【SDGs】トッズ強制労働疑惑。問われるラグジュアリー企業の責任

こんにちは、「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野広大です。

イタリアの高級ブランド「トッズ(TOD’S)」が、サプライチェーンにおける強制労働および劣悪な労働環境の疑惑をめぐり、ミラノ検察の捜査対象になっているというニュースは、ファッション業界、そしてSDGsに取り組む全ての企業に大きな衝撃を与えています。

これはトッズに限った話ではなく、過去2年間で「ロロ・ピアーナ」「ヴァレンティノ」「ディオール」「ジョルジオ アルマーニ」などの名だたるラグジュアリーブランドも同様の捜査を受けていることが明らかになっており、グローバルなサプライチェーンを持つ企業のガバナンスが厳しく問われているのです。

今回のトッズの件は、まさにSDGsの根幹、特に**ゴール8「働きがいも経済成長も」**における「人権」と「企業の責任」について、極めて重要な教訓を与えてくれます。

目次

こんな人におすすめです


1. ニュースの概要:トッズにかけられた「強制労働」の疑惑

ミラノ検察当局は2024年からトッズのサプライチェーンを捜査しており、ロンバルディア州とマルケ州に所在する一部の下請け業者において強制労働や劣悪な労働環境が見つかったとして、司法管理下に置くことを求めて裁判所に提訴しました。

トッズ側の主張と裁判所の判断

トッズ側は、本件について「検察の申立ておよび上訴を棄却した」と認識していると述べています。さらに、同グループはプロフェッショナルな行動の規範として広く評価されており、従業員の健康と生活の質を常に最優先にしてきたと強調しています。

事実、裁判所は、強制労働が見つかった下請け業者が、トッズが直接契約しているサプライヤーではなく下請け業者であること、また、製造していたものが消費者に販売する商品ではなく従業員向けのユニホーム用資材だったことなどを理由に、当初の訴えを棄却しています。また、25年5月の控訴審でも同様の理由で棄却されています。

問題の核心は「サプライチェーンの遠さ」

裁判所が「直接契約ではない」「ユニホーム用の資材だ」という点を棄却理由にしたとしても、倫理的に問題が残るのは明らかです。

SDGsの観点から見ると、企業が責任を負うべき範囲は、もはや自社工場や直接のステークホルダーだけではありません。どこまで辿れるかわからない下請け、孫請けに至るまで、**「人権への負の影響」**がないかを確認する責任があるのです。a tiered supply chain diagram illustrating the connection between a brand, a direct supplier, and sub-contractorsの画像

Shutterstock


2. SDGsの視点:「人権デューデリジェンス」の徹底が急務

今回の問題は、SDGsの最も重要な要素の一つである「人権の尊重」と、それを担保するための**ガバナンス(SDGs 16)**が世界的に強化されていることを示しています。

焦点となるSDGsゴール8とターゲット8.7

SDGsゴール8には、ターゲット8.7として以下の内容が掲げられています。

ターゲット 8.7: 強制労働を根絶し、現代の奴隷制度及び人身取引を終らせるための即時かつ効果的な措置を講じる。

ラグジュアリー企業は、その高価な製品の裏側にある「職人技」が、**労働の尊厳(SDGs 8)**によって支えられていることを証明する義務があります。

ディエゴ・デッラ・ヴァッレ会長兼CEOは、こうした非難が“メード・イン・イタリー”に及ぼす波及効果を軽視すべきでないと主張しています。そのためにも、厳格な品質管理と労働の尊厳の尊重を同時に担保する規則の整備が絶対に不可欠であるとトッズは述べています。

見過ごせない「サプライチェーンの盲点」

トッズは、「イタリアのラグジュアリー企業が高価な製品を販売する一方で労働者に低賃金しか支払っていないという見解は根拠がない」と強調しています。しかし、問題は「低賃金」だけでなく、「強制労働」や「劣悪な労働環境」という、より深刻な人権侵害の有無です。

私たちが企業に問うべきは、人権デューデリジェンスの「どこまで深く、どこまで広範に」実施しているかです。下請け業者の下請けまで監視できていない状況は、企業のサプライチェーン全体における最大の盲点となり、欧州ではもはや看過されません。


3. 私たちにできること:「責任ある消費」を問う

今回の件は、私たち消費者や投資家にも、ファッション製品の裏側にあるストーリーを見る目を養う重要性を示しています。

個人レベルのアクション

  1. 製品の「ストーリー」を問う: 製品が高価であるほど、その製造に関わる労働者の賃金や労働環境が適正であるかを疑問に持つ。
  2. 企業に質問する: 購入時やSNSなどを通じて、「あなたのサプライチェーンの人権デューデリジェンスの基準は?」と問いかける。
  3. 認証マークを確認する: フェアトレードやオーガニック認証など、第三者が労働環境を検証しているマークを持つ製品を選ぶ。

企業・組織レベルのアクション

  1. サプライヤーとの契約に「人権条項」を強化する: 下請け業者だけでなく、その先の孫請けにも監査の権利を行使できる契約を結ぶ。
  2. トレーサビリティを確保する: 製品の素材がどこから来て、誰の手で作られたかを明確にする仕組みを導入する。
  3. 定期的な監査をサプライヤーのサプライヤーまで広げる: 形式的な監査でなく、抜き打ちや現地言語での聞き取りなど、実効性の高い調査を実施する。

まとめ:信頼こそが「メード・イン・イタリー」の価値

トッズが主張するように、自社の従業員の質と環境の優秀さを直接確認してもらうための招待は、**説明責任**を果たそうとする姿勢として重要です。

しかし、現代のSDGs経営においては、自社の優秀さだけでなく、サプライチェーン全体の人権を担保することが、ラグジュアリー製品の真の価値、そして「メード・イン・イタリー」の評判を維持する唯一の道です。

「複雑で大きな環境問題も、一人ひとりの小さな行動の積み重ねで変えられる」。ファッションを選ぶ私たちの意識が、サプライチェーンの透明性を高める大きな力になります。

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