脱成長ビジネスは実装できるのか|研究者が示した8つの評価基準
「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野広大です。本稿では、元記事が示す脱成長ビジネスの評価基準と事例を紹介します。
脱成長ビジネスとは
この記事では、脱成長ビジネス(Post-growth business / Degrowth business)を、売上や利益の継続的拡大を目的化せず、生態的な限界と地域社会への貢献を考慮する事業モデルとして扱います。所有構造・ガバナンス・地域性・生産量の上限までを設計対象とし、単なる小規模化ではなく、拡大を当然とする前提を問い直します。
最新のSDGsニュース: 成長を前提としないビジネスは可能なのか?研究者が語る『脱成長ビジネス』の基準と現在地(IDEAS FOR GOOD・2026年8月18日)
SDGsニュースの要約
IDEAS FOR GOOD 2026年8月18日の記事(Megumi Ito執筆)は、国際脱成長ネットワーク(IDN)のビジネス・実践サークルで活動するイェンドレク・ナドルニ氏とジョシェル・ラグイポ=ストシャコフスカ氏へのインタビューを掲載しました。ナドルニ氏はバルセロナ自治大学(UAB)の脱成長修士課程への進学歴を持つIDNメンバーです。ラグイポ氏は2024年にダブリンシティ大学で博士号(PhD)を取得し、IDNで脱成長ビジネス基準策定の共同リードを務めています。記事は8つの評価基準(利益との関係性・所有構造/ガバナンス・地域性・目的・充足性・コンヴィヴィアリティ・自律性・脱植民地性)を紹介しました。事例として、所有権を2022年に移転したパタゴニア、ドイツの修理コミュニティKreisler、廃棄衣料を再利用するRe-Action Collective、年間生産量を制限する英国のWildishなどが取り上げられています。権限と利益の関係を組み替える選択肢として、スチュワード・オーナーシップも紹介されています(出典: IDEAS FOR GOOD原記事)。
SDGsニュースのポイント
- 脱成長ビジネスは「拡大しないと持続しない」前提を疑う実践研究テーマ
- 研究者が8つの評価基準を提示(所有構造・ガバナンス・地域性ほか)
- パタゴニアは2022年に所有構造を変更。詳細はパタゴニア公式説明に記載
- Kreislerは修理コミュニティ、Re-Actionは廃棄衣料の再利用に特化
- Wildishは年間生産量に上限を設ける英国アパレル
- 「権限と利益の分離」を担う法的仕組みとしてスチュワード・オーナーシップに注目
- 単なるサイズダウンではなく、事業目的そのものの再定義が本質
- 編集部の考察: 日本の中小企業・地域企業にも応用を検討できる視点
- 出典: IDEAS FOR GOOD原記事
SDGsニュースを考察
脱成長ビジネスは「成長の禁止」ではなく「成長の非目的化」だという点です。売上が伸びることを否定せず、経営判断の主軸を成長率だけでなく、地域・従業員・生態系への貢献へ移します。CSRとSDGsの関係を事業目的と接続する視点として、編集部の考察に値します。
第二の論点は、サーキュラーエコノミーとの接続です。KreislerやRe-Actionは、サーキュラーエコノミーの実装を考える際の事例として読めます。修理・リユース・アップサイクルなど、モノを長く使う事業をどう設計するかが問われます。アップサイクルやサステナブル消費との接続は編集部の考察であり、日本の修理店やリユース事業者を考える手がかりになります。
第三は、「スチュワード・オーナーシップ」という考え方です。Purposeの公式説明では、会社の自己決定と目的志向を中核に置き、利益を使命や長期的な発展の手段として扱います(Purpose公式の定義)。パタゴニアは公式説明によると、2022年に所有権を移転し、Holdfast Collectiveが会社の98%と全非議決権株式、Patagonia Purpose Trustが2%と全議決権株式を保有しています。営利企業のままで、Purpose Trustが重要な意思決定を守り、再投資後の利益はHoldfast Collectiveへ配当されます(パタゴニア公式説明)。この二つを一般化せず、国内で検討する場合は個別の法的構造を専門家に確認します。サステナビリティ経営やマテリアリティ分析とは、目的を整理する視点として接続できます。
私たちにできること
自社の「最大化しているもの」を書き出す: 売上・利益・シェアなど何を最大化しているかを言語化し、それ以外の指標(従業員の定着、地域からの信頼、資源循環率など)に置き換える余地はないかを検討します。これはサステナビリティ経営の第一歩です。
生産量・提供量の「上限」を持てるか試算する: Wildishのように「作りすぎない」上限を先に決める考え方を、自社の需要予測や原材料のサステナブル調達と照らして検討します。価格や品質をどう設計するかは、個別の顧客・市場条件を踏まえて判断する必要があります。
事業承継の選択肢として所有構造を再検討する: 後継者問題を抱える経営者は、事業売却・廃業以外に「事業目的を守る所有構造」があり得ることを知ったうえで、会社法・信託・税務などの専門家に個別相談します。本稿の海外事例を、そのまま国内制度へ当てはめないことが重要です。
締め
脱成長ビジネスは、今回のニュースが示すように、成長を事業の唯一の目的としない設計を考えるための具体的な論点です。どの地域・業種でどこまで実装できるかは、事業条件によって異なります。また、無限成長を前提とする経営と環境・地域社会との関係をどう評価するかも、企業ごとに検討すべきテーマです。「知恵袋」編集部としては、日本の中小企業・地域企業が次の事業計画や承継を議論するとき、8つの評価基準(IDEAS FOR GOOD原記事)を問いの一覧として持ち込むことをおすすめします。



