阪神・近本選手と目指す「環境にやさしい甲子園」。プロ野球におけるカーボン・オフセットの意義をSDGs専門家が徹底解説

脱炭素とSDGsの知恵袋の編集長、日野広大です。私たちのメディア運営企業は、その活動が評価され政府のSDGs推進本部より表彰(ジャパンSDGsアワード)を受けた実績があります。その知見を活かし、今回はプロ野球・阪神タイガースが発表した先進的な環境への取り組みについて、その重要性と未来への可能性を深掘り解説します。

夏のプロ野球観戦は多くの人にとっての楽しみですが、その裏では大きなエネルギーが消費されています。阪神タイガースが発表した「カーボン・オフセット試合」は、この課題に正面から向き合う画期的な試みです。本記事では、以下の点について詳しく解説していきます。

  • 阪神タイガースが実施する「カーボン・オフセット試合」の全容
  • 今さら聞けない「カーボン・オフセット」と「J-クレジット」の仕組み
  • なぜ今、プロ野球がSDGsに取り組むのか?その社会的意義
  • ファンや私たちが今日からできる、環境にやさしいアクション
目次

阪神タイガースが夏の甲子園で「カーボン・オフセット試合」を実施

2025年6月16日、阪神タイガースは「甲子園エコチャレンジ」の一環として、夏の主催9試合を「カーボン・オフセット試合」として実施することを発表しました。

ニュースのポイント

  • 対象試合: 2025年7月の巨人戦、ヤクルト戦、中日戦の甲子園主催9試合。
  • 目的: 夏場のナイター照明や空調使用で増加するCO2排出量を相殺(オフセット)し、脱炭素とごみ削減をファンと共に推進する。
  • 手法: 国が認証する「J-クレジット制度」を活用。
  • 推進体制: コトブキシーディング株式会社、日本GXグループの協力のもと、PR大使には近本光司選手が就任。

この取り組みは、SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」、そして球団、企業、ファンが一体となることから目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に直結する、非常に意義深い活動です。近本選手が「甲子園を環境にやさしい球場にしていきましょう」と呼びかけるように、これは単なる球団の活動ではなく、社会全体へのメッセージと言えるでしょう。

専門家が解説!「カーボン・オフセット」と「J-クレジット」とは?

今回の取り組みの核となる「カーボン・オフセット」と「J-クレジット」。少し専門的に聞こえるかもしれませんが、私たちの未来にとって非常に重要な考え方です。

カーボン・オフセットの仕組み:避けられないCO2排出を「埋め合わせる」考え方

カーボン・オフセットを分かりやすく例えるなら、「出てしまった分を、別の場所で貢献して埋め合わせる」という考え方です。

日常生活や経済活動の中で、CO2排出を完全にゼロにすることは現時点では困難です。例えば、今回の試合で使う電力や、ファンの移動に伴う排出などがそれに当たります。

そこで、どうしても排出されてしまうCO2の量を計算し、その量に見合った削減・吸収活動(例えば、森林保護や省エネ設備の導入など)に投資することで、排出されたCO2の影響を相殺(オフセット)します。これがカーボン・オフセットの基本的な仕組みです。

「J-クレジット」とは?日本の脱炭素を支える信頼の証

では、どのようにして「埋め合わせ」の信頼性を担保するのでしょうか。そこで登場するのが「J-クレジット」です。

J-クレジット制度は、日本の政府(経済産業省・環境省・農林水産省)が運営しており、企業などが行った省エネ設備の導入や森林管理によるCO2の削減・吸収量を「クレジット」として認証する制度です。

いわば、「信頼できる環境貢献の証明書」のようなものです。阪神タイガースは、このJ-クレジットを購入することで、信頼性の高い形で試合運営に伴うCO2排出を埋め合わせるのです。これは、国の大きな方針であるGX(グリーン・トランスフォーメーション)を、スポーツの現場で具体的に推進する先進的な事例と言えます。

なぜプロ野球が?スポーツ界で加速するSDGsの取り組みとその重要性

近年、サッカーのワールドカップやオリンピックなど、国際的なスポーツイベントで環境配慮がスタンダードになりつつあります。日本のプロ野球界もこの潮流に乗り遅れるわけにはいきません。

ファンを巻き込む力:スポーツが持つ社会的インパクト

プロ野球のような国民的スポーツがSDGsに取り組む最大の意義は、その絶大な発信力と共感力にあります。

  • 影響力: 何百万人ものファンに対し、環境問題への関心を自然な形で喚起できる。
  • 教育的効果: 近本選手のようなスター選手がメッセージを発することで、特に子どもたちが環境問題を身近に感じるきっかけになる。
  • 行動変容の促進: 「憧れの選手やチームが取り組むなら自分も」と、ファンの具体的な行動(ごみの分別など)を促しやすい。

私たちも企業のSDGsコンサルティングを行う中で、従業員や顧客を巻き込んだ共感性の高い活動がいかに重要かを実感しています。その点で、スポーツチームとファンの関係は、SDGs達成の理想的なパートナーシップモデルの一つです。

企業とのパートナーシップが鍵(SDGs目標17の実践)

今回の取り組みは、阪神タイガースだけでなく、コトブキシーディング株式会社や日本GXグループといった専門企業との連携で成り立っています。これはまさにSDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の実践です。

球団が持つ発信力と、企業が持つ専門技術やノウハウを組み合わせることで、一組織だけでは成し得ない大きなインパクトを生み出すことができます。

私たちにできること:ファンとして、一市民としてのアクション

「甲子園を環境にやさしい球場に」というメッセージは、私たち一人ひとりへの問いかけでもあります。

観戦時のアクション

  • ごみの分別: 球場内の分別ルールを今まで以上に意識し、徹底する。
  • 公共交通機関の利用: 球場へはなるべく電車やバスを利用し、移動に伴うCO2を削減する。
  • マイボトルの持参: 可能な範囲でマイボトルやマイカップを利用し、使い捨てプラスチックを減らす。

日常生活でのアクション

  • 省エネ: 自宅の電気をこまめに消す、省エネ家電を選ぶ。
  • 地産地消: 地域の産品を選ぶことで、輸送にかかるCO2を削減する。
  • 情報発信: このような素晴らしい取り組みをSNSなどでシェアし、応援の輪を広げる。

まとめ:甲子園から広がる脱炭素の輪

阪神タイガースの「カーボン・オフセット試合」は、単なる一球団のイベントではありません。これは、日本の国民的スポーツが、気候変動という地球規模の課題に本気で取り組む姿勢を示した、重要な一歩です。

この甲子園での試みが成功モデルとなり、他の球団や他のスポーツ、さらには様々な業界へと広がっていくことが期待されます。私たちファンや市民も、この動きを他人事と捉えず、自らの行動を見つめ直すきっかけとすることが、持続可能な社会の実現につながっていくのです。


執筆:脱炭素とSDGsの知恵袋 編集長 日野広大 参考資料:

  • J-クレジット制度 公式サイト (経済産業省・環境省・農林水産省)
  • 阪神タイガース 公式サイト
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次