こんにちは、「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野広大です。
夢を追いかける若いアイドルの身に起きた、あまりにも悲しいニュースに触れ、多くの方が心を痛めていることと思います。自分も娘のいる父親として、思うところがありました。
人気TikTokerゆりにゃさんがプロデュースするアイドルグループ「Pretty Chuu」のメンバーが、ゆりにゃさんの交際相手から受けた性加害を告発しました。
これは決して他人事でも、単なるゴシップでもありません。一人の女性の尊厳が踏みにじられた深刻な人権侵害であり、私たちの社会が抱える構造的な問題を浮き彫りにしています。
この問題をSDGsの視点で見ると、特にゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」やゴール8「働きがいも経済成長も」に深く関わっていることがわかります。なぜ夢を追う若者が守られなかったのか、そして私たちがどう向き合うべきか、一緒に考えていきましょう。
こんな人におすすめです
- アイドルやインフルエンサーのニュースに関心がある若い世代の方
- 性加害問題と社会構造のつながりを理解したい方
- エンタメ業界に限らず、すべての働く人の「安全な環境」について考えたい方
夢を追う場所で起きた悲劇:事件の概要
まず、報道されている内容を整理します。
- 人気TikTokerゆりにゃさんがプロデュースするアイドルのメンバー・天宮しゅなさんが、ゆりにゃさんの交際相手だった斎藤太一氏から性被害を受けたことを告発しました。
- 天宮さんは「抵抗できませんでした」「私が好意が一切無かったのだけはわかってほしいです」と悲痛な胸の内を訴え、被害届を提出したことを報告しています。
- プロデューサーのゆりにゃさんは、SNSで情報を知り、事実確認の上で「内容は概ね事実であることがわかりました」と認め、被害を受けた天宮さんや関係者に謝罪。 現在は天宮さんの心身のケアを最優先に対応しているとし、加害者である斎藤氏との絶縁を表明しました。
この告発から見えてくるのは、プロデューサーの交際相手という、抵抗しづらい圧倒的な力関係の中で起きた、卑劣な行為です。
なぜこれがSDGsにとって深刻な問題なのか?
この事件は、SDGsが目指す社会とはまさに対極にある出来事です。特に重要な3つのゴールと関連しています。
ゴール5「ジェンダー平等」:なくすべき暴力と搾取
今回の事件は、ターゲット5.2「人身売買や性的、その他の搾取など、すべての女性と女児に対するあらゆる形態の暴力をなくす」に真っ向から反するものです。
これは「恋愛トラブル」などでは決してありません。同意なく、力関係を利用して行われた「性的搾取」であり、深刻な人権侵害です。被害者が「アイドルがしたかっただけ」と訴えているように、夢を人質に取るような形で個人の尊厳を踏みにじる行為は、絶対に許されるものではありません。社会全体でダイバーシティ&インクルージョンを推進し、誰もが性別によって不利益や暴力を受けない社会を目指す必要があります。
ゴール8「働きがいも」:安全であるべき労働環境
アイドルもまた、夢を仕事にする一人の「労働者」です。ターゲット8.8「すべての労働者の権利を守り、安全で安心な労働環境を促進する」は、すべての職業人に適用されます。
報道によれば、「お泊まり」というプライベートと仕事の境界が曖昧な状況で事件は起きたとされています。 これは、特に若い世代が夢を追うエンタメ業界などで見られる、労働環境の脆弱性を示唆しています。企業やプロデューサーは、所属するタレントに対して、心身ともに安全な環境を提供する責任があります。その責任を果たすためには、人権デューデリジェンス(自社の活動が人権に与える影響を評価し、予防・対処する取り組み)が不可欠です。
ゴール16「平和と公正」:守られるべき個人の尊厳
ターゲット16.1「あらゆる場所で、あらゆる形態の暴力を減らす」は、SDGsの根幹をなす目標の一つです。性暴力は、個人の心と体に深い傷を残す、最も深刻な暴力の一つです。
天宮さんが勇気を出して被害届を提出したことは、ターゲット16.3「すべての人々が司法へ平等にアクセスできるようにする」という点において、非常に重要です。泣き寝入りせず、公正な裁きを求める行動は、同じような苦しみを持つ他の被害者にとっても希望となり得ます。
私たちにできること:”見て見ぬふり”をしない社会へ
このニュースに触れて、私たちは無力感を感じるかもしれません。しかし、社会の一員としてできることは必ずあります。
個人レベルのアクション
- 被害者を非難しない:「なぜ抵抗しなかったのか」など、被害者を責めるような言動は、二次加害(セカンドレイプ)に繋がります。まずは勇気ある告発を支持し、心身の回復を願いましょう。
- 正しい知識を持つ:「同意のない性的行為はすべて暴力である」という基本的な認識を社会の常識にしていくことが重要です。
- 応援の形を考える:自分が応援するアーティストや企業が、人権を尊重し、安全な環境づくりに真摯に取り組んでいるか。私たちの消費や応援の一つひとつが、業界の体質を変える力になります。
組織・企業レベルのアクション
エンタメ業界に限らず、すべての組織は、ハラスメントや人権侵害を防ぐための仕組みを強化しなくてはなりません。
- 明確な行動規範の策定:どのような行為がハラスメントにあたるのかを具体的に示し、全関係者に周知徹底する。
- 相談窓口の設置:被害者が安心して相談でき、プライバシーが守られる独立した相談窓口を設ける。
- 教育と研修の実施:力を持つ立場にある人間ほど、人権に関する研修を定期的に受ける義務があります。
希望の兆し:声を上げることの勇気
この事件で最も胸を打たれるのは、天宮さん自身の勇気です。多大な恐怖と苦しみの中で声を上げ、被害届を提出したその行動は、社会に問題を提起する大きな一歩です。また、プロデューサーであるゆりにゃさんが迅速に事実を認め、被害者のケアを最優先し、加害者との絶縁を表明したことも、今後の業界のあり方を考える上で重要な動きと言えるでしょう。
誰もが夢を追いかけるときに、その尊厳や安全が脅かされることのない社会。それこそが、SDGsが目指す世界の姿です。この悲しい事件を無駄にしないために、私たち一人ひとりが考え、行動していくことが求められています。
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