【専門家が解説】ふるさと住民登録制度(第二の住民票)とは?関係人口で変わる地方創生とSDGsへの貢献

こんにちは。「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野広大です。政府のSDGs推進本部から表彰(ジャパンSDGsアワード)を受けた私たちの視点から、今回は地方創生の新たな一手として注目される「ふるさと住民登録制度(通称:第二の住民票)」について、その本質とSDGsへのつながりを深掘りします。

「もう一つのふるさとを持つ」という考え方は、私たちのライフスタイル、働き方、そして日本の未来にどのような影響を与えるのでしょうか。これは単なる人口政策ではなく、持続可能な社会のあり方を問う重要なテーマです。

この記事でわかること

  • 「ふるさと住民登録制度」の基本的な仕組みと目的
  • なぜ今「移住」ではなく「関係人口」が重視されるのか
  • 制度がもたらすメリットと、乗り越えるべき課題
  • SDGs、特に目標11「住み続けられるまちづくりを」との深い関わり

目次

「ふるさと住民登録制度」が目指す新しい地方との関わり方

今回、石破政権が「地方創生2.0」の目玉政策として検討しているのが「ふるさと住民登録制度」です。

これは、今住んでいる場所以外に、継続的に関わりのある特定の地域を「第二のふるさと」として登録し、自治体が「第二の住民票」のような証明書を交付するという構想です。

ニュースのポイント

  • 目的:定住人口の「奪い合い」ではなく、多様な形で地域と関わる「関係人口」を増やし、地方の活力を創出する。
  • 対象者:その地域に住んでいなくても、仕事やボランティア、親族訪問などで継続的に訪れる人々。
  • 将来像:ふるさと納税制度と連携させ、登録者向けの特典などを設ける案も浮上している。
  • 出典毎日新聞 2025年5月20日記事

この制度の根底にあるのは、人の流れを「0か100か(移住するかしないか)」で捉えるのではなく、その間のグラデーション、つまり「ゆるやかなつながり」を可視化し、価値を与えようという発想の転換です。

なぜ今「関係人口」が重要なのか?移住との違い

この制度を理解する上で鍵となるのが「関係人口」という言葉です。

「交流人口」でも「定住人口」でもない第3の存在

  • 交流人口:観光客など、一度訪れるだけの人々。
  • 定住人口:その地域に住民票を置いて暮らす人々。
  • 関係人口:その地域に愛着を持ち、継続的に多様な形で関わる地域外の人々。

これまでの地方創生は、主に定住人口を増やす「移住促進」に重点が置かれてきましたが、全国的な人口減少の中では、自治体間での人口の奪い合いになりがちでした。
そこで、もっと裾野が広く、多くの人が参加できる「関係人口」を増やすことに光が当てられたのです。

人口減少時代の新たな処方箋

リモートワークの普及により、働く場所の制約は小さくなりました。週末だけ田舎で過ごす、年に数回ワーケーションで訪れるといったライフスタイルは、もはや特別なものではありません。

関係人口は、地域に新しいスキルや視点をもたらし、特産品の購入やイベント参加を通じて経済を支え、将来的には移住につながる可能性も秘めています。地域のファンを増やし、応援団になってもらうこと。それが関係人口戦略の核心です。

専門家が分析する制度のメリットと3つの課題

この意欲的な制度には、大きな可能性と同時に、乗り越えるべきハードルも存在します。

【メリット】地域活性化と多様なライフスタイルの実現

  • 地域側:人手不足の解消(農業や祭りの手伝いなど)、新たなビジネス創出、地域の魅力発信力の向上。
  • 個人側:都市生活の利便性を享受しつつ、地方で心豊かな時間を過ごせる。多様なコミュニティへの所属によるウェルビーイング向上。
  • 企業側:ワーケーション制度の導入などによる従業員満足度の向上、サテライトオフィス設置によるBCP(事業継続計画)対策。

【課題】法的ハードル、財源、都市部への影響

  1. 法的・制度的な壁:住民票は、行政サービスの基礎となるものであり、1人1つが原則です。「第二の住民票」にどこまで法的な意味合いを持たせるのか、綿密な制度設計が不可欠です。
  2. 財源の確保:「第二の住民」にどのようなサービスを提供するのか、そのための財源をどう確保するのかという問題があります。ふるさと納税との連携はその一つの解かもしれませんが、制度が複雑化する懸念もあります。
  3. 都市と地方のバランス:住民税などの税収は、あくまで住民票のある自治体に入ります。関係人口が増える地方自治体の負担と、人口流出元の都市部とのバランスをどう取るかも論点となります。

ふるさと住民登録とSDGsのつながり – 目標11を中心に

この政策は、SDGsの理念、特に目標11「住み続けられるまちづくりを」と強く結びついています。

都市部への一極集中が進むと、地方は過疎化し、都市は過密化します。これは持続可能ではありません。ふるさと住民登録制度は、都市と地方の間に「人の流れ」という新たなパイプを通すことで、双方の課題解決を目指す試みです。

【専門家の視点】
この取り組みは、SDGsのターゲット11.a「国・地域規模の開発計画の強化を通じて、都市部、都市周辺部及び農村部間の経済的、社会的、環境的なつながりを良好なものにする」をまさに具現化するものです。
さらに、地方での新たな働きがい創出(目標8)、都市と地方の格差是正(目標10)、そして多様な主体(都市住民・地方自治体・企業)の連携促進(目標17)にも貢献する、複合的な価値を持つ政策といえます。

私たちにできること – 未来の「関係人口」になるために

この制度の実現を待つだけでなく、私たち一人ひとりが今から「関係人口」になるための一歩を踏み出すことができます。

  • 個人として:ふるさと納税をきっかけに、寄付した地域を実際に訪れてみる。自分のスキルを活かせるプロボノ(専門知識を活かすボランティア)や、ワーケーションを試してみる。
  • 企業として:ワーケーション制度を福利厚生に導入する。地方の課題解決に取り組むNPOや企業と連携する。

まとめ:人のつながりが、持続可能な地域をつくる

「ふるさと住民登録制度」は、人口という「数」の問題を、人と人との「関係性」の豊かさへと転換させようとする、未来志向のチャレンジです。

課題は多いものの、この議論は私たちに「どこで暮らすか」だけでなく「どのように多様な場所と関わって生きていくか」という、より本質的な問いを投げかけています。この新しい人の流れが、日本全体の持続可能性を高める原動力となることを期待します。


執筆:脱炭素とSDGsの知恵袋 編集長 日野広大  
参考資料: 毎日新聞、内閣府地方創生推進室

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