ニュースの要点
国連環境計画(UNEP)は2026年9月17日、シンガポールで開かれた「Global Cooling Pledge Assembly 2026」で、暑熱対策と温室効果ガス削減を両立させる新たな取り組みを発表しました。
都市の緑を活用する事業、冷却機器の効率向上と低温暖化係数(低GWP)冷媒への移行、国際的な暑熱対策の道筋づくりなどです。
UNEPの発表は、冷房への需要が増すなか、人を暑さから守ることとエネルギー消費を抑えることを同時に進める必要性を示しています。
今回の発表を読むうえで大切なのは、ロードマップは完成した政策ではなく、各国政府が策定に向けた検討を始めた段階だという点です。
一方、自然を活用する「Nature for Cooling Challenge」と、製造業者が参加する自主的なプラットフォームは立ち上げられました。
発表済みの取り組みと、これから具体化する計画を分けて見ていきます。
自然を使い、まちの熱を和らげる
Nature for Cooling Challengeにはブラジル、カンボジア、コートジボワールが参加します。
都市林、公園、屋上緑化などを利用して暑熱を和らげる事業を見つけ、設計や効果測定を支援する取り組みです。
UNEPとSustainable Energy for Allが主導し、地球環境ファシリティから300万米ドルの助成を受けます。
これは参加国での事業支援の枠組みであり、日本のすべての街で同じ効果が保証されたという発表ではありません。
Cool Coalitionの事業紹介によると、この取り組みは3年間で、緑地による暑熱への曝露、冷却用エネルギー需要、関連する排出への影響を確かめることを目指します。
緑化事業への投資を広げるには、効果の測定方法や資金調達の仕組みが課題だと整理しています。
木を植えれば終わりではなく、日陰がどこにでき、誰が利用でき、維持管理できるかを含めて考える設計です。
生物多様性の保全とも関わる都市の緑を、暑熱対策として評価する動きといえます。
機器の効率と冷媒も同時に見直す
緑化だけでは、病院や事業所で必要な冷房を置き換えられません。
UNEPの発表では、Cool Coalitionのもとに、冷却機器の製造業者が参加する「Manufacturing Platform」も設けられました。
高効率機器の供給を増やし、低GWP・超低GWP冷媒への移行を進める自主的な取り組みです。
参加企業が測定可能な約束と進捗報告を行う仕組みを想定していますが、現時点で世界の製品基準や企業への新たな義務が決まったわけではありません。
冷却の課題は、機器の電力消費だけではありません。冷媒の気候影響、建物の日射負荷、緑地の有無が重なります。
2023年に始まったGlobal Cooling Pledgeは、受動的に熱を抑える設計、高効率技術、気候に配慮した冷媒を柱にしています。
総会の公式案内も、この3つを一体で進める方針を示していました。今回の発表は、その実施方法を増やすものと読めます。
政府は、学校、病院、職場、エネルギー設備を含む暑熱レジリエンスの世界ロードマップについても検討を始めました。
UNEPは、暑さから人と重要なサービスを守る適応策と、冷却に伴う排出を減らす緩和策を一つの枠組みで扱う狙いを説明しています。
内容や実施時期は今後の策定に委ねられます。
企業や生活者が今できる確認
ここからは発表を踏まえた編集部の考察です。UNEPが日本企業に個別の設備更新を求めたという意味ではありません。
事業所ではまず、暑さが厳しい場所と時間、空調設備の電力使用、機器の更新時期を一緒に確認すると判断しやすくなります。
窓の日射遮蔽や断熱、通風、敷地の緑化で熱の入り方を抑えたうえで、必要な冷房の効率と冷媒を比較する順序です。
緑化による冷却効果は立地や維持管理によって変わるため、導入前後で室温や使用電力を記録したいところです。
カーボンニュートラルの設備投資を検討する際にも、暑熱から人を守る効果と併せて評価できます。
これはUNEPが示した一律の処方箋ではなく、企業が設備投資を検討する際の見方です。
生活者にとっても、暑い日の安全を最優先にしながら、すだれや日よけ、住宅の断熱と適切な冷房を組み合わせる視点が役立ちます。
緑地だけで危険な暑さを乗り切ろうとはせず、特に高齢者や子どものいる場所では室温と体調を確認する必要があります。
冷却の省エネと暑熱からの保護を対立させず、両方を評価することが、このニュースから得られる実務上の示唆です。
まとめ
UNEPが示したのは、自然を生かす都市設計、効率の高い機器と冷媒、政府間の連携を組み合わせる方向です。
Nature for Cooling Challengeと製造業の自主的な枠組みは動き始めましたが、世界ロードマップはこれから策定されます。
各施策の効果を確かめながら、暑さから人を守ることとエネルギー効率の向上を同時に進められるかが、次の焦点になります。






