こんにちは、「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野広大です。
2025年8月9日、長崎の平和祈念式典の日に、また一つ、未来に向けた大切な動きがありました。原爆投下時に長崎市周辺にいながら、国の定めた地域外だったために「被爆者」と認められていない「被爆体験者」の方々が、石破首相と面会する方向で調整が進められているというニュースです。CEO松尾のご両親も間接的に被爆しているので気になるニュースとして挙げられていました。
このニュースは、単なる過去の問題ではありません。80年という時を経てなお、続く願いの声。これは、私たちが目指すSDGs(持続可能な開発目標)、特に「誰一人取り残さない」という基本理念と深く、深く関わっています。
今回はこのニュースを紐解きながら、なぜこの動きがSDGsにとって重要なのか、そして私たち一人ひとりが平和な未来のために何ができるのかを一緒に考えていきたいと思います。
こんな人におすすめです
- 「被爆体験者」の問題について初めて知った方
- 平和のために自分に何ができるか考えたいと思っている方
- SDGs、特に「平和」や「不平等」の目標に関心がある企業担当者や学生
「被爆体験者」とは?置き去りにされた声
まず、「被爆者」と「被爆体験者」の違いについて、簡単にお話ししますね。
- 被爆者:国が指定した特定の地域で、原爆投下に直接遭遇した人々。被爆者健康手帳が交付され、医療費の助成などが受けられます。
- 被爆体験者:その指定地域のすぐ外で、同じように放射能の影響を受けた人々。「黒い雨」を浴びたり、救援活動で入市したりした方も含まれます。しかし、線引き一本で「被爆者」とは認められず、十分な援護を受けられずにきました。
「同じ空の下で、同じように苦しんでいるのに、なぜ見過ごされるのか」。これは、人間の尊厳と公平性に関わる、非常に重い問いかけです。この”線引き”によって、長年にわたり健康への不安や経済的な負担を抱えながら、声を上げ続けてきた方々がいるのです。
なぜこれがSDGsにとって重要なのか?2つのゴールからの視点
この問題は、SDGsの2つの重要なゴールに光を当てています。
1. ゴール16「平和と公正をすべての人に」:忘れられた正義
SDGs目標16は、誰もが平和で、公正な社会で生きる権利を保障することを目指しています。
被爆体験者の方々が求めているのは、まさにこの「公正さ」と「司法への平等なアクセス」です。国との対話を求め、法の下での平等を訴える行動は、ターゲット16.3「国内及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、すべての人々に司法への平等なアクセスを提供できるようにする」や、ターゲット16.7「あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型、代表的な意思決定を確保する」という目標そのものです。
彼らの声に耳を傾け、政策決定の場に包摂すること。これこそが、平和で公正な社会を築くための第一歩。この対話の実現は、核兵器廃絶という大きな目標だけでなく、私たちの社会の足元にある「公正さ」を問い直す機会を与えてくれます。これは、企業活動におけるステークホルダー・エンゲージメントの重要性にも通じる考え方ですね。
2. ゴール10「人や国の不平等をなくそう」:残された格差
SDGs目標10は、国内や国家間の不平等をなくすことを目指しています。
被爆体験者の問題は、まさにこの目標が掲げる課題を象徴しています。同じ原爆の被害を受けながら、行政の線引き一つで生まれてしまった「格差」。これは、SDGsターゲット10.3が目指す「差別的な法律、政策及び慣行の撤廃…などを通じて、機会均等の確保、成果の不平等の是正」に直結します。
さらに、この問題はすべての人に健康と福祉を(ゴール3)にも関わります。健康への不安を抱えながら、十分な医療支援を受けられない状況は、まさしく「誰一人取り残さない」社会が解決すべき課題です。
私たちにできること:平和な未来への小さな一歩
このニュースに触れて、「自分には何ができるだろう?」と感じた方も多いのではないでしょうか。僕も、小学生の子どもを持つ親として、この歴史と教訓をどう伝えていくべきか、常に考えています。
個人レベルのアクション
- 知る、そして語り継ぐ:まずはこの「被爆体験者」の問題に関心を持つこと。そして、家族や友人とこの話題について話してみてください。歴史を知り、語り継ぐことが、風化させないための最も大切な一歩です。ぜひ、今日は11時9分に、祈りのひと時を持ちましょう。
- 平和資料館やオンラインで学ぶ:長崎や広島の平和祈念資料館のウェブサイトには、多くの証言や資料が公開されています。夏休みにお子さんと一緒に見てみるのも、素晴らしい平和学習になります。
- SNSで想いを共有する:この記事をシェアしたり、ハッシュタグ「#平和と公正をすべての人に」「#被爆体験者の声」などであなたの想いを発信することも、大きな力になります。
企業・組織レベルのアクション
- 平和教育への支援:平和関連のNPOや団体への寄付や、社員向けの平和学習研修の実施も有効です。
- 人権を尊重する経営:自社の事業活動が誰かの人権を侵害していないかを見直す「人権デューデリジェンス」の考え方は、この問題とも深くつながっています。
希望の兆し:対話が未来を創る
今回の首相との面会調整は、非常に大きな「希望の兆し」だと僕は感じています。
僕が学生時代にパラオでサンゴ礁の保全活動に参加した時、立場の違う漁師さんと環境保護団体が、何度も何度も対話を重ねて解決策を見出していく姿を目の当たりにしました。対立や分断を乗り越える力は、いつだって真摯な「対話」から生まれるのです。
80年もの間、閉ざされがちだった対話の扉が、今、開かれようとしています。この一歩が、被爆体験者の方々の長年の願いを叶えるだけでなく、私たちの社会に根付く様々な不平等や分断を乗り越え、「誰一人取り残さない」未来へと進むための、大きな原動力になることを信じています。
まとめ:今日からできる3つのアクション
最後に、この記事を読んでくださったあなたが今日からできることを3つ提案します。
- 家族や友人に「被爆体験者」のことを話してみよう。
- オンラインで1つ、被爆者の方の証言を読んでみよう、聴いてみよう。
- SDGsの目標16「平和と公正」について、自分たちの暮らしの中で何ができるか考えてみよう。
遠い長崎で起きている出来事が、SDGsというレンズを通すことで、私たちのすぐそばにある課題と繋がります。知ることが第一歩、そして行動することが変化を生む。この小さな積み重ねが、必ず平和な未来を創ると、僕は信じています。
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