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【用語解説】パリ協定とは?世界が目指す脱炭素社会への道筋

編集部の菊尾
編集部の菊尾
パリ協定は、世界全体で温室効果ガス排出削減に取り組み、今世紀後半には実質ゼロを目指すことで合意した、気候変動対策の新たな国際的枠組みであり、脱炭素社会の実現に向けた大きな一歩となるものです!

概要

パリ協定は、2015年12月にフランスのパリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択された、気候変動対策に関する国際的な枠組みです。産業革命前からの世界の平均気温上昇を2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求することを目的としています。この協定は、2016年11月4日に発効し、2021年1月現在、197の国と地域が批准しています。

説明

パリ協定の主な内容は以下の通りです。

  1. 長期目標:今世紀後半に温室効果ガスの排出と吸収のバランスを達成する(実質排出ゼロ)。
  2. 削減目標:各国が自国の削減目標(NDC:Nationally Determined Contribution)を設定し、5年ごとに見直しを行う。
  3. 適応:気候変動の影響に対する適応能力の向上と強靭性の構築を図る。
  4. 資金支援:先進国は途上国の気候変動対策を支援するため、2020年までに年間1,000億ドルを共同で動員する。
  5. 透明性:各国の取り組み状況を報告・検証する仕組みを設ける。

パリ協定では、先進国と途上国の区別なく、全ての国が温室効果ガス削減に取り組むことが求められています。また、各国の事情に応じた柔軟な対応が認められており、自国の事情に合わせた削減目標を設定することができます。

企業への影響

パリ協定の採択により、企業には脱炭素社会への移行が求められるようになりました。具体的には以下のような影響が考えられます。

  1. 再生可能エネルギーの導入加速:化石燃料からクリーンエネルギーへのシフトが進み、再生可能エネルギー関連事業の成長が見込まれる。
  2. 省エネ・高効率技術の開発:温室効果ガス削減のため、省エネルギーや高効率な技術の開発・導入が加速する。
  3. 環境情報開示の重要性増大:投資家から気候変動リスクへの対応を求める声が高まり、企業の環境情報開示の重要性が増す。
  4. サプライチェーン全体での取り組み:Scope3(サプライチェーン全体での排出)への対応が求められ、取引先との協働が不可欠になる。
  5. 新たなビジネスチャンスの創出:脱炭素社会への移行に伴い、新たな製品やサービスの需要が生まれる可能性がある。

事例課題と進展

  1. アップル:2030年までにサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを達成することを宣言しました。再生可能エネルギー100%の達成や、製品のリサイクル率向上に取り組んでいます。また、サプライヤーにも再生可能エネルギーの使用を求めるなど、サプライチェーン全体での脱炭素化を推進しています。課題としては、サプライチェーンが広範囲に及ぶため、全ての取引先の協力を得ることが挙げられます。
  2. トヨタ自動車:2050年までにライフサイクルCO2ゼロを目指すチャレンジを発表しました。電動車の開発・普及や、工場の脱炭素化を推進しています。特に、燃料電池車(FCV)の開発に注力しており、水素社会の実現に向けた取り組みを進めています。課題としては、電動車の普及に必要なインフラ整備や、水素の製造・輸送コストの低減などが挙げられます。
  3. イオン:2050年までにグループ全体でCO2排出量ゼロを目指すことを表明しました。店舗の省エネ化や再生可能エネルギーの導入、環境配慮型商品の拡大などに取り組んでいます。また、サプライヤーとの協働により、原材料調達から製造、輸送、販売、使用、廃棄に至るまでのサプライチェーン全体での脱炭素化を目指しています。課題としては、多岐にわたる事業分野や広範なサプライチェーンにおける排出量の把握と削減が挙げられます。

これらの企業は、パリ協定の目標達成に向けて、野心的な目標を掲げ、脱炭素化に向けた取り組みを進めています。一方で、サプライチェーン全体での排出量削減や、新技術の開発・普及などの課題も抱えており、今後の進展が注目されます。

まとめ

パリ協定は、世界全体で脱炭素社会の実現を目指す重要な枠組みです。企業には、自社の事業活動に伴う温室効果ガス排出量の削減が求められるとともに、サプライチェーン全体での取り組みが不可欠となります。脱炭素化に向けた技術開発や再生可能エネルギーの導入、環境情報開示などに積極的に取り組むことが、企業の持続的な成長につながるでしょう。

パリ協定は、企業に大きな変革を迫るものですが、同時に新たなビジネスチャンスをもたらす可能性も秘めています。自社の強みを生かしながら、脱炭素社会への移行に貢献することが、これからの企業経営に求められています。SDGsの達成に向けて、パリ協定の目標を自社の経営戦略に取り込み、持続可能な社会の実現に向けて行動することが重要です。