【解説】ネパール政変 なぜSNS禁止で首相辞任? Z世代の怒りと新女性首相の課題

【解説】ネパール政変 なぜSNS禁止で首相辞任? Z世代の怒りと新女性首相の課題

南アジアのネパールで、政府によるSNSの利用禁止措置をきっかけとした大規模な反政府デモが激化し、K・P・シャルマ・オリ首相が辞任、政権が崩壊する事態に発展しました。混乱が続く中、元最高裁判所長官のスシラ・カルキ氏(73)が暫定首相に就任し、ネパール史上初の女性首相が誕生しました。

一体なぜ、SNSの禁止がこれほど大きな混乱につながったのでしょうか。専門家の解説を交え、背景と今後の見通しをまとめます。

何が起きたのか?

  • SNS禁止とデモ激化: 9月4日、ネパール政府がフェイスブックやインスタグラムなど26のSNSプラットフォームを禁止したことをきっかけに、若者を中心とした大規模な抗議活動が発生しました。
  • 首相辞任と政権崩壊: デモ隊は首都カトマンズの国会議事堂や政府庁舎、オリ首相の自宅に火を放つなど行動が激化。これを受けオリ首相は辞任に追い込まれました。この混乱で、これまでに50人以上が死亡しています。
  • 暫定首相の就任: 軍の仲介を経て、ラム・チャンドラ・ポーデル大統領と抗議指導者らが協議。その結果、清廉なイメージで知られるスシラ・カルキ元最高裁長官が暫定首相に就任しました。大統領は下院を解散し、来年3月5日に総選挙を実施するとしています。

デモの引き金はSNS、しかし根源は根深い社会問題

京都大学の藤倉達郎教授は、今回のデモが「Z世代のデモ」と名付けられている点に注目しています。特定の政党を支持しない中高生を含む若者たちが、デモの中心となりました。その背景には、単なるSNS禁止への反発だけではない、根深い社会への不満があります。

Z世代の怒り:「#nepokids」と格差社会

デモに先立ち、SNS上では「#nepokids」というハッシュタグを使ったキャンペーンが拡大していました。これは、縁故主義(ネポティズム)によって裕福な暮らしをする政治家や高級官僚の子どもたちと、一般的な農村の暮らしを対比させるもので、若者たちの間に格差や機会の不平等に対する強い不満が渦巻いていました。

多くの若者は、真面目に働いても良い生活ができず、借金をして中東やマレーシアへ出稼ぎに行かざるを得ない状況にあります。こうした自分たちの境遇と、汚職が疑われるエリート層の贅沢な暮らしとの矛盾が、若者たちの怒りを増幅させました。

生命線を断つSNS禁止

ネパールでは山岳地帯が多く固定電話網が未発達なため、携帯電話とSNSが、海外で働く家族や親族と連絡を取るための重要な生命線となっています。

藤倉教授は、「SNSが使えなくなることは、海外で苦労して働いている人と、国内に残って苦労している人が連絡を取り合う手段が失われること。日常生活の一番大事なところが断ち切られるという感覚を持った人が多かった」と指摘しています。政府がこの国民感覚とのズレに気づかずSNSを禁止したことが、大規模な反発を招く最大の要因となりました。

ネパール初の女性首相、スシラ・カルキ氏の課題

暫定首相に就任したカルキ氏は、清廉なイメージでZ世代の若者からも支持されています。しかし、その前途は多難です。

  • 治安の回復と攻撃された主要施設の再建
  • 変革を求める若者たちと国民の信頼回復
  • 暴力の責任者を法で裁くこと。

これらの急務の課題にどう取り組むかが問われます。

今後の見通し

行政、立法、司法の中心機能が焼き討ちにあい、ネパールは完全な政治的空白状態にあります。現在、国として機能している組織は軍隊だけで、警察も機能不全に陥っています。

今後は軍がデモの中心となった若者たちと対話し、暫定政府の具体的な体制や総選挙の進め方について協議が進むかどうかが焦点となりますが、依然として見通しが立たない状況です。


ソース:

  1. BBC News. (2025, September 12). 反政府デモ続いたネパール、暫定首相に元最高裁長官が就任 初の女性首相. https://www.bbc.com/japanese/articles/c62l57v23m5o
  2. NHK NEWS WEB. (2025, September 12). ネパールはいま なにが?首相辞任 議会に火も【詳しく】専門家解説. https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014921311000
日野広大

編集長日野

日野広大(ひの こうだい)
「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長。ジャパンSDGsアワード外務大臣賞を受賞した株式会社FrankPRのサステナビリティコンサルタント、気候変動コミュニケーター。
専門は脱炭素経営、サーキュラーエコノミー、SDGsの企業経営への統合。学生時代のボランティアを機に環境問題に目覚め、現在は編集長として、科学的根拠と実用性を両立した情報発信を行う。
複雑なテーマを、データと自身の経験に基づいた身近な解説で「初めて理解できた」と読者から高い評価を得ている。単なる問題提起に留まらず、読者が「今日からできるアクション」を見つけられる、具体的で希望の持てる解決策を伝えることを信条とする。

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