SDGs・脱炭素の用語

【用語解説】マテリアリティ分析とは?企業の持続可能性を高める重要課題の特定方法

マテリアリティ分析の概要

マテリアリティ分析とは

企業が持続可能な発展を目指す上で、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定するプロセスのことです。企業を取り巻く様々なステークホルダーの関心事項と、企業の経営戦略や事業活動に与える影響度を分析し、優先的に取り組むべき課題を明確にします。

マテリアリティ分析の手順は、一般的に以下のようになります。まず、自社を取り巻く社会課題やステークホルダーの関心事項を幅広く洗い出します。次に、それらの課題が自社の経営や事業に与える影響度を評価します。そして、ステークホルダーの関心度と自社への影響度の両面から優先順位付けを行い、マテリアリティを特定します。最後に、特定したマテリアリティに対する目標設定や施策の立案、進捗管理を行います。

企業への影響

マテリアリティ分析は、企業にとって様々なメリットをもたらします。

まず、自社の強みや課題を再認識し、経営資源の適切な配分につなげることができます。また、ステークホルダーとの対話を通じて、その関心事項や期待を深く理解することができ、エンゲージメントの深化につながります。

加えて、マテリアリティに基づいた目標設定や施策の実行は、企業の持続可能性を高め、長期的な企業価値の向上に寄与します。ESG投資の拡大を背景に、マテリアリティへの取り組みは投資家からの評価向上にもつながります。さらに、社会課題の解決に向けた取り組みは、社員のモチベーション向上や優秀な人材の獲得にも好影響を与えます。

一方で、マテリアリティ分析には課題もあります。ステークホルダーの関心事項は多岐にわたるため、優先順位付けが難しいケースもあります。また、特定したマテリアリティに対する施策の実行には、一定のコストや体制整備が必要となります。しかし、長期的な視点に立てば、マテリアリティへの取り組みは企業の持続的成長に不可欠と言えるでしょう。

主な事例

1.花王は、2019年にマテリアリティ分析を実施し、「コミュニティ」「カーボンゼロ社会」「資源循環型社会」など19のマテリアリティを特定しました。

各マテリアリティに対して、2030年までの目標を設定し、具体的な施策を推進しています。例えば、「カーボンゼロ社会」に向けて、再生可能エネルギーの導入拡大や、製品のライフサイクル全体でのCO2排出量削減に取り組んでいます。

2.株式会社FrankPRが運営する革製品ブランド「ラファエロ」は、バングラデシュの工房で再生可能エネルギーを利用した事業運営を行っています。

また、シングルマザーの雇用支援や障がい者の活躍推進にも取り組み、ダイバーシティ経営を実践しています。加えて、純利益の10%を現地の教育支援に寄付するなど、サステナビリティ活動に多角的に取り組んでいます。これらの活動は、同社のマテリアリティ分析に基づいた取り組みと言えるでしょう。

3.三井物産は、2020年にマテリアリティ分析を実施し、「気候変動」「サーキュラーエコノミー」「事業と人権」など5つのマテリアリティを特定しました。

各マテリアリティに対して、2030年までの目標を設定し、事業活動を通じた社会課題の解決に取り組んでいます。例えば、「気候変動」に対しては、再生可能エネルギー事業の拡大や、脱炭素技術の開発支援などを進めています。また、マテリアリティの特定プロセスでは、社外有識者との対話を重ね、客観的な視点を取り入れています。

まとめ

マテリアリティ分析は、企業が持続可能な発展を目指す上で欠かせないプロセスです。

自社の強みや課題を再認識し、ステークホルダーとの対話を深めることで、長期的な企業価値の向上につなげることができます。また、社会課題の解決に向けた取り組みは、社員のモチベーション向上や人材獲得にも好影響を与えます。

一方で、マテリアリティの特定や施策の実行には課題もあります。ステークホルダーの多様な関心事項から優先順位付けを行うことや、施策実行のためのコストや体制整備が必要となります。しかし、花王やラファエロ、三井物産の事例からもわかるように、マテリアリティへの取り組みは企業の持続的成長に不可欠です。

私たち一人ひとりも、消費者や投資家としての選択を通じて、企業のマテリアリティ経営を後押しすることができます。企業とステークホルダーが協力し合い、持続可能な社会の実現に向けて歩んでいくことが求められています。マテリアリティ分析は、そのための重要な一歩となるでしょう。