SDGsの知恵袋編集部の菊尾です。
今日は下記のSDGsニュース記事について考察と意見をお伝えします。
1月15日、運用資産4兆ドル超の27の機関投資家グループが、シェルに対しパリ協定に沿った中期排出量削減目標を設定する株主決議を提出。スコープ3排出量削減に焦点を当て、気温上昇を1.5℃に抑える努力を求める内容。シェルは2050年ネット・ゼロ目標を掲げるが、スコープ3の中間目標は未設定。会長はスコープ3目標が経済的利益に反し、温暖化緩和に役立たずと述べた。
タイトル:約591兆円の投資家グループ、シェルにパリ協定に沿ったスコープ3排出量目標の設定を要請
内容
1月15日、運用資産4兆ドル超の27機関投資家グループが、石油大手シェルに対し、パリ協定に沿った中期目標を求める株主決議を提出した。この決議は、シェル製品使用からの排出量削減を目指し、地球温暖化を1.5℃に抑える努力を追求する内容。シェルは2050年ネット・ゼロ達成を目指すが、スコープ3の中間目標設定を避けている。これに対し、アンドリュー・マッケンジー会長は、スコープ3目標が株主利益に反し、温暖化緩和に役立たないと述べた。
SDGsニュースの主な要点
– 2024年1月15日、運用資産総額4兆ドル超の27機関投資家グループが、シェルに対してパリ協定に沿った中期排出量削減目標の設定を求める株主決議を提出。
– 株主アクティビストグループ「フォロー・ディス」が主導し、アムンディ、NEST、スコティッシュ・ウィドウズ、キャンドリアムなどが参加。このグループはシェル株の約5%を保有。
– 決議案ではシェルに、エネルギー製品の使用によるスコープ3排出量の中期目標を設定し、気温上昇を1.5℃に抑える努力を求める。
– 昨年、シェルの株主グループが同様の決議案を提出し、20%の支持を得た。今年の決議案は「2030年目標」を「中期目標」に変更し、支持声明を排出量に焦点を当てたものに修正。
– シェルは2020年に2050年までの事業活動でネット・ゼロを達成するコミットメントを発表。2021年には“Powering Progress”戦略を打ち出し、スコープ1、2、3の排出量でネット・ゼロを目指す。
– シェルはスコープ1と2の排出量削減目標を設定しているが、スコープ3の中間目標の設定を避けている。スコープ3排出量は全カーボンフットプリントの95%以上を占め、「販売製品の使用」が約74%を占める。
– アンドリュー・マッケンジー会長によると、スコープ3の絶対排出量目標の設定は株主の経済的利益に反し、温暖化緩和には役立たないと判断。野心的なスコープ3目標実施には、石油・ガス製品の販売削減が必要で、顧客需要が変わらない限り他社に顧客を譲ることになると述べた。
「SDGsの知恵袋の編集部」の考察と意見
エネルギー業界は、今、大きな転換点に立っています。シェルに対する最近の株主決議は、この変革の一端を示しています。27の機関投資家グループが、シェルに対し、そのエネルギー製品の使用による排出量を削減するための中期目標を設定するよう求めています。この動きは、企業が環境に与える影響に対して、より積極的なアプローチを取るよう求める投資家の声が高まっていることを象徴しています。
特に注目すべきは、この決議がスコープ3排出量、つまり企業の活動によって間接的に生じる排出量に焦点を当てていることです。スコープ3は通常、企業の直接的な排出よりもはるかに大きく、排出削減の難易度が高いため、この決議はシェルにとって大きな挑戦を意味します。しかし、シェルのアンドリュー・マッケンジー会長は、スコープ3の目標設定が株主の経済的利益に反し、温暖化緩和に役立たないとの見解を示しています。
この出来事は、SDGsの推進において、経済と環境のバランスをどのように取るかという、企業にとっての重要な課題を浮き彫りにしています。エネルギー業界の巨人であるシェルも、投資家の圧力と環境への責任との間で複雑なバランスを取ろうとしています。企業がSDGsを推進する上で、環境への配慮と経済的利益の両立は必須です。この動きは、他の企業にとっても、環境責任を重視しつつ、持続可能な経済成長を目指すモデルとなるでしょう。
シェルの事例は、SDGsの目標達成に向けて、企業がどのように環境問題に取り組むべきか、また投資家がどのように企業を動かすべきかという点で、非常に示唆に富んでいます。企業のCSRやSDGs担当者は、このような動きを注視し、自社の戦略にどのように反映させるかを考える必要があります。