ニュースの要点

国連食糧農業機関(FAO)が、各国政府向けの「統合的土地利用計画(ILUP)ガイドライン」を大きく改訂しました。

食料生産、気候変動対策、生物多様性保全、土地劣化の回復を一体で計画する手法を示し、地域住民や土地利用者を意思決定の中心に置く点が特徴です。

土地をめぐる需要が高まるなか、計画づくりの進め方そのものを見直す動きといえます。

Sustainable Japanの報道(2026年11月2日公開)によると、FAOは10月29日、国連生物多様性条約第17回エレバン締約国会議(CBD COP17)の場で改訂版を発表しました。

1993年の策定以来、初めての大規模改訂とされています。

改訂では、地理空間技術、デジタル情報システム、土地評価、多基準分析、意思決定支援システムといった分野の進歩が反映されました。

土地の状態や用途の選択肢を、データに基づいて比較・検討しやすくする方向性がうかがえます。

計画の進め方については、行政主導で土地の用途を決める従来型から、地域住民や土地利用者を意思決定の中心に据える仕組みへの転換が重視されています。

科学的なデータと、関係者どうしの協議・交渉を組み合わせる点がポイントです。

改訂の背景にある土地需要の高まり

背景として挙げられているのは、限られた土地・土壌・水資源に対する需要の増大です。

同じ報道で紹介されたFAOの推計では、2050年の農業には、2012年比で食料、飼料、バイオ燃料、繊維の生産量を約50%増やすことが求められるとされています。

その一方で、人為的な土地劣化の60%超は農地や牧草地で発生しているといいます。

生産基盤の劣化が進むうえ、都市化やインフラ開発も土地需要を押し上げています。

報道は、用途ごとに個別最適を追求する方法では、食料安全保障と自然環境の維持を両立しにくくなっていると伝えています。

SDGs・脱炭素の視点で何が重要か

今回の改訂で注目したいのは、食料、気候、生物多様性、土地の回復を別々の課題としてではなく、同じ土地の上で調整すべきテーマとして扱っている点です。

複数の目標が一つの土地で重なり合う現実を、計画手法に落とし込もうとする試みと読み取れます。

どの目的を優先するかを、データと対話で決めていく姿勢が示されています。

土地は食料を生む場所であると同時に、生きものを育み、気候にも関わる場所です。

ある用途を広げれば別の価値が損なわれる可能性もあり、こうしたトレードオフを見える化して関係者が納得できる落としどころを探る道具として、ガイドラインが位置づけられていると考えられます。

生物多様性の基本は生物多様性と私たちの暮らしの関係を解説した記事、脱炭素の全体像はカーボンニュートラルの意味と世界の取り組みの解説で整理しています。

農業の視点では、生産量の拡大と土地劣化の抑制を同時に求められている点が重い課題です(元ニュース)。

強靭(レジリエント)な農業の実践を考える記事で扱ったように、生産性と環境の持続性を両立させる取り組みは、今後いっそう問われると見られます。

もう一つ重要なのは、地域住民や土地利用者を中心に据える参加型の発想です。

行政だけで用途を決めると、現場の知見や暮らしへの影響が見落とされやすくなります。

合意形成のプロセスを重視する考え方は、企業が取り組むステークホルダー・エンゲージメントとも重なります。

企業や生活者が確認したいこと

ガイドラインは各国政府向けですが、土地に由来する原材料を扱う企業にとっても無関係ではありません。

各国の土地利用計画にこの考え方が取り入れられていけば、調達先の地域で土地の使い方をめぐる議論が変わる可能性があります。

自社のサプライチェーンがどの土地とつながっているかを把握しておくことが、出発点になりそうです。

企業が確認しておきたい観点として、編集部では次のような項目を挙げます。

  • 原材料の産地で、農地の拡大や土地劣化が課題になっていないか
  • 調達方針に、生物多様性や土地の回復への配慮が含まれているか
  • 産地の地域住民や生産者と対話する機会を持てているか
  • 産地の情報を追跡できる仕組みがあるか

調達の考え方はサステナブル調達の解説、産地を追跡する仕組みはトレーサビリティの解説が参考になります。

なお、ガイドラインの詳しい内容は元記事でも有料会員向けの部分にあたり、本稿で確認できる範囲は限られます。

具体的な手法を検討する際は、FAOが公表する一次資料にあたることをおすすめします。

生活者にとっても、食品や衣料品の背景にある土地へ目を向けるきっかけになります。

食料、飼料、バイオ燃料、繊維といった用途は、日々の食卓や衣服とつながっています。

まとめ

FAOによるILUPガイドラインの改訂は、限られた土地をどう使うかという問いに対し、統合的で参加型の計画手法を示したものです。

Sustainable Japanの報道によれば、1993年の策定以来初の大規模改訂で、CBD COP17の場で発表されました。

食料生産の拡大が求められる一方で、農地や牧草地での土地劣化も大きな課題となっています。

食料安全保障と自然環境の維持を両立するには、用途ごとの個別最適ではなく、地域の関係者を交えて全体を見渡す視点が重要になりそうです。

今後、各国の計画や企業の調達にどう反映されていくのかに注目したいところです。