【専門家解説】ハワイ旅行が実質値上げへ。2026年導入「グリーンフィー」の背景にあるオーバーツーリズムとSDGs

こんにちは。「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野広大です。私たちのメディア運営元であるFrankPRは、SDGsへの貢献が評価され、政府SDGs推進本部より「ジャパンSDGsアワード」外務大臣賞をいただいています。その専門的知見から、今回は多くの日本人にとって憧れの観光地ハワイで導入が決まった、新しい税金「グリーンフィー」について、その背景にある深刻な環境問題と、私たち観光客に求められる新たな責任を解説します。

今回はFrank PRのCEOである松尾が大学と大学院をハワイで過ごしていて、サステナビリティを初めて知った場所としていつも印象に残っていると話しています。松尾よりぜひこの記事の解説を書いてもらいたいということで書いています。

「楽園」ハワイが今、大きな岐路に立たされています。観光客が押し寄せすぎる「オーバーツーリズム」と気候変動が、その美しい自然と住民の生活を脅かしているのです。この危機に対応するため、ハワイ州議会は2026年1月1日から、観光客を対象に環境税、通称「グリーンフィー」を導入することを決定しました。

これは単なる「旅行代金の値上げ」ニュースではありません。私たちが愛する観光地を持続可能にするため、そしてSDGsを達成するために、世界がどのように変わろうとしているかを示す象徴的な出来事です。

  • 本記事のポイント
    • なぜハワイは「グリーンフィー」導入に踏み切ったのか?楽園が直面する現実。
    • グリーンフィーとは何か?いつから、いくら、何に使われるのかを具体的に解説。
    • SDGsの視点で考える、観光客に求められる「楽しむ責任」とは。
    • ハワイの挑戦は、日本の観光地にとっても他人事ではない。
目次

楽園の悲鳴:ハワイが「グリーンフィー」導入を決めた理由

世界中の人々を魅了するハワイですが、その裏側では深刻な問題が進行しています。

オーバーツーリズムと気候変動がもたらす環境危機

年間1,000万人近くが訪れる観光客は、ハワイ経済を支える一方で、環境に大きな負荷をかけてきました。

  • サンゴ礁の白化: 多くの日焼け止めに含まれる成分や、海水温の上昇が原因。
  • ビーチの浸食: 海面上昇により、ワイキキビーチの砂浜が年々失われています。
  • ゴミ問題と水質汚染: 観光客の増加がインフラの許容量を超えています。
  • 外来種の侵入: 固有の生態系が脅かされています。

これらの問題は、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」目標15「陸の豊かさも守ろう」に直結する、待ったなしの課題です。

松尾がよく話しているのは「ハワイの人はマラマアイナという大地を大事にする、という言葉が普通に出てくる。

それは言葉や領土を一度奪われているので、未来の子孫たちのためにどのようにこの土地を(誰かの所有とかという概念を超えて)守らないといけないと考えている人が多く、とてもサステナブルな地域性があると松尾がよく言っています。

すでに約18%+α!それでも新税が必要なハワイの台所事情

「これ以上、宿泊費が高くなるのか」という声が上がるのも無理はありません。現状でもハワイの宿泊料金には、

  • ハワイ州消費税(4.712%)
  • オアフ島宿泊税(3.00%)
  • ハワイ州宿泊税(10.25%)
    という合計約18%もの税金に加え、多くのホテルで1泊あたり数十ドルの「リゾートフィー」が課されています。

それでも新たな税金に踏み切るのは、これらの環境対策費用を、物価高に苦しむ地元住民にこれ以上負担させることなく、環境負荷の主な原因者である観光客にも応分の負担を求めるという、「原因者負担の原則」に基づいた苦渋の決断なのです。

「グリーンフィー」とは?あなたの旅行がハワイの自然を守る力になる

それでは、新しく導入されるグリーンフィーの具体的な中身を見ていきましょう。

  • いつから?: 2026年1月1日から施行予定です。
  • どう変わる?: 既存のハワイ州宿泊税(Transient Accommodations Tax)が10.25%から11%に引き上げられ、増収分となる0.75%がグリーンフィーとして環境保全プロジェクトに充てられます。
  • 誰が対象?: ホテルやコンドミニアムの宿泊客、ハワイに寄港するクルーズ船の乗客などが対象です。
  • 税金の使い道は?: 年間約1億ドル(約140億円超)と見込まれる税収は、以下のようなプロジェクトに活用されます。
    • サンゴ礁の保護と再生
    • ビーチの浸食対策(砂の補充など)
    • 森林の再生と固有種の保護
    • ハイキングコースの維持管理
    • 外来種の駆除

あなたの支払う税金が、ハワイの美しい自然を未来へつなぐための直接的な投資になる、ということです。

これは他人事ではない。SDGsで考える「持続可能な観光」の新しいかたち

ハワイのこの動きは、世界の観光のあり方が大きく変わろうとしていることを示しています。

「楽しむ責任」:観光客に求められる新たな役割 (SDGs 12)

これまで観光客は「消費者」であり、お金を払ってサービスを享受する立場でした。しかし、これからは違います。美しい自然や文化を享受するだけでなく、それを守り、維持していく「責任」の一端を担うことが求められます。

これは、SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」における「持続可能な観光」の考え方そのものです。私たちは旅先を選ぶ際に、価格やサービスだけでなく、「その地域が環境や社会にどれだけ配慮しているか」という視点を持つことが重要になります。そして、旅をする我々も“モノを消費する“経済から体験の経済に移っていますが、忘れずにいたいのは旅自体が環境負荷の原因となっていることです。これを踏まえた上で「旅する場所を美しく将来まで保っていくための負担を背負う」を責任をグリーンフィーとして持つ必要があります。

世界の観光地が注目するハワイの挑戦

このような環境税の導入は、イタリアのベネチア(入域料)やニュージーランド(観光税)など、オーバーツーリズムに悩む他の観光地でも始まっています。ハワイの挑戦は、日本の京都や鎌倉、沖縄といった観光地が同様の課題を解決していく上でも、重要なモデルケースとなるでしょう。

まとめ:愛する場所を守るために。私たち旅行者ができること

2026年以降にハワイへ旅行する際、私たちは少しだけ高い税金を支払うことになります。しかし、それは単なる負担増ではありません。私たちが愛するハワイの自然を、次の世代、そしてさらにその先の世代へと引き継いでいくための「未来へのチケット代」です。

グリーンフィーの導入をきっかけに、私たち一人ひとりが旅行者としてのあり方を見つめ直すことが、持続可能な観光、そしてSDGsの達成に向けた大きな一歩となるはずです。ハワイを訪れる際は、ぜひその税金の意味を心に留め、自然への敬意を払った行動を心がけてみてはいかがでしょうか。


執筆:脱炭素とSDGsの知恵袋 編集長 日野広大
参考資料:

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