その日焼け止め、海の環境を壊しているかも?SDGs時代の「リーフセーフ」な選び方を専門家が解説

脱炭素とSDGsの知恵袋 編集長の日野広大です。私たちのメディアは、SDGs推進に関する取り組みで政府(ジャパンSDGsアワード)から表彰をいただいた知見を活かし、皆様の生活に身近なSDGsアクションを解説しています。

今回は、夏の必需品である「日焼け止め」が、実はSDGs目標14「海の豊かさを守ろう」と深く関わっているというテーマを掘り下げます。何気なく選んだ一本が、知らず知らずのうちに美しいサンゴ礁を傷つけているかもしれません。この記事を読めば、地球と自分の肌、両方に優しい日焼け止めの選び方がわかります。

  • 問題の核心:なぜ日焼け止めがサンゴに悪影響を及ぼすのか?
  • キーワード解説:「リーフセーフ」とは?
  • 賢い消費者の選択:環境に優しい日焼け止めの見分け方
  • 私たちにできること:日焼け止めだけに頼らない紫外線対策
目次

なぜ、いつもの日焼け止めが問題に?

多くの日焼け止めには、紫外線をブロックするために「紫外線吸収剤」という化学物質が含まれています。特に問題視されているのが以下の2つの成分です。

  • オキシベンゾン
  • オクチノキサート(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)

これらの成分は、サンゴの幼生の成長を阻害し、成体のサンゴの遺伝子を傷つけ、白化現象(サンゴが白く変色し、最終的に死滅する現象)を引き起こす原因となることが科学的に指摘されています。

ある調査では、毎年最大1万4000トンもの日焼け止めが、私たちの体から海へと流れ込んでいると推計されています。サンゴ礁は「海の熱帯雨林」とも呼ばれ、海洋生物の約4分の1が暮らす重要な住処です。この生態系が失われることは、漁業や観光業、そして最終的には私たちの食卓にも影響を及ぼす深刻な問題なのです。

キーワード解説:「リーフセーフ」とは?

「リーフセーフ(Reef Safe)」とは、直訳すると「サンゴ礁に安全」という意味です。上記のオキシベンゾンオクチノキサートといった、サンゴ礁に有害とされる特定の化学物質を含まない製品を指す言葉として使われています。「オーシャンフレンドリー」や「ビーチフレンドリー」も同様の意味で使われます。

世界の規制動向

この問題は国際的にも重要視されており、いくつかの国や地域ではすでに対策が始まっています。

  • ハワイ(米国): 2021年からオキシベンゾンとオクチノキサートを含む日焼け止めの販売を禁止。
  • パラオ共和国: 2020年から、さらに厳しい10種類の化学物質を含む日焼け止めの持ち込みや販売を禁止。
  • タイ王国: 国立公園内での特定の紫外線吸収剤を含む日焼け止めの使用を禁止。

これらの動きは、日焼け止め選びが個人の問題だけでなく、地球環境全体に関わるグローバルな課題であることを示しています。

賢い選択:海に優しい日焼け止めの見分け方

では、私たちは具体的にどのような製品を選べば良いのでしょうか。ポイントは、紫外線吸収剤ではなく「紫外線散乱剤」を使用した製品を選ぶことです。

  • 成分表示で「酸化亜鉛」「酸化チタン」を確認
    これらは天然由来のミネラル成分で、肌の表面で物理的に紫外線を反射・散乱させて日焼けを防ぎます。そのため「ノンケミカル処方」とも呼ばれます。これらの成分は、サンゴへの影響が少ないとされています。
  • 「ナノ粒子不使用(ノンナノ)」の表記もチェック
    一部では、成分がナノ(超微粒子)化されているとサンゴが吸収してしまう可能性があると指摘されています。より環境への配慮を重視するなら、「ノンナノ」製品を選ぶのがベターです。

私たちができる、もう一歩進んだアクション

リーフセーフの日焼け止めを選ぶことは素晴らしい第一歩です。しかし、日焼け止めだけに頼らない対策を組み合わせることで、環境への負荷をさらに減らすことができます。

  1. 物理的に肌を覆う
    UPF(紫外線保護指数)機能のあるラッシュガードやシャツ、帽子、サングラスを積極的に活用しましょう。肌の露出を減らすことで、日焼け止めを塗る量そのものを減らせます。
  2. 適切な使用を心がける
    海に入る直前ではなく、家を出る20〜30分前に塗ることで肌に定着し、海に溶け出す量を減らせます。また、海から上がった後は、こまめに塗り直しましょう。

まとめ

私たちの消費行動は、地球の未来を形作る投票のようなものです。日焼け止め一つを選ぶ際にも、その背景にある環境問題を知り、成分表示を確認する。この小さな行動の積み重ねが、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」の達成に繋がります。

幸いなことに、近年では日本でも多くのメーカーが環境に配慮した「リーフセーフ」な製品を開発・販売しています。今年の夏は、自分の肌だけでなく、大好きな海のことも想いやった日焼け止めを選んでみませんか。


執筆:脱炭素とSDGsの知恵袋 編集長 日野広大
参考資料:25ans, aqua-base.com, sotokoto-online.jp 各Webサイト

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