ニュースの要点

高分子素材メーカーのコベストロが、ドイツ・レバークーゼンの拠点に、高機能エラストマーをケミカルリサイクルするパイロットプラントを開設しました。

対象は同社のポリウレタン系エラストマー「Vulkollan®」です。

実験室で開発してきた新しいリサイクル工程を、試験運転の段階へ進めました。

同社は、この素材分野では世界でも初期の施設の一つだとしています。

コベストロの2026年9月16日付の発表によると、事業規模は数千万ユーロ(原文は「double-digit million-euro」)です。

発表の主なポイントは次のとおりです。

  • 選別した使用済みVulkollan®を分解し、精製した原料(ビルディングブロック)に戻して再利用する
  • 選別した素材について、質量ベースで90%超を再資源化でき、化石資源由来のバージン材と比べてカーボンフットプリントを最大3分の2削減できる(同社発表)
  • パイロットプラントでは、種類の違う廃棄物の流れを試しながら工程を改良し、将来のスケールアップに必要なデータを集める
  • 今後は一部の特殊注型エラストマーや熱可塑性ポリウレタン(TPU)への応用も探る

Vulkollan®は、フォークリフトの車輪、鉄道の緩衝部品、自動車のバウンドストッパー、防振部品などに使われています。

普段は目につきにくいものの、車両や産業機器を安全に長く動かすために欠かせない部材です。

SDGs・脱炭素の視点で何が重要か

今回の取り組みで注目したいのは、長く使われる工業用部材を、素材の段階まで戻して再利用する道筋が見え始めたことです。

資源の有効利用と気候負荷の低減を、一緒に考える題材になります。ただし、商業規模での運転実績を示した発表ではありません。

産業規模でも同じ水準を保てるかは、今後の検証を待つ必要があります。

工業用部材を原料に戻す意味

今回の発表は、日常の包装材ではなく、車輪や緩衝部品として働く素材を対象にしています。

使い終えた部材を原料へ戻すには、交換後の部品を集め、再利用に適した状態で届ける仕組みも必要になります。

技術だけでなく、部材の使い終わりまで見渡して考えることが大切です。

資源を循環させ続けるという考え方はサーキュラーエコノミーの解説で、限られた資源から多くの価値を引き出す考え方は資源効率の解説で整理しています。

数値の読み方に注意する

コベストロの発表にある「90%超」と「最大3分の2削減」は、どちらも選別した使用済み素材を対象にした数値です。

「最大」とあるように、どの条件でも同じ削減幅になるわけではありません。

企業が再生材を採用するときは、何と比べたのか、どの範囲を算定したのかといった比較の前提を確かめることが大切です。

企業や生活者が確認したいこと

リサイクル技術がうまく機能するかどうかは、工場の外にある回収と品質管理の仕組みに大きく左右されます。

発表でも、技術そのものと同じくらい、バリューチェーン全体での協力が強調されています。

立場ごとに確認しておきたい点を整理します。

部材を使う企業

同社は、顧客やリサイクラー、廃棄物回収業者、物流事業者などと協力し、クローズドループに必要な回収・返却の仕組みづくりを進めているとしています。

フォークリフトや鉄道車両、自動車部品を扱う企業にとっては、交換した部品を分けて保管・返却する社内ルールが、将来の再資源化の前提になりそうです。

再生材を調達方針にどう組み込むかは、サステナブル調達の解説が参考になります。

回収・物流に関わる事業者

発表では、適切な使用済み素材を確保することと、原料の品質を一定に保つことが、経済的に成り立つ循環の鍵とされています。

どこから来た部品で、どんな状態なのかを記録しておく仕組みは、トレーサビリティの解説で紹介している考え方と重なります。

多くの関係者の協力が前提になるため、ステークホルダー・エンゲージメントの視点も欠かせません。

生活者

消費者がVulkollan®を直接手に取る機会は多くありません。

それでも、物流や鉄道、自動車といった身近なインフラを支える部材の循環は、暮らしの環境負荷と無関係ではありません。

「目立たない素材の行き先」に目を向けることが、サービスや製品を選ぶ際の新しい判断材料になるかもしれません。

まとめ

コベストロのパイロットプラント開設は、高機能エラストマーを原料レベルで循環させるための、実証段階の一歩です。

発表では質量90%超の再資源化とカーボンフットプリントの最大3分の2削減が示されましたが、選別した使用済み素材が対象で、商業運転全体の実績を示すものではありません。

今後の注目点は、産業規模で同じ性能を出せるか、そして回収・物流・品質管理を担う関係者との連携がどこまで広がるかでしょう。

部材を使う企業にとっては、使用済み部品の扱い方を見直す一つのきっかけになりそうです(出典:コベストロ発表)。