はじめに

「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野広大です。9月も大雨が続き、事業所の安全確認が必要です。結論から言えば、土砂災害への備えでは、自社の拠点が警戒区域にあるかどうかが重要な判断材料の一つです。区域外でも地形や周辺状況、避難情報を確認する必要があります。今回は、国土交通省第4報(9月6日10時時点)をもとに、企業が早期に確認すべき点を整理します。(出典

土砂災害警戒区域とは

土砂災害警戒区域とは、土砂災害防止法に基づき、土石流・急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)・地すべりによって住民等の生命または身体に危害が生じるおそれがあるとして都道府県が指定した区域のことです。土砂災害特別警戒区域は、警戒区域のうち、建築物に損壊が生じ、住民等の生命または身体に著しい危害が生じるおそれがあるとして指定される区域です。全国治水砂防協会が国土交通省の公表値を集計した資料によると、2026年6月30日現在の指定は全国で721,014区域、うち特別警戒区域は621,287区域です。内訳は土石流222,068区域、急傾斜地の崩壊482,534区域、地すべり16,412区域となっています(出典: 全国治水砂防協会「各都道府県における土砂災害警戒区域等の指定状況」)。この規模を踏まえ、各拠点の地形・区域指定・避難経路を個別に確認することが重要です。

SDGsニュース(国土交通省第4報): 令和8年台風第24号及び前線による大雨による被害状況等について(第4報)(国土交通省・2026年9月6日10時00分現在)

SDGsニュースの要約

国土交通省が公表した災害情報第4報によると、2026年9月5日に鹿児島県の種子島・屋久島地方で線状降水帯が発生し、鹿児島県屋久島町では24時間雨量が観測史上1位を更新する490ミリ超の記録的な大雨となりました。屋久島町を含む対象地域では5時10分から11時30分まで、「レベル5土砂災害特別警報」が発表されています。9月6日6時30分時点では、青森県・秋田県・東京都・鳥取県・島根県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県の8都県53市町村に、「レベル4土砂災害危険警報」が発表され、うち東京都の1町で継続中とされました。土砂災害そのものは9月5日19時時点で新潟県2件、青森県1件が確認され、人的被害・人家被害はいずれも報告されていません。「レベル5土砂災害特別警報」「レベル4土砂災害危険警報」は正式な防災気象情報の名称であり、自治体が発令する避難情報とは区別して確認してください。以下の数値はいずれも同報告時点の速報値です(出典: 国土交通省 災害情報 第4報)。(出典気象庁:特別警報、危険警報、警報、注意報、気象情報国土交通省:レベル4土砂災害危険警報

SDGsニュースのポイント

  • 屋久島町の24時間雨量は観測史上1位を更新する490ミリ超
  • 「レベル5土砂災害特別警報」は9月5日5時10分から11時30分まで発表
  • 「レベル4土砂災害危険警報」は8都県53市町村に発表(9月6日6時30分時点)
  • 確認された土砂災害は新潟県2件、青森県1件(9月5日19時時点)
  • 屋久島町では水道管の破損により最大289戸が断水
  • 都道府県道等では5道県9区間が被災により通行止め
  • 前線は台風や熱帯低気圧の影響で活動が活発な状態が続く見通し(出典

SDGsニュースを考察

第一に、「件数が少ない年」でも被害の起きる場所は選べないという点です。国土交通省が2026年3月31日に公表した集計では、2025年(令和7年)の土砂災害は37都道県で578件でした。S57(昭和57年)からR6(2024年)までの平均1,116件を大きく下回りますが、これは梅雨期の少雨傾向が影響したものであり、火山噴火や林野火災の跡地からの土砂流出という特徴的な被害も記録されています(出典: 国土交通省「令和7年の土砂災害発生件数を公表」)。年間の合計が少なくても、各拠点の地形・区域指定・避難経路を確認したうえでリスクを評価する必要があります。

第二は、事業継続の観点ではアクセスの遮断も操業に影響し得ることです。今回の第4報では人的被害・人家被害は報告されていない一方、道路の通行止めや断水が報告されています。従業員の通勤経路、原材料の搬入路、配送ルートのいずれか一つが土砂で塞がれると操業に影響する可能性があります。持続可能なまちづくりの議論と同じく、企業側も「点」ではなく「線」で自社の脆弱性を見る必要があります。

第三は、脱炭素の取り組みと豪雨への備えを、別々の課題にせず事業継続の計画へ接続することです。排出削減を進める担当と防災・BCPを担う担当が、拠点やサプライチェーンのリスクを共有すると、対策の抜けを見つけやすくなります。マテリアリティ分析の重要課題に自然災害リスクを明記している企業は、この接続を検討しやすい状態です。

私たちにできること

第一に、全拠点の住所をハザードマップで確認する: 国土地理院の「重ねるハザードマップ」で、本社・工場・倉庫・主要な取引先の住所を土砂災害の区域表示に重ねます(ハザードマップポータルサイト)。国土交通省によれば、土砂災害警戒区域は住民等の生命・身体に危害が生じるおそれがある区域、土砂災害特別警戒区域は建築物の損壊によって著しい危害が生じるおそれがある区域です(土砂災害対策の推進)。警戒区域か特別警戒区域かを確認し、法規制上の違いと、避難経路・業務停止の判断を分けて整理します。

第二に、避難の判断基準を数値だけに頼らず、公的な情報名で決めておく: 「雨がひどくなったら」ではなく、自治体の避難情報や気象庁・国土交通省などが発表する防災情報を確認し、対象地域と発表主体を社内ルールに書きます。判断者が不在でも動ける状態にしておくことが要点です。

第三に、停電・断水・道路遮断の3点をBCPに書き込む: 今回の事例で確認されたのは断水と通行止めでした。飲料水の備蓄、代替搬入路、在宅勤務への切り替え手順を1枚にまとめておきます。中小企業では、中小企業向けの支援策を使って計画づくりを進める方法もあります。

締め

土砂災害は、起きてから対応を考える余地がほとんどない災害です。国土交通省第4報(2026年9月6日10時00分時点)が示す前線や台風の見通しを踏まえ、報告対象地域では大雨への警戒が必要です。まずは拠点の住所を地図に重ねるところから始めるのが現実的です。(出典