株式会社エクシオジャパン 代表取締役社長 佐伯猛氏 × 株式会社FrankPR 代表取締役 松尾真希
6月11日は、国連が定めた「世界遊びの日(International Day of Play)」です。遊びが子どもの発達や学び、心身の健やかな成長に欠かせないものであることを、世界全体で再確認する日として2024年に制定されました。遊び、読書、そして人との関わりを通じて育っていく子どもに、大人がどう寄り添うか。この問いを事業の根幹に据えてきたのが、株式会社エクシオジャパンです。
「お客さんに喜んでもらえる仕事をしたい」。この一点を軸に、保険代理店から婚活、ウェディング、そして保育・保育ICTへと事業をピボットさせてきたのが、株式会社エクシオジャパン代表取締役社長の佐伯猛氏です。現在はサンライズキッズ保育園を全国54園で運営し、自社開発の保育ICTシステムと保育園運営という両輪で事業を展開。親会社である株式会社エクシオホールディングス(TOKYO PRO Market上場)の子会社として、一般市場への上場準備も進めています。
「子どもの育成に大人がどう寄り添うか」というテーマで事業全体を貫く佐伯氏に、世界遊びの日を前に、サステナビリティとビジネスを横断する視点でインタビューを行いました。
子どもの「言葉の貧困」に挑む
松尾:本日はよろしくお願いいたします。御社のサンライズキッズ保育園 伊丹園が、令和8年度「子供の読書活動優秀実践校・園」として文部科学大臣表彰を受けたと伺いました。子どもの貧困を経済・言葉・体験・社会といった複数の側面から捉える考え方がありますが、御社はその中でも「言葉」に焦点を当てた読書プログラムを展開されていますね。
佐伯社長:今おっしゃっていただいたように、私たちは「言葉の貧困」にスポットを当てています。すべての園の園児さんたちが、言葉をしっかりと理解でき、将来に向かって蓄えていけるような語彙数や使い方を身につけてほしい——読書を通じてそれを学んでもらおうということで、全園で読書を強化しています。
松尾:4つの側面の中で、なぜ「言葉」を起点に選ばれたのでしょうか。
佐伯社長:語彙力や表現力が育てば、相手に何かを伝えられるようになります。そこから他の貧困、たとえば社会の貧困や体験の貧困にもつながっていくのではないかと思っているからです。
松尾:言葉を持たないと、必要な情報を得たり、人との関係をつくる力が育ちにくいですね。読書で語彙と思考の幅を広げることは、他の貧困解消の起点になります。これはSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」、そして目標1「貧困をなくそう」にもつながる取り組みだと思います。
佐伯社長:また、英語教育もうちの大きな特徴です。もともとインターナショナル保育園がこの会社のスタートだった経緯もあって、英語に取り組む姿勢は他園よりも高いと自負しています。0歳・1歳・2歳という一番育ち盛りの時期に、脳のシナプスに日本語だけでなく英語の語学が将来活きるような形でカリキュラムを組んでいます。
松尾:卒園後の保護者の方からの反応はいかがですか。
佐伯社長:3歳から他の園や幼稚園に移られたお子さんでも、「サンライズで0〜2歳のときに学んだから、いま小学生レベルの英語力がついている」と言っていただけることが多いですね。
「フラットに人を見た結果」——ジェンダー平等を体現する組織
松尾:御社のホームページを拝見したときに、女性管理職比率の高さに驚きました。PRIDE指標も2021年にゴールド認定を取得されていますし、性的指向や性自認に関する差別禁止を従業員行動指針に明記されていますよね。「女性活躍」「ダイバーシティ」を意識的に設計されたのかなと思ったのですが。
佐伯社長:実は結論から言うと、結果として女性が多かった、ということなんです。優秀な方が女性に多かった。男性を上に上げないとか、女性を上に上げたいとか、そういう考え方ではなく、本当にフラットに「この人を見て」と判断した結果、いまの会社の中で活躍しているのが女性が多くなったということです。
松尾:副社長も女性でいらっしゃるんですよね。
佐伯社長:はい。彼女は婚活事業の頃から一緒にやってきてくれているスタッフです。本当にたまたまだったのですが、フラットに人を見るという姿勢を続けていたら、結果的にこういう構成になりました。
松尾:「壁を作らない」採用と登用の姿勢が、長く保たれてきた証だと思います。男性保育士の積極登用も拝見しましたが、業界では男性保育士を採用しない園もあると伺います。
佐伯社長:そうですね、保育園では男性保育士を採用しないという園が結構あるのですが、私たちはそこを違うと考えています。全国の保育園の中には、他の施設で発生した過去の報道などを背景に、男性保育士の採用に慎重なところもあります。ただ、私たちは、しっかりとした管理体制さえ整えれば、男性保育士も園児さんの保育に十分役立てると考えています。むしろ、子どもたちが多様な大人に囲まれて育つことには大きな価値があると思っています。
松尾:「多様な大人に囲まれて育つ」こと自体が教育的価値である、という視点は、保育の枠を超えた組織設計の話ですね。SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」と目標10「人や国の不平等をなくそう」に通じる考え方です。子どもたちの世界観は、毎日関わる大人の多様性から形成されますから、男性保育士を当たり前に受け入れる環境は、社会的なメッセージにもなります。
残業月3〜5時間——働きやすさが生む保育の質
松尾:保育業界全体で人材確保が課題となっています。御社では離職率が下がり続けているとお聞きしました。
佐伯社長:私たちも保育士さんが仕事を続けていく上で気にされるポイントは、有給取得率、育休・産休取得率、残業時間、休日出勤だと感じています。そこで業界内のICTチームを通じて自社で保育業務支援システムを開発し、現場の業務効率化を進めてきました。
松尾:定量データで言うと、どのくらい変わりましたか。
佐伯社長:保育士さんの残業時間は、年間の累計で見ると本当に少ないですね。1か月だいたい3〜5時間程度です。出社時間の前に少しだけ早く来た数分まで全部累計してそれくらいの水準です。これが他社さんと比べたときに、現役の保育士さんがメリットを感じてくれている部分だと思います。離職率も2024年度の16.3%から2025年度は12.2%へと下がっており、年々改善が続いています。
松尾:1年で4.1ポイントの改善は、保育業界の人材確保が大きな課題となっているなかで非常に意味のある数字ですね。残業時間の削減・ICT化・登用の多様性が、定量的な「居続けられる職場」のシグナルとして効いているのがよくわかります。保育園を運営する会社が、自分たちでICTシステムまで開発している点が大きな強みだと思います。
佐伯社長:そうなんです。現状の児童福祉施設を運営している実体験を、そのままシステム開発に反映できる。これがシステム会社さんだと、現場の困りごとを理解してソフトに転換するまでに時間がかかってしまう。両輪でやっているメリットは大きいと感じています。一時預かりや、入退室確認のような仕組みも、まさに保育の現場で「こうなれば職員も保護者も助かる」というところから生まれたものです。
松尾:それは**SDGs目標8「働きがいも経済成長も」と目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」**を、ご自身の事業の中で重ね合わせて実践されている形ですね。定年廃止も導入されたと伺いました。
佐伯社長:はい。年齢が高い方の仕事ぶりを見ていたときに、年齢が高いから仕事ができなくなっているわけではないと感じたんです。一年ごとに健康診断と面談で支障がないかを確認したうえで、定年は廃止しています。いま70代の方々にも活躍していただいています。あとは男性育休、(一部保育園では)選択的週休3日制度なども取り入れています。寿命も健康寿命も延びていますし、長く働きたい方が長く働ける仕組みは、これからの社会には不可欠だと思っています。
松尾:今は、職種によっては地方在住のままリモートで働き、子育てや介護と両立しながらキャリアを続ける方も増えています。一方で、保育の現場は人と人が直接向き合う仕事だからこそ、「働ける時間・年齢・ライフステージ」の幅をどれだけ広げられるかが、人材戦略の中心になりますね。御社の定年廃止・男性育休・選択的週休3日の組み合わせは、その潮流を現場型の仕事に落とし込む制度設計だと思います。
「小さく始めて大きく育てる」——持続可能な経営と上場準備
松尾:御社は親会社のエクシオホールディングスがTOKYO PRO Marketに上場され、いま一般市場への上場を準備されていますね。10年後にエクシオジャパンが社会に残したいものとは何でしょうか。
佐伯社長:まず大きな前提として、事業の成長と社会貢献は両輪でやらないと、どちらか一方だけでは必ず行き詰まると感じています。中期経営計画では3年後、5年後を見据えていて、売上・利益も2倍以上には伸ばしていきたい。ただ、少子化という社会背景の中で保育事業だけで伸ばすのは難しいので、少し新しい領域にもトライしていく必要があります。
松尾:その新規事業の進め方が独特だと感じていました。「小さく始めて大きく育てる」哲学をずっと貫いていらっしゃる。
佐伯社長:その通りです。最初から大きく投資するのではなく、小さく始めて、うまくいったら広げる。たくさん失敗もしないと成功するものも見つからないので、まずやってみる。そしてそこにお客さんの笑顔と喜びがあれば、それを大きく育てる。これは保険から婚活、保育まで一貫してやってきたやり方です。
松尾:上場準備の動機もとても印象的でした。
佐伯社長:上場で一番したいのは、人材確保と、これまで会社を支えてくれたスタッフへの還元です。ストックオプションを長年配ってきたので、上場すれば「この会社で働いていてよかった」と思ってもらえる。それが一番の目的なんです。
松尾:これから入ってくる若い世代は、サステナビリティに取り組んでいるかどうかで会社を選びます。**SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」や目標11「住み続けられるまちづくりを」**の文脈で、自治体や地域との連携、サステナビリティ開示の高度化も合わせて進めていただきたいですね。
佐伯社長:おっしゃる通りです。サステナビリティに取り組んでいる会社という目線で、優秀な人材に選ばれる会社にしていかないと、これからの企業は成長できない。事業成長とサステナビリティの両輪で進めていきたいと思っています。
松尾:「お客さんの笑顔から始まり、働く人の人生に報いる」という一貫した経営観が、結果としてSDGsの幅広いゴールに自然に接続しているのがよくわかりました。本日は貴重なお話をありがとうございました。
佐伯社長:ありがとうございました。
【企業情報】
株式会社エクシオジャパン 所在地:神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー38F 代表取締役:佐伯 猛 事業内容:サンライズキッズ保育園を全国54園で運営、保育ICTシステム開発(AZUKARI/すくすく/降りたよシステム/Hoic 他)、保育士資格取得支援 親会社:株式会社エクシオホールディングス(TOKYO PRO Market 362A)
主要なSDGs取り組み:
- 目標4・1:読書プログラムによる「言葉の貧困」解消、0〜2歳からの英語教育
- 目標5・10:女性管理職が多く活躍する組織、男性保育士の登用、PRIDE指標ゴールド(2021年)
- 目標8・9:自社開発の保育ICTによる保育士の業務効率化(離職率を2024年度16.3%→2025年度12.2%へ改善)、定年廃止、男性育休、選択的週休3日
- 目標11・17:全国18都府県での認可小規模保育園展開、自治体・地域・専門機関との連携


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