生物多様性COP17を前に|企業セクターの対応と打ち手

「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野広大です。生物多様性COPの開催が近づいています。投資家と企業の認識差を手掛かりに、企業の対応を考えます。日本の中小企業にとっても、原材料調達・立地・水利用を通じて他人事ではないテーマです。

生物多様性COPと企業対応とは

生物多様性COP(生物多様性条約締約国会議)とは、生態系・種・遺伝資源を守る国際的な枠組みを議論する場です。2022年12月のCOP15で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組(KMGBF)」には、2030年に向けた23の目標があります。企業対応は、自然への影響と依存の評価・開示だけでなく、持続可能な生産や消費者への情報提供、消費や廃棄物のあり方まで含む広い論点です(CBDのKMGBF公式説明)。

最新のSDGsニュース: 生物多様性COP17まであと2カ月、企業セクターは後手に(オルタナ・2026年8月19日)

SDGsニュースの要約

オルタナ2026年8月19日の記事は、GPIFや環境省、CBDの公表情報を扱う二次報道です。生物多様性COP17は2026年10月19日〜30日にアルメニア・エレバンで開催予定です(CBD COP17暫定議題)。GPIFでは、国内株式パッシブ運用機関が生物多様性を重大なESG課題に挙げた比率が100%でした。一方、オルタナは企業向けアンケートの選択率を8.6%と報じています。両者は同一指標ではありません(GPIF公式資料二次報道としてのオルタナ)。

SDGsニュースのポイント

  • 生物多様性COP17は2026年10月19日〜30日、アルメニア・エレバンで開催(CBD公式資料
  • GPIF資料では国内株式パッシブ運用機関の重大認識率が100%、企業側の8.6%はオルタナによる二次報道の数値(GPIFオルタナ
  • 進捗の遅れは企業だけに閉じず、制度・資金・生産・消費など複数の主体にまたがる
  • 環境省は2026年8月1日付で「生物多様性ビジネス推進室」を設置(環境省公式発表
  • 目標15は企業の評価・開示に加え、消費者への情報提供や持続可能な生産も含む(CBD目標15
  • 目標16は政策・教育・情報・選択肢を通じた持続可能な消費と、食品ロス・廃棄物・過剰消費の削減を扱う(CBD目標16

SDGsニュースを考察

まず注目すべきは、投資家と企業の数値の差を、優劣や同一尺度の差と読まないことです。GPIFは運用機関、オルタナは企業向けアンケートの結果を紹介しており、GPIF自身も投資家と企業では対象範囲や回答の立場が異なると説明しています(GPIF公式資料二次報道:オルタナ)。それでも、生物多様性を経営上の論点として把握し、サプライチェーン上流の依存生態系サービスへの影響を確認する必要性は変わりません。

第二の論点は、KMGBF目標15と16を、上流と消費側に切り分けすぎないことです。目標15は、事業者による自然へのリスク・依存・影響の評価・開示に加え、消費者への情報提供と持続可能な生産を含みます(CBD目標15)。目標16は、政策・教育・情報・代替選択肢を通じて持続可能な消費を促し、食品ロス、廃棄物、過剰消費を減らす目標です(CBD目標16)。企業には、サプライチェーンの確認、商品設計、表示、販売方法、サステナブル消費を一続きの課題として捉える視点が求められます。BtoBかBtoCかだけで役割を分けず、事業の影響と消費者が選べる条件を見直すべきでしょう。

第三は、環境省の「生物多様性ビジネス推進室」新設を、事実と期待に分けて読むことです。環境省の公式発表で確認できるのは、同室と環境金融推進室を設置し、2026年8月1日に施行したことです。新設は担当体制を示しますが、具体的な補助制度や中小企業向け支援が拡充したとまでは断定できません(環境省公式発表)。中小企業は制度を待つだけでなく、中小企業のサステナビリティ支援も参考に、自社の調達・立地・水利用と自然への依存や影響を整理しておくとよいでしょう。

私たちにできること

第一歩:自社が依存する自然資源をリストアップする: 水、原材料(木材・農産物・海産物)、立地(工場・農地・観光地)、送粉サービスなど、自然への「依存」を可視化することが自然関連情報を整理する出発点です。

第二歩:立地・調達地の自然への依存と影響を確認する: 自社拠点・主要調達地について、自然への依存と影響を洗い出し、取引先との確認項目に落とし込みます。ここが整理できればリスクの解像度が上がります。

第三歩:消費者が選べる条件を見直す: 商品の情報提供、長く使える設計、修理・再使用、食品ロスや廃棄物の削減など、自社の事業に合う施策を一つ選びます。目標16は消費者の努力だけを求めるものではなく、政策・教育・情報・代替選択肢を通じて持続可能な選択を可能にする目標です(CBD目標16)。

締め

生物多様性の議論は「大企業の開示」だけの話ではありません。KMGBF目標15と16は、企業の評価・開示、生産、情報提供、消費、制度をつなぐ目標です。COP17では、KMGBFの集団的な進捗評価が重要な論点になります(CBD COP17暫定議題)。まず自社の依存と影響を棚卸しし、伝えられる情報と、事業で変えられる行動を一つずつ整理することをおすすめします。