📈【日本総研調査】大企業の情報開示はどこまで進んだ?サステナビリティ「ガバナンス」と「戦略」の現状を解説

目次

こんな人にオススメです

  • 有価証券報告書サステナビリティ情報開示の最新動向を知りたい企業のIR・サステナビリティ担当者
  • SSBJ基準TCFD提言が具体的に企業の開示にどのような影響を与えているか知りたい方
  • 役員報酬サステナビリティ指標の連動性や、シナリオ分析の開示状況に興味がある方
  • 企業のガバナンス体制気候変動戦略の開示レベルを高めたい経営企画部門の方
  • 企業の非財務情報を評価する投資家・金融機関の方

皆さん、こんにちは!「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野雄大です。

企業のサステナビリティ情報開示は、今や大企業にとって避けて通れない経営課題となりました。特に2023年に有価証券報告書にサステナビリティ情報欄が新設され、SSBJ基準の策定が進む中で、開示内容の「質」が問われています。

今回は、TOPIX100企業を対象とした最新の調査レポート「日本総研 サステナビリティ・人的資本 情報開示調査(2025年度)」サステナビリティ編・第2回を深掘りし、開示の核となる「ガバナンス」「戦略」**の現状と、今後の課題について考察します。

最新のSDGsニュース:

【日本総研 サステナビリティ・人的資本 情報開示調査(2025年度)】サステナビリティ編 第2回(日本総合研究所 黒川裕也 他) https://www.jri.co.jp/column/opinion/detail/16310/

SDGsニュースの要約

日本総合研究所は、TOPIX100企業を対象に2025年度の有価証券報告書におけるサステナビリティ情報開示の状況を調査し、特に「ガバナンス」と「戦略」の要素に着目して分析しました。

ガバナンス」に関しては、サステナビリティ関連委員会を設置している企業は74社に上り、多くの企業で体制整備が進んでいることが明らかになりました。取締役会へのサステナビリティ関連事項の報告頻度については、96社が記載しており、具体的な頻度(年○回など)よりも「適時」または「定期的に」といった柔軟な表現が多い状況です。また、役員報酬にサステナビリティ関連指標を組み込んでいる企業は72社に達しており、特に委員会を設置している企業で組み込み率が高い傾向が見られました。

戦略」に関しては、気候変動リスクを扱うシナリオ分析について記載する企業はすでに91社と高水準ですが、2024年度からの増加はわずかでした。しかし、シナリオ分析の結果特定されたリスクや機会の財務的影響を開示する企業は、2024年度の39社から2025年度には53社へと増加しており、開示内容の充実が進んでいます。一方で、シナリオ分析の実施時期を開示している企業は91社中23社にとどまっており、SSBJ基準が求める開示内容にはまだ対応できていない部分があることが課題として指摘されています。

SDGsニュースのポイント

本調査結果から見えてくる、大企業のサステナビリティ情報開示のポイントを解説します。

  • ガバナンス体制の整備は進展:
    • サステナビリティ関連委員会を設置している企業は74社(TOPIX100中)と、大半の企業で専門の委員会が設けられています。
    • 取締役会への報告頻度を記載している企業は96社に達し、2023年度から増加傾向にあります。これは、TCFD提言やESG評価機関の要請の影響が大きいと考えられます。
  • 役員報酬への指標組み込みが加速:
    • 役員報酬に温室効果ガス排出量などのサステナビリティ関連指標を組み込んでいる企業は72社に上ります。
    • 特にサステナビリティ関連委員会を設置している企業では、役員のコミットメントを担保するために、報酬連動の記載が多い傾向が見られました。SSBJ基準でも、報酬に関する開示が求められています。
  • シナリオ分析は定着したが「時期」が課題:
    • 気候変動に関するシナリオ分析を実施し、その旨を有価証券報告書に記載している企業は91社と、すでに高い水準にあります。
    • 財務的影響を開示する企業は、2025年度に53社と大きく増加しており、開示の質の充実が見られます。開示内容は、具体的な金額を示す「定量情報」と、定性的な評価を示す「定性情報」の双方が増えています。
  • SSBJ基準への対応で求められる「実施時期」の明記:
    • シナリオ分析に言及する企業のうち、実施時期を記載している企業は23社にとどまっています。
    • SSBJ基準では、シナリオ分析の実施時期の開示や、気候レジリエンスの定期的な評価が求められており、多くの企業が今後対応を迫られる分野です。適切なタイミングでの見直しが望ましいとされています。

SDGsニュースを考察

今回の調査結果は、日本の大企業がサステナビリティ情報開示において、「量」から「質」へとフェーズを移行していることを明確に示しています。特に「ガバナンス」と「戦略」は、企業が本当にSDGsや気候変動を経営の根幹に据えているかを判断する重要な指標です。

🚨 欠けている「戦略」の透明性:SSBJ基準が示す次の一歩

「戦略」の開示において、シナリオ分析の実施時期が明記されていない企業が多いという点は、投資家やステークホルダーにとって大きな課題です。

気候変動リスクは日々変化しています。過去の分析結果を更新せず開示し続けている場合、分析に用いた前提や企業の状況が変わっている可能性があり、開示情報の信頼性が低下してしまいます。SSBJ基準が実施時期の開示を求めているのは、企業が戦略計画に沿って定期的に分析を更新し、**「気候レジリエンス」**を評価しているかを明確にするためです。

ここがポイントです。TCFD提言は「推奨」でしたが、SSBJ基準は**「要求」へと移行しつつあります。企業は、単にシナリオ分析を行ったという事実だけでなく、「いつ、どのような前提で分析し、その結果、戦略をどう変更したか」というプロセスをストーリーとして開示**する必要があるのです。

🔗 ガバナンスの深化:報酬連動は「本気度」の証明

役員報酬にサステナビリティ指標を組み込む企業が72社に達しているのは、非常に心強い動きです。ガバナンス体制が整っても、トップマネジメントがコミットしなければ、サステナビリティは「お飾り」で終わってしまいます。報酬連動は、役員がサステナビリティ目標の達成に個人的な責任を持つという、企業の本気度を示す重要なサインです。

特に、委員会を設けて議論を委任している企業ほど報酬連動の記載が多いという傾向は、ガバナンスの構造とインセンティブ設計が連動し、多面的な取り組みが推進されていることを示しており、SDGs目標16(平和と公正をすべての人に)が目指す包摂的で効果的な説明責任のある制度づくりに貢献していると言えます。

私たちにできること

この開示の進化を、企業はどのように活かせばよいでしょうか。

  1. SSBJ基準を次期開示の羅針盤とする:
    • 2025年3月のSSBJ基準公表を受け、今後開示は標準化が進みます。特にシナリオ分析の実施時期や、ガバナンスと報酬の連動性について、SSBJ基準の要請を参照しながら自社の開示内容を充実させましょう。
  2. 定量的情報の拡充を目指す:
    • 財務的影響の開示は進んでいますが、定量情報と定性情報に分かれています。投資家の判断材料として、炭素税コストだけでなく、移行リスク機会に関する定量的な情報の開示をさらに強化していくことが重要です。
  3. 他社の好事例を研究する:
    • 日本総研のレポートでも指摘されているように、外部基準に加え、他社の開示状況や好事例を鑑みて検討することが重要です。特に具体的な報告回数や審議事項を開示している事例(総合商社の例など)を参考に、監督状況の正確な理解を促す開示を目指しましょう。

開示の「質」を高めることは、企業価値の向上に直結します。今日か

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