こんな人にオススメです
- 最近「人手不足」のニュースをよく聞く方
- 旅行先や飲食店で「お店が回っていないな…」と感じたことがある方
- 会社の生産性を上げたいと思っている経営者やマネージャー
- SDGsゴール8(働きがいも経済成長も)の両立に関心がある方
- 日本の将来の「稼ぐ力」がちょっと心配な方
最近、お気に入りのお店が人手不足で営業時間を短縮していたり、旅行先のホテルの予約が取りにくかったりしませんか?
実は今、日本全体で「人手不足」が非常に深刻化しており、なんと年間16兆円ものビジネスチャンス(商機)が失われている、という衝撃的な試算が出ました。16兆円というと、静岡県の経済規模(約18兆円)に匹敵する額です。
これは、私たちのSDGs(持続可能な開発目標)の達成、特に「経済成長」にとって非常に大きな壁となっています。なぜこんなことが起きているのか、そして私たちに何ができるのか、一緒に考えてみましょう。
最新のSDGsニュース:
人手不足が奪った年16兆円の商機 需要刺激だけで成長できない現実 (出所: 日本経済新聞)
SDGsニュースの要約 (2記事まとめ)
日本経済新聞と日本総研の試算により、人手不足による機会損失が年間16兆円に達することが明らかになりました。この規模は過去5年間で4倍に増え、日本の名目GDPの2.6%にも達します。特に影響が深刻なのは、ホテルや介護などの非製造業(13兆円)です。現場では、ホテルが稼働率50%で限界だったり、宅配サービスが休業したりする事態が発生。「人手不足倒産」も過去最多を更新しています。政府が需要を刺激する「積極財政」を掲げても、供給する人手が足りなければ経済は回りません。記事は、根本的な解決には「労働生産性の改善」こそが急務だと強く指摘しています。
SDGsニュースのポイント
- 失われた商機は年16兆円: 人手不足による機会損失(本来得られるはずだった利益)は年16兆円に達しました。これは静岡県の県民総生産(18兆円)に迫る規模です。
- 5年で4倍に急増: この損失額は過去5年間で4倍に増えており、日本の名目GDP(国内総生産)の2.6%を占める深刻な状況です。
- 非製造業が特に深刻: 16兆円のうち13兆円は、ホテル、介護、物流などの非製造業で発生しています。これらの産業は機械化が遅れがちです。
- 現場の悲鳴①(ホテル): 栃木県日光市の大型旅館では、従業員数がコロナ禍前より4割少なく、約130室ある客室の稼働率は50%程度が限界。宴会場も7つのうち2つしか動かせない状態です。
- 現場の悲鳴②(宅配): コープデリは、高齢者のライフラインでもある宅配業務を、8月に5日間も一斉休業しました。代理のスタッフを立てる負担も限界だったためです。
- 「人手不足倒産」が過去最多: 求人難や人件費高騰を原因とする倒産は、24年度に前年度比6割増の309件となり、過去最多を更新しました。
- 倒産「予備軍」も増加: 人手不足倒産のリスクが高い「予備軍」と定義される企業は、調査対象の2.5%にのぼり、この5年で増加傾向にあります。
- 投資もストップ: 人手不足などの影響で、予定していた設備投資が実行できないケースも。TOCビルの大規模建て替え計画も、3年遅い36年以降に延期されました。
- 政府の対応と「本当の課題」: 高市首相は労働時間規制の緩和(残業上限の見直し)を検討しています。しかし、本当に解決すべき課題は「生産性の低さ」です。
- IT投資の決定的な不足: 人手不足が深刻な「飲食・宿泊」や「医療・福祉」は、従業1人当たりのソフトウエア資産(IT投資)が全産業平均の1/9~1/20と、極端に低いことが明らかになりました。
SDGsニュースを考察 (働きがいも経済成長も”両立”させる道は?)
これは本当に深刻な数字ですね…。SDGsゴール8「働きがいも経済成長も」の達成を掲げているのに、その「経済成長」の大きなチャンスを、「働き手」がいないために丸ごと失っている。まさにSDGsのジレンマです。
旅行先で「スタッフさんが足りなくて大変そう…」と感じることはありましたが、それが日本全体で16兆円もの損失になっているとは…。中小企業にとっては、倒産に直結する死活問題です。
労働時間延長は「根本解決」にならない
記事では、高市首相が「労働時間規制の緩和」を検討しているとありますね。確かに一時的には労働供給量が増えるかもしれませんが、これは根本的な解決にはならない、と私は強く思います。
むしろ、ただでさえ人手不足で疲弊している現場のウェルビーイング(Well-being)をさらに損ない、心身の健康を害したり、離職を早めたりする危険性があります。これでは持続可能(サステナブル)ではありません。
問題の核心は「人への依存」と「IT投資不足」
この記事で一番重要なポイントは、「生産性の低さ」と「ソフトウエア投資の決定的な不足」です。
人手不足が最も深刻な介護や宿泊業こそ、予約システム、顧客管理、単純作業の自動化など、IT(デジタル)の力で効率化できる部分が山積みのはずです。
そこへの投資が全産業平均の数十分の一では、いつまでも「人の力」に頼るしかなくなり、人手不足の無限ループから抜け出せません。これはまさにSDGs経営の視点の欠如です。目先のコストを惜しんでIT投資をしないことが、結果として16兆円もの機会損失という、はるかに大きなコストを生んでしまっているんです。
私たちにできること
この大きな問題、私たちにもできることがあります。
1. 「人」と「IT」への投資を本気で考える(企業側)
もしあなたが経営者やマネージャーなら、今こそ「人(の教育)」と「IT(の導入)」への投資を決断すべき時です。単純作業をIT化し、人はもっと創造的な仕事(おもてなしやケアの質の向上など)に集中できるようにする。それがサステナビリティ経営であり、生産性向上と「働きがい」の両立につながります。
2. 多様な人材が働ける環境を作る
人手が「足りない」のであれば、「働ける人」を増やすしかありません。性別、年齢、国籍、障害の有無にかかわらず、誰もが能力を発揮して働きやすい環境を整えること、つまりダイバーシティ&インクルージョンの推進が、人手不足の直接的かつ強力な解決策になります。
3. 私たち消費者も「賢く」なる
私たち消費者も、過剰なサービスを求めすぎていないか、見直す時かもしれません。宅配便の再配達を極力減らす努力をしたり、ホテルのアメニティを辞退して清掃の負担を減らしたり…。働く人たちの負担を思いやる「賢い消費者」になることも、社会全体でこの問題を乗り越える大切一歩です。
人手不足は「危機」ですが、見方を変えれば「IT化と働き方改革を本気で進める最大のチャンス」です。単にお金を配って需要を刺激するだけでなく、日本の「稼ぐ力(供給力)」そのものを高めること。それこそが、SDGsゴール8「働きがいも経済成長も」の達成につながる道だと信じています。

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