【SDGs×美容院】「Beauty」と「Tech」の融合が描く、持続可能な美容業界の未来
株式会社BEAUTECH 代表取締役 小山様 × ジャパンSDGsアワード受賞者 松尾真希
東京・自由が丘。トレンドと落ち着きが同居するこの街で、美容院「VIALA 自由が丘」の運営と「Beauty(美)」と「Technology(技術)」を融合させ、美容業界の新しい常識をつくろうとしている企業があります。 株式会社BEAUTECH。その名の通り、コスメ事業とIT事業の両輪で、働く美容師の幸せと、顧客の深い悩みの解決、そして地域社会への貢献を同時に実現しようとしています。
今回は、同社の小山様に、その革新的な取り組みと、根底にある「誠実」「品質」「挑戦」という企業理念について、ジャパンSDGsアワード受賞者の松尾真希がお話を伺いました。

「人」を大切にするための「テクノロジー」活用
松尾: 本日はよろしくお願いいたします。御社の「BEAUTECH」という社名、そして「Beauty × Technology」というコンセプト、非常に現代的で興味深いです。一見、対極にあるようにも思えるこの二つを、どのように融合させているのでしょうか?
小山: よろしくお願いいたします。IT化というと、どうしても「効率化」や「人を減らす」というイメージを持たれがちですよね。でも、私たちの目的は真逆なんです。「人」を大切にするために、テクノロジーを使っているんです。
松尾: 人を大切にするためのテクノロジー、ですか。具体的にはどのような場面で活用されているのですか?
小山: 例えば、教育カリキュラムの完全動画化です。美容業界では伝統的に、先輩が後輩につきっきりで教えるOJTが主流でした。しかし、これだと教える側も教わる側も時間の拘束が長く、教え方のバラつきもストレスになります。そこで私たちは、動画教材を導入し、スタッフが自分の好きな時間に予習・復習ができる環境を整えました。
松尾: なるほど。20代の若いスタッフの方々は、自分の時間も大切にしたい世代ですものね。
小山: おっしゃる通りです。スマホでいつでも正解の技術を確認できる環境は、彼らのストレスを減らし、結果として成長スピードも早めています。これは、 SDGs目標8「働きがいも経済成長も」 の実践だと考えています。効率化で生まれた時間を、人間関係の構築や、より高度な技術の習得、そしてプライベートの充実に充ててほしいんです。
松尾: 御社のIT事業部で培われた開発ノウハウが、美容院の現場にも活かされているわけですね。
小山: はい。ITの知見と美容現場への理解、その両方があることが私たちの強みです。現場の「当たり前」を進化させ、人がもっと輝ける仕組みをつくることが、私たちの挑戦です。
奨学金補助に住宅手当…「安心」が「挑戦」を生む
松尾: 人材育成の面では、福利厚生にもかなり力を入れられていると伺いました。
小山: はい。実は美容学生の約半数が奨学金を借りているという現状があります。そこで私たちは、独自の奨学金返済補助制度を導入しました。また、業界では珍しい住宅手当や、無期限の雇用保証なども行っています。
松尾: そこまで手厚くサポートされる理由は何でしょうか?
小山: マイナスからのスタートではなく、安心して働けるゼロ、あるいはプラスの状態からスタートしてほしいからです。生活の不安を取り除くことで、初めてスタッフはお客様のことに集中でき、プロとしての挑戦ができると考えています。
松尾: 従業員を単なる労働力ではなく、共に未来を創るパートナーとして大切にされている姿勢が伝わってきます。まさに企業理念にある「誠実」の実践ですね。
「コンプレックス解消」と「地域貢献」へのこだわり
松尾: 美容院としての提供価値についても教えてください。御社では「美容=コンプレックス解消」というコンセプトを掲げていらっしゃいますね。
小山: はい。トレンドを追うだけでは、お客様が年齢を重ねた時に迷子になってしまいます。私たちは、お客様の骨格や髪質の悩みを深く理解し、その人だけの魅力を引き出す「髪のお医者さん」でありたいんです。
松尾: 独自のカウンセリングシステムや、ITを活用した顧客情報の管理も、そのためにあるのですね。
小山:その通りです。担当者が変わっても一貫した高品質なサービスを提供できる体制を整えています。髪の悩みが解消され、自分に自信が持てるようになることは、精神的な健康(ウェルビーイング)に直結します。これはSDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」 にも通じる、美容の社会的意義だと信じています。
松尾: コスメ事業で展開されている商品についても、品質への強いこだわりを感じます。
小山:はい。特に思い入れがあるのが、10年ほど前から展開している「自由が丘シャンプー&トリートメントシリーズ」 です。これは、本来ライバルであるはずの自由が丘の実力派5サロンが共同開発したオリジナル商品なんです。「高品質な物をできるだけ安価な価格でご提供し、地域貢献をしたい」という想いで結集し、丸1年かけ、20回以上の試作を重ねて完成させました。
松尾: ライバル店同士が手を取り合って地域のために開発されたとは、素晴らしいストーリーですね。
小山:また、来年春には自社の完全オリジナルオイル「KAZARU゜(飾)」 の販売も予定しています。フローラルとサボンの2種類の香りで展開する、植物由来成分配合のボタニカル商品です。髪だけでなく全身に使える安全・安心なオイルで、奇麗な髪と身体に導いてくれます。
松尾:「自由が丘シャンプー」も「KAZARU゜(飾)」も、人にやさしく、地球にもやさしい商品なのですね。「品質は信頼の証」という御社の理念が形になっていると感じます。
地域貢献と環境への配慮
松尾: 最後に、地域や環境への取り組みについてもお聞かせください。自由が丘での清掃活動を10年も続けられているそうですね。
小山:「 勝手にやっていることなんですが(笑)」とよく言うんですが、 美容院「VIALA 自由が丘」の駅周辺やサロン周辺の掃除は、今ではスタッフ全員の日課になっています。地域の方から声をかけていただくこともあり、温かい交流が生まれています。これはSDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」 につながる活動だと思っています。
松尾: 環境配慮の面ではいかがですか?
小山: 雑誌の完全タブレット化によるペーパーレス化を進めています。また、先ほどお話ししたオリジナル商品も含め、私たちは高品質なものを長く、大切に使うことこそがサステナビリティであり、 SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」 だと考えています。
松尾: 本日は貴重なお話をありがとうございました。「人」を中心においたテクノロジーの活用、そして地域や環境への配慮。BEAUTECH様の取り組みは、これからの美容業界の新しいスタンダードになると確信しました。
小山: ありがとうございます。これからもBeautyとTechの両輪で、お客様、スタッフ、そして社会の幸せに貢献できるよう、挑戦を続けていきます。
【企業情報】 株式会社BEAUTECH
運営サロン:VIALA 自由が丘
所在地:東京都世田谷区奥沢5-26-12 XAREA自由が丘2F
事業内容:コスメ事業、IT事業
主要なSDGs取り組み:
- 目標3:すべての人に健康と福祉を(コンプレックス解消、高品質コスメによるウェルビーイング向上)
- 目標8:働きがいも経済成長も(教育DX、奨学金補助、働きやすい環境整備)
- 目標11:住み続けられるまちづくりを(地域清掃活動)
- 目標12:つくる責任 つかう責任(ペーパーレス化、共同開発商品・ボタニカル商品の展開)

コメント