【用語解説】児童労働とは?背景と解決に向けた多角的アプローチ
児童労働の概要
児童労働とは、子どもたちが心身の発達に有害な労働に従事することを指します。
貧困や教育機会の欠如などを背景に、世界中で多くの子どもたちが過酷な労働環境に置かれています。国際労働機関(ILO)の調査によると、2020年時点で1億6,000万人の児童労働者が存在し、そのうち7,900万人が危険有害労働に従事しているとされます。
児童労働は、子どもたちの健康や安全を脅かすだけでなく、教育の機会を奪い、将来の可能性を狭めてしまいます。また、児童労働に依存する経済構造は、持続可能な発展を阻害する要因にもなります。SDGsのゴール8.7では、あらゆる形態の児童労働の撲滅を掲げており、国際社会が一丸となって取り組むべき喫緊の課題となっています。
企業への影響
グローバル化が進む中、企業のサプライチェーンは複雑化し、児童労働のリスクも高まっています。
児童労働が発覚した場合、企業は社会的信用の失墜や不買運動などの大きな打撃を受ける可能性があります。また、法的規制の強化により、多額の制裁金や取引停止などのペナルティを課される恐れもあります。
一方で、児童労働の撲滅に積極的に取り組む企業は、社会的責任を果たすことで評価が高まり、消費者や投資家からの支持を得ることができます。サプライチェーンの透明性を高め、人権デューデリジェンスを実践することは、企業の持続可能性を高める上でも重要な要素となっています。
主な事例
1.イケアは、サプライチェーンにおける児童労働の撲滅に向けて、独自の行動規範「IWAY」を策定しています。
IWAYでは、サプライヤーに対して児童労働の禁止や適切な労働条件の確保を求めており、定期的な監査を通じて実効性を担保しています。また、インドでは、児童労働の予防と救済を目的とした「イケア社会的イニシアチブ」を展開し、子どもたちの教育支援や家庭の生活向上に取り組んでいます。
2.ネスレは、カカオ豆の調達において児童労働のリスクが高いことから、「ネスレ カカオプラン」を立ち上げ、児童労働の撲滅に努めています。
現地の農家に対する技術支援や生活改善プログラムを通じて、児童労働の根本原因である貧困の解消を図っています。また、第三者機関による監査やトレーサビリティシステムの導入により、サプライチェーンの透明性を高めています。
3.株式会社FrankPRが運営する革製品ブランド「ラファエロ」は、バングラデシュのストリートチルドレンの母親たちに雇用機会を提供することで、子どもたちが学校に通える環境づくりに貢献しています。
現地の工房では、900人の工員のうち大多数が女性であり、シングルマザーの自立支援にも力を入れています。また、純利益の10%を、ストリートチルドレンの教育支援を行うNGOに寄付するなど、児童労働の予防と撲滅に多角的に取り組んでいます。
まとめ
児童労働は、子どもたちの権利を侵害し、持続可能な社会の実現を阻む重大な問題です。
企業は、サプライチェーンの透明性を高め、人権デューデリジェンスを実践することで、児童労働のリスクを特定し、予防・是正措置を講じる必要があります。また、現地の社会課題に目を向け、教育支援や生活改善プログラムなどを通じて、児童労働の根本原因に働きかけることも重要です。
企業の積極的な取り組みは、社会的責任を果たすだけでなく、企業価値の向上にもつながります。児童労働の撲滅は、SDGsの達成に不可欠な要素であり、企業と社会が協力して取り組むべき喫緊の課題と言えるでしょう。一人ひとりが児童労働の問題を自分事として捉え、できることから行動に移すことが求められています。