こんにちは、「SDGsの知恵袋」編集長の日野です。
先日、JICA(国際協力機構)が計画していた「ホームタウン事業」が撤回されるというニュースがありました。これは、日本国内の自治体がアフリカの国々の「ホームタウン」となって交流を深めるというもの。なんだか、地域ぐるみで国際交流ができる、夢のある素敵な取り組みに聞こえますよね。しかし、岩屋毅外相が「誤解と混乱を招き、自治体に過大な負担が生じた」と陳謝する事態となりました。
一体、何があったのでしょうか。今回はこのニュースから、SDGsの目標達成に不可欠な「パートナーシップ」を成功させるための大切なヒントを探ってみたいと思います。
そもそも、どんな事業だった?SDGsとの関係は?
このホームタウン事業は、国と国という大きな枠組みだけでなく、日本の市や町とアフリカの国々が直接つながり、顔の見える関係を築くことを目指すものでした。例えば、文化交流やスポーツイベントを通じて、子どもたちが遠いアフリカの国を身近に感じるきっかけになったかもしれません。
これは、SDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の考え方そのものです。政府だけでなく、自治体や市民、企業など、様々な立場の人々(ステークホルダー)が協力し合うことで、より良い世界を目指す。この事業は、その理想的な形の一つになり得たはずでした。
なぜ撤回に?「理想」と「現実」の壁
では、なぜこんなに意義深い取り組みが、撤回に至ってしまったのでしょうか。
岩屋外相の言葉にある通り、原因は「自治体への過大な負担」でした。
ここがポイントです。国際協力という高い「理想」を掲げることは非常に大切です。しかし、それを実行する現場、今回は自治体の職員の方々や地域住民の「現実」を置き去りにしては、計画はうまく進みません。
おそらく、計画の段階で「具体的にどんな負担があるのか」「予算や人員は足りるのか」「地域住民の理解は得られるのか」といった点について、自治体との十分な対話や調整が不足していたのではないでしょうか。良かれと思って進めたことが、現場にとっては「やらされ仕事」になってしまう。これは、どんなプロジェクトにも起こりうる落とし穴ですね。
失敗から学ぶ、持続可能なパートナーシップの作り方
今回の件は、残念な結果に終わりました。しかし、これを単なる失敗で終わらせず、今後のSDGs推進のための「大切な教訓」とすることができます。
- 対話から始めよう:何かを始める前に、関係者としっかり話し合うこと。トップダウンで決めるのではなく、現場の声に耳を傾け、一緒に計画を作っていく姿勢が不可欠です。
- 足元を固めよう:大きな目標を達成するためには、まず足元を固める必要があります。情熱や理念だけでなく、それを支える予算や人材といった現実的なリソースを確保することが、持続可能な取り組みの鍵となります。
- 丁寧に説明しよう:なぜこの取り組みが必要なのか、どんな良い未来につながるのかを、関係者や国民に丁寧に説明し、共感の輪を広げていく努力が求められます。
外務大臣が「国民に幅広い理解を得られるよう努力する」「相手国政府への説明をこれまで以上に徹底したい」と述べているように、政府も今回の課題を認識し、次へ繋げようとしています。
失敗は成功のもと、と言います。今回の教訓を活かし、今度はより現実的で、多くの人が心から「参加したい!」と思えるような、地に足のついた国際協力の形が生まれることを期待したいですね。私たちも、自分の住むまちの国際交流に関心を持つことから、その一歩を始めてみませんか?
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