日本の宝シャインマスカットが海外へ?栽培権ライセンス問題から見るSDGsと私たちの食卓

目次

こんな人にオススメです

  • 秋の味覚、シャインマスカットが大好きな方
  • 日本の農業の未来や、食の安全に関心がある方
  • ビジネスにおけるブランド戦略や知的財産の問題に興味がある方
  • SDGs、特に生産者の生活や国際協力について考えたい方

秋の果物の王様ともいえる「シャインマスカット」。その甘さと香りで私たちを魅了してやみませんが、この日本が誇る高級ブドウをめぐって、今ちょっと心配な問題が起きています。農林水産省が、その栽培権(ライセンス)をニュージーランドに与えることを検討しているのに対し、一大産地である山梨県が「待った!」と声を上げたのです。これは単なる農業ニュースではなく、日本のブランド、生産者の生活、そして国際的なルール作りについて考える、SDGsに深く関わるお話なんです。

SDGsニュースの要約

日本の高級ブドウ「シャインマスカット」の栽培権を、農林水産省がニュージーランドの企業に与える方向で検討していることが明らかになりました。これは、日本の優れた品種の種苗が海外へ違法に流出し、無断で栽培・輸出されるのを防ぐための公式なライセンス供与の第一号案件となる可能性があります。しかし、これに対し産地である山梨県が猛反発。長崎幸太郎知事は、植物検疫などが壁となり国産品の輸出が思うように進んでいない現状を訴え、「対等な競争すらできない状況でライセンスを与えれば、国内の生産者が大きな打撃を受ける」として、小泉進次郎農相に方針転換を求めました。背景には、すでに中国や韓国に流出した種苗による無断栽培で、国は年間100億円以上の損失が出ているという深刻な問題があります。国の大きな戦略と、産地の切実な思いがすれ違っている状況です。

SDGsニュースのポイント

私たちの食卓にも関わるこのニュース、少し複雑ですがポイントを整理してみましょう。

  • 何が起きているの?: 農林水産省が、日本で生まれたシャインマスカットをニュージーランドで公式に作れる「栽培権(ライセンス)」を与えようとしています。
  • 農水省の狙いは?: 中国や韓国などで、無断で栽培された「ニセモノ」が出回るのを防ぐためです。公式にライセンスを与えることで、ブランド価値を守り、管理しようという考えです。
  • なぜ産地は怒っているの?: 「自分たちが作ったシャインマスカットを海外に売りたいのに、検疫などの問題で輸出が難しい。それなのに、海外にライバルを増やすのはおかしい!」というのが山梨県の主張です。
  • 問題の根っこ: 実は、シャインマスカットの苗はすでに海外に流出してしまっており、特に東南アジア市場では中国・韓国産が出回っています。これにより、日本は年間100億円以上の損失を受けていると試算されています。
  • 国の計画: このような「ただ乗り」を防ぐために、正式なライセンス契約を結んでいく方針を立てていました。ニュージーランドの件はその第一歩になるはずでした。
  • 話し合いの状況: 山梨県知事が小泉農相(当時)に直接抗議した結果、大臣は「産地の理解が得られない状況では進めない」と応じ、計画は一旦ストップする形になっています。

SDGsニュースを考察

今回の問題は、まさに「言うは易く行うは難し」という状況です。SDGsの視点で見ると、3つの重要なテーマが浮かび上がってきます。

知的財産を守ることと、生産者を守ること(SDGs 9, 8)

シャインマスカットは、研究機関が約30年もかけて開発した、日本の「技術革新」の結晶です。これはSDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」 で守られるべき大切な知的財産。無断栽培を防ぐためにライセンス制度を進めたい国の考えは、この知的財産を守るためのものです。

しかし、そのブランドを育ててきたのは、日々の努力を重ねる農家の方々です。彼らの生活と経済的安定を守ることは、SDGs目標8「働きがいも経済成長も」 の核心です。産地からすれば、「ブランドを守る」という国の政策が、結果的に自分たちの首を絞めることになっては本末転倒だと感じているわけです。

パートナーシップの重要性(SDGs 17)

この問題の最大の課題は、SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」 がうまく機能していない点にあります。「シャインマスカットの価値を高め、守りたい」というゴールは、国も産地も同じはず。しかし、そのための手段をめぐって対立してしまいました。

国はグローバルな視点で「国際的なルール作り」を急ぎたい。一方、産地はローカルな視点で「まずは自分たちの輸出環境の整備」を求めている。このすれ違いを解消するには、一方的に方針を決めるのではなく、丁寧な対話、まさに「ステークホルダー・エンゲージメント」を通じて、お互いの立場を理解し、協力体制を築くことが不可欠です。

私たちにできること

このニュースは、私たち消費者にとっても決して他人事ではありません。

  • 産地を意識して選ぶ: シャインマスカットを購入する際に、それがどこで作られたものなのか、少しだけ意識してみませんか。生産地のストーリーを知って食べることで、その一粒の価値がより深く感じられ、生産者への応援にもつながります。
  • 食の背景に関心を持つ: 私たちの口に入る食べ物が、どのような人の努力や、どんなルールの上で届けられているのか。食品の生産地から食卓までを追跡する「トレーサビリティ」のような仕組みに関心を持つことも、持続可能な食を支える第一歩です。
  • ニュースの行方を見守る: この問題がどう解決されていくのか、継続して関心を持ちましょう。私たちの関心が、国や関係者を動かし、より良い解決策へと導く力になるかもしれません。

日本の宝であるシャインマスカットを、生産者も消費者も、そして世界の人々も幸せにする形で守り育てていく。そのためには、目先の利益だけでなく、長期的な視点に立った丁寧な合意形成が求められています。

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