スコープ2改訂案を読み解く|非化石証書の扱いはどう変わる?

スコープ2改訂案とは、購入電力由来の排出量算定で、電力の使用時間と発電時間、系統上のつながりなどを考慮する提案です。「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野広大です。第1回公開協議は2025年10月20日から2026年1月31日までで終了し、2026年7月29日に回答概要が公開されました。現在は複数の報告アプローチを含めて再検討中で、最終標準は確定していません(オルタナの報道GHG Protocol公式フィードバック概要)。

スコープ2削減の改訂案とは

改訂案の主な論点は、契約手段を電力使用と時間単位で対応させるアワリーマッチングと、発電した電力が需要地点へ届き得る地域から調達するデリバラビリティです。公開協議にかけられた案では、大規模組織にアワリーマッチングを求める一方、一定の閾値を下回る小規模組織は免除し、年間マッチングを続けられる仕組みも示されました。免除の具体的な閾値や、契約手段・経過措置の最終的な扱いは未確定です(GHG Protocol公式フィードバック概要)。

最新のSDGsニュース: スコープ2のGHG削減「非化石証書を買えば済む時代は終わった」(オルタナ・2026年8月17日)

SDGsニュースの要約

オルタナは2026年8月17日、年間の証書購入だけではスコープ2削減として十分に評価されなくなる可能性と、アワリーマッチング、デリバラビリティという論点を報じました(オルタナの記事)。GHG Protocolの公式集計では、回答は56カ国から約1,100件。両提案への支持は全体として低い一方、実施可能性を確保する免除措置には幅広い支持がありました。GHG Protocolは複数のマーケット基準報告アプローチをさらに検討するとしています(公式フィードバック概要)。再生可能エネルギーの調達では、現行ルールを守り、最終標準を先取りして断定しない姿勢が重要です。

SDGsニュースのポイント

  • 第1回公開協議は2025年10月20日から2026年1月31日までに終了(GHG Protocol公式
  • 改訂案の論点1: アワリーマッチング(時間帯別の再エネ調達)
  • 改訂案の論点2: デリバラビリティ(系統上のつながり)
  • 2026年7月29日に、56カ国・約1,100件の回答概要を公表
  • 回答を受けて複数の報告アプローチを再検討中
  • 小規模組織をアワリーマッチングから免除する案もある
  • 年間帳尻だけの証書購入による主張を見直す議論
  • 最終標準と免除の具体的な閾値は未確定

SDGsニュースを考察

まず押さえておきたいのは、この動きは「非化石証書が使えなくなる」と決まった話ではないという点です。公開協議にかけられた案は、同じ証書でも時間と地域の対応を厳しく見る方向を示しました。しかし、公式集計ではアワリーマッチングとデリバラビリティへの支持が低く、実務負担や市場参加への影響を懸念する意見も確認されています。GHG Protocolは回答を受けて案を改めて検討しており、協議案をそのまま「新ルール」と呼ぶのは正確ではありません(GHG Protocol公式フィードバック概要)。

第二の論点は、中小企業一般にアワリーマッチング対応が必要と決まったわけではないことです。協議案は一定の閾値を下回る組織を時間単位の対応から免除し、年間マッチングを認める設計を含み、公式概要では「多くの組織」を免除する実施可能性措置への幅広い支持も報告されました。具体的な閾値は再検討中です。中小企業は一律対応を前提に投資するのではなく、自社の電力使用量や報告義務、契約更新時期を整理し、必要に応じて証書の時間・地域情報を電力会社へ確認するのが現実的です。サステナブル調達として説明できる範囲も同時に確認しましょう。

第三は、標準改訂を待つ間も、現行の算定と実際の排出削減を混同しないことです。企業は自社のエネルギー効率向上再エネ導入を実測ベースで進め、証書による算定上の扱いと、設備・運用改善による削減を分けて記録できます。サステナビリティ経営では、現行基準での報告、任意の先行対応、将来の標準変更に備えた検討を区別することが、過大な主張を避ける助けになります。

私たちにできること

第一に、現行ルールと検討案を分けて管理する: 現在の算定方法を維持しながら、改訂案で論点になった時間、地域、証書の情報が自社で取得できるかを一覧にします。免除の閾値や最終要件が未確定であることも社内資料に明記しましょう。

第二に、必要性を見極めて電力会社へ確認する: 大量の電力を使う組織、任意で先行対応したい組織、長期契約の更新が近い組織は、時間帯マッチングへの対応状況や証書の地域情報を確認できます。小規模組織は一律対応を前提にせず、最終標準と免除基準を見ながらカーボンニュートラルの計画へ反映します。

締め

第1回公開協議は終了し、GHG Protocolは約1,100件の回答を踏まえて改訂案を再検討しています。アワリーマッチングとデリバラビリティは論点として残る一方、小規模組織の免除や経過措置など最終設計は未確定です(GHG Protocol公式フィードバック概要)。2026年最新の状況は「協議済み・再検討中・最終標準未確定」です。現行ルールと任意の先行準備を分け、次の公式提案を確認してから投資を判断しましょう。