こんにちは。「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野広大です。私たちのメディアは、SDGsへの貢献が評価され、政府SDGs推進本部から「ジャパンSDGsアワード」で外務大臣賞をいただいたFrankPRが運営しています。
イベント会場や駅、商業施設で、女性トイレにだけ長蛇の列。夏休みで音楽フェスやお祭りなどでお馴染みのこの光景を「仕方ない」「いつものこと」と見過ごしてはいないでしょうか。しかし、それは「当たり前」ではなく、私たちの社会に深く根付いた、是正すべき「不平等」の表れです。
最近、この長年の課題に対し、ついに政府が重い腰を上げました。今回は、この問題をSDGs、特にジェンダー平等の視点から深掘りし、一人の娘を持つ父親としても、なぜこれが見過ごせない問題なのかを解説します。
この記事でわかること
- 女性トイレの行列がなぜ「構造的な不平等」なのか
- SDGs目標5「ジェンダー平等」から見る、トイレ問題の本質
- 政府が「骨太の方針」で是正に乗り出した背景と、その重要性
- 誰もが快適な社会のために、私たち一人ひとりができること
「当たり前の光景」に潜む構造的な問題とは?
なぜ、いつも女性トイレばかりが混雑するのでしょうか。その原因は、利用者のマナーや個人の問題ではなく、トイレの「設計」そのものにあります。
参照ニュース: 女性トイレの行列、政府が是正へ緊急通知 見過ごされてきた不平等 (日本経済新聞)
- 便器の数の不均衡:同じ面積のトイレでも、男性用は個室(大便器)のほかに省スペースな小便器を多数設置できるため、総便器数が女性用より多くなる傾向があります。ある市民調査では、男性用便器の数は女性用の1.7倍にも上ったといいます。
- 利用時間の差:女性は脱ぎ着に時間がかかる、生理用品の交換が必要、子ども連れで利用するなど、一人当たりの滞在時間が男性より長くなる傾向があります。
- 健康へのリスク:特に夏場の炎天下での行列は熱中症のリスクを高めます。また、トイレを我慢することは膀胱炎など、健康に直接的な悪影響を及ぼす可能性があります。
この問題は、単なる「不便さ」にとどまらず、女性の健康を脅かし、イベントやレジャーを楽しむ時間、ひいては社会参加の機会さえも奪う、深刻な課題なのです。
SDGs目標5「ジェンダー平等」の視点から見るトイレ問題の本質
このトイレ問題は、まさにSDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」で問われている課題の典型例です。
それは「無意識のバイアス」。男性基準で設計された社会インフラ
これまで、多くの公共インフラは、無意識のうちに健康な成人男性を「標準(デフォルト)」として設計されてきました。トイレの設計基準もその一つで、女性特有の事情や利用実態が十分に考慮されてこなかった結果が、今日の長蛇の列を生んでいます。悪意はなくとも、結果としてジェンダーによる不利益を生み出す。これこそが「構造的な差別」であり、「無意識のバイアス(Unconscious Bias)」なのです。
政府(国交省)が近年推進する「ジェンダー主流化(Gender Mainstreaming)」という考え方は、こうしたバイアスをなくすための重要なアプローチです。これは、政策や計画を立てるあらゆる段階で「この決定は、男女にどのような異なる影響を与えるか?」という視点を組み込むことを指します。トイレ問題の是正は、この「ジェンダー主流化」が社会インフラの分野で具体的に動き出した証と言えるでしょう。
政府が本腰!「骨太の方針」から読み解く、共生社会への一歩
今回、政府が「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」でこの問題に初めて言及し、関係省庁がイベント主催者へ緊急通知を出したことは、非常に大きな前進です。今後は、有識者会議で公共施設のトイレ設置に関する新たなガイドラインが作られる予定です。
すでに、国内外には先進事例があります。
- 山口県萩市:男性の小便器1に対し、女性便器を2つ設置することを目安とする指針を策定。
- スフィア基準(国際基準):災害時の避難所における個室トイレの男女比を1対3と定めています。
これらの事例は、男女の利用実態の違いを考慮すれば、便器の数を「男女同数」にするだけでは不十分であり、女性用の数をより多く確保する必要があることを示唆しています。これは、SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」や目標11「住み続けられるまちづくりを」で求められる、すべての人にとって公平で安全なインフラ整備の要諦です。
私たちの社会に求められること。誰もが快適な公共空間のために
この問題の解決は、行政だけに任せておけばよいものではありません。
- 施設管理者・イベント主催者:新しいガイドラインを待つだけでなく、自主的にトイレの配置や数を工夫することが求められます。最近では、行列の状況をリアルタイムで知らせるITサービスなども登場しています。
- 設計・建設業界:これからの公共空間の設計において、ジェンダーの視点を標準仕様として組み込むことが不可欠です。
- 私たち市民:公共施設の改善に関するパブリックコメントに意見を寄せたり、この問題について家族や友人と話し合ったりすることも、社会の意識を変える大きな一歩になります。
私たちFrankPRも、DE&I(多様性・公平性・包摂性)の推進を支援する立場として、こうした物理的な環境設計が、誰もが活躍できるインクルーシブな社会の実現にいかに重要かを訴え続けていきたいと考えています。
まとめ:トイレ問題は、社会全体の成熟度を映す鏡
女性トイレの行列問題は、単なる「トイレの数」の問題ではありません。それは、私たちの社会が、多様な人々の存在やニーズをどれだけ想像し、インフラに反映できてきたかを問う、社会全体の成熟度を映す鏡です。
「仕方ない」と諦めていた不便や不利益が、声を上げることで「解決すべき課題」に変わる。今回の政府の動きは、その好例です。この一歩を確かな前進につなげ、誰もがストレスなく快適に過ごせる社会を実現するために、私たち一人ひとりがこの問題を「自分ごと」として捉えていくことが重要です。
執筆:脱炭素とSDGsの知恵袋 編集長 日野広大
参考資料: 日本経済新聞、国土交通省、厚生労働省
メタディスクリプション案(124文字)
なぜ女性トイレだけ常に行列?政府も是正に乗り出した「見過ごされた不平等」をSDGs専門家が解説。ジェンダー平等の視点から、誰もが快適な社会のヒントを探る。
OGP文案(87文字)
【編集長解説】「また女性トイレだけ長蛇の列…」この”当たり前”は、実はSDGsが問う社会の不平等。政府がようやく動いた背景と、私たちが考えるべきことを徹底解説。
パーマリンク
https://example.com/sdgs-blog/womens-toilet-queue-gender-equality-sdgs
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