こんにちは。「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野広大です。SDGs推進の専門家として政府からも表彰(ジャパンSDGsアワード)を受けた私たちの視点から、今回は未来を担う「Z世代」が企業選びの際にSDGsをどう見ているのか、非常に興味深い調査結果について解説します。
法政大学の学生と企業が連携して実施したこの調査は、これからの企業経営や採用活動のあり方を考える上で、極めて重要な示唆に富んでいます。Z世代は、会社の未来、そして社会の未来をどのように見ているのでしょうか。
この記事でわかること
- Z世代が選ぶ「SDGs企業ランキング」トップ3とその理由
- なぜランキング上位は、私たちに身近な「BtoC企業」なのか?
- Z世代が本当に重視するSDGs目標と、「自分らしい働き方」の関係
- これからの時代に、企業がZ世代から選ばれるために必要なこと
Z世代が注目する「SDGs企業」トップ3とその理由
まず、ニュースの核心である法政大学とSoZo株式会社による共同調査「【Z世代】SDGsシューカツ解体白書」の結果を見てみましょう。大学生・大学院生601名が選んだ「SDGsに積極的に取り組んでいる企業」のトップ3は、以下のようになりました。
- 1位:スターバックスコーヒージャパン
- 2位:トヨタ自動車
- 3位:ファーストリテイリング(ユニクロなど)
ニュースのポイント
- 調査名:「【Z世代】SDGsシューカツ解体白書」(法政大学とSoZo株式会社の産学連携プロジェクト)
- 選定理由:上位の理由として「脱プラスチック、再生可能エネルギーなど環境面の取り組みを知っていた」「SDGsの目標に合致するサービスや商品を知っていた」が挙げられた。
- 出典:朝日新聞SDGs ACTION! 2023年3月21日記事
スターバックスのペーパーカップやリユーザブルカップの推進、トヨタのEV戦略、ユニクロの衣料品リサイクル。これらは全て、私たちが消費者として日常的に触れることができる、具体的で「目に見える」アクションです。この「可視性」が、Z世代の評価に直結していることがわかります。
なぜBtoC企業が上位に?BtoB企業が向き合うべきコミュニケーション課題
ランキングの上位が、消費者向けの商品やサービスを扱う「BtoC(Business-to-Consumer)企業」で占められている点は、非常に重要な示唆を与えてくれます。
これは、部品や素材、法人向けサービスなどを提供する「BtoB(Business-to-Business)企業」の取り組みが劣っているという意味では決してありません。むしろ、優れた技術でサプライチェーン全体の脱炭素に貢献しているBtoB企業は数多く存在します。
【専門家の視点】 ここに横たわるのは、BtoB企業の「コミュニケーション課題」です。どれだけ素晴らしい取り組みをしていても、それが未来の担い手であるZ世代に届いていなければ、企業選びの候補にすら上がらない可能性があります。 BtoB企業は今後、自社の事業が社会や環境にどう貢献しているのか、そのストーリーを学生にも分かりやすく翻訳し、伝えていく努力が不可欠になるでしょう。
Z世代の価値観を深掘り – 「環境」だけではないSDGsの捉え方
この調査のさらに興味深い点は、Z世代が関心を持つSDGs目標の内訳と、彼らが理想とする働き方にあります。
最も関心が高いのは「教育」、そして「ジェンダー平等」
SDGsの17目標のうち、Z世代が最も関心を持っているのは、以下の3つでした。
- 目標4「質の高い教育をみんなに」 (49.9%)
- 目標5「ジェンダー平等を実現しよう」 (45.8%)
- 目標1「貧困をなくそう」 (42.1%)
環境問題(目標13など)への関心ももちろん高いですが、それ以上に**「人」や「社会の公正さ」**に関するテーマが上位に来ていることは、注目に値します。彼らはSDGsを、単なる環境保護活動ではなく、自分たちの生き方や権利、社会のあり方そのものに関わる課題として捉えているのです。
求めるのは「自分らしさ」と「柔軟性」- SDGsと働きがいの接続
理想の働き方についての回答も、この価値観を裏付けています。「自分らしく働ける環境を選びたい」「ライフステージによって仕事量を調節したい」という回答が過半数を占めました。
これは、SDGs 目標8「働きがいも経済成長も」で掲げられるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を、自分たちのキャリアに求めていることに他なりません。
専門家が解説:企業がZ世代に選ばれるために必要な3つのこと
この調査結果から、これからの企業がZ世代という未来の才能に選ばれるために、何をすべきかが見えてきます。
- 取り組みの「本気度」と「透明性」 表面的なPR活動(SDGsウォッシュ)はすぐに見抜かれます。なぜその課題に取り組むのかという企業の「パーパス(存在意義)」を明確にし、具体的な目標や進捗を正直に、透明性高く開示することが信頼の基礎となります。
- 「自分ごと」として共感できるストーリー 単なる活動報告ではなく、社員がどのような想いでSDGs活動に関わっているのか、自社の製品やサービスが社会課題の解決にどう役立っているのかを、個人のストーリーとして語ることが共感を呼びます。
- 多様な働き方を許容する制度と風土 Z世代が求める「自分らしさ」や「ジェンダー平等」を体現する、柔軟な働き方やキャリアパス、そして公正な評価制度を整えることが不可欠です。DE\&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の推進は、もはや経営戦略そのものです。
まとめ:Z世代の声は、未来の社会と企業を映す鏡
今回の調査は、Z世代がもはや「未来の消費者・労働者」ではなく、現在の企業価値を測る重要なステークホルダーであることを明確に示しました。
彼らが企業に求める基準は、単なる待遇や安定性だけではありません。その企業が社会に対して誠実であるか、そして自分自身がその一員として誇りを持ち、自分らしく成長できるか。その問いに真摯に向き合うことこそが、企業の持続的な成長の鍵となるでしょう。
執筆:脱炭素とSDGsの知恵袋 編集長 日野広大 参考資料: 朝日新聞SDGs ACTION!、SoZo株式会社・法政大学「【Z世代】SDGsシューカツ解体白書」
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