担い手についても独自のお考えをお持ちだと伺いました。海外からの技能実習生、女性の現場作業員、ベテランの社員と、世代も国籍も異なる方々が同じ現場で働く環境を整えてこられたのですね。
安間:技能実習生に関しては、組合の方から「先進国の技術を、どう後進国と一緒に享受していくか」というお話を聞いたのがきっかけでした。私たちがきちんと教育・指導して、その技術を自国に持ち帰り、自分の国の発展に役立ててもらう。そして、きちんと稼げる形で代価を得てもらい、自分の国が豊かになるように取り組んでもらう。それで貧困や差別を解消していけるという話を聞いて、これは非常にいい活動だと思ったんです。特にミャンマーの若い方たちについては、軍事政権のもとで、男性は22歳までに出国しないと徴兵にかかるという厳しい状況があると伺いました。30歳までの間、自分の人生を生きられる環境を作ってほしい、というお話を受けて、それはやるべきだと思って受け入れています。年配の社員さんについても、大手で就業経験があり、60歳の定年を迎えて嘱託になり、給料が半分以下になってしまう方に積極的に声をかけています。私たちの会社は、求める能力を提供してくださる限り、70歳まで給与を変えず、雇用も継続します。その方たちは前職で培った経験と資格を惜しみなく発揮してくださっていて、若手への指導もしてくださる。実体験として教えてもらえることは、何にも代えがたいんです。女性の現場進出を希望されている方も、いまとても多いと感じます。ただ、私たちが受ける現場は山ですから、コンビニもないですし、雨が降ればびしょびしょになる。そういう環境の中で、どうやって女性社員に生き生きと働いてもらうかは、今まさに私たちの課題です。
松尾:「NO NAME」という社名にも、人を大切にされる思想が込められているように感じます。
安間:「自分は何者でもないよ」という思いから付けた社名なんです。建設業はまだまだ古い習慣が残っている業界で、上の人が偉い、下の人が言うことを聞く、というような関係になりがちです。でも、私たちの会社はそうじゃない。人を尊重して、活発なコミュニケーションが気軽にできる会社を作りたい。そういう思いを込めて「NO NAME」と名付けました。
5. 本物の伝統を支える社会循環ビジョン
松尾:再エネ事業で得た力を、地域の伝統や文化を支えることに循環させていきたい、というお考えをお持ちだと伺いました。その背景には、どんな問題意識があるのでしょうか?
安間:日本って、本当にお金に対する教育が遅れている国だと思うんですよね。金儲けというふうに目に映った時点で、汚いことをしている、悪いことをしているように思われる。結局、日本の本物の伝統を守ってくださっている方たちほど、本来はお金がものすごく苦しいんです。もっと買ってほしい、もっと高く売りたい、その思いに同調してくれる人からお金を集めたいと思っていても、世間の目があるから、本来やりたい目的を達成できない。それを本人や行政だけでなんとかするのは、もう難しい時代だと思っています。だからこそ、私たちのような企業がきちんと支援をして、その方たちを下支えする役割を担えると思うんです。中小企業の経営者が、そこに本気で取り組んでいくべきではないかというのが、私の一番の思いです。経営者をやっていれば、自分のステータスを高めることも重要ではあります。でも、それが高価な貴金属を身につけることや、いい車に乗ることではなくて、社会に対して、こういう経済活動をしている企業の務めとして、ある程度そこも担っていきましょうよ、という社会にできたら、本当にいいなと思っています。
松尾:最後に、これからを担う若い世代へ伝えたいことがあればお願いします。
安間:いまの若い方たちには、守りに入ってしまっている人が、非常にたくさんいるように感じます。若いときにしかできないチャレンジを、どんどんやってほしい。今の時代って、「そんな馬鹿なことをして」と言われるようなことでも、思いを持ってやり遂げた人が、賞賛を浴びるし、注目を浴びます。その人たちの言葉には、すごいメッセージ性があって、人を動かす力を持つ。私自身、震災のときも、分社のときも、周りから反対を受けながら一歩を踏み出してきました。だから、若い世代にも、自分の思いを大切にしてほしい。世界に誇るべき大切なものを残していくのは、結局、その思いを持ち続けた人たちなんですよね。
松尾:本日は貴重なお話をありがとうございました。震災を原点とする事業観から、太陽光×蓄電池の電力マネジメント、地域と生態系を守る開発の哲学、多様な担い手と共に働く現場、そして本物の伝統を支える社会循環まで、「コントロールできないものに頼らない」という一本の軸が、確かに見えてきました。
安間:ありがとうございました。

【企業情報】
株式会社NO NAME
所在地:愛知県名古屋市中村区名駅5-2-17 プログレス名駅2F
代表取締役:安間信裕
事業内容:再生可能エネルギー(太陽光発電・蓄電池)の開発・施工・運用、エネルギーマネジメント、建設業
主要なSDGs取り組み(前後編で言及した範囲):
- 目標7(エネルギーをみんなにそしてクリーンに) — 太陽光×蓄電池による昼夜電力マネジメント、余剰電力を「捨てない」運用
- 目標15(陸の豊かさも守ろう) — 「積極的開発エリア」「消極的開発エリア」の分類運用、調整池の事前設置、希少な植物・生物の事前調査
- 目標11(住み続けられるまちづくりを) — 行政の確認を前提とする運用と、地域経済・文化・観光との共生
- 目標5(ジェンダー平等を実現しよう) — 女性現場作業員・現場管理候補者の積極採用と環境整備
- 目標8(働きがいも経済成長も) — 60〜70歳の継続雇用(給与維持)、経験者から若手への現場指導
- 目標10(人や国の不平等をなくそう) — 海外からの技能実習生の受け入れと、自国の発展に資する技術移転
- 目標13(気候変動に具体的な対策を) — 再エネ普及を通じた脱炭素貢献






