【SDGs】富豪は不老不死、社会は高齢化。米国が示す「健康格差」のリアル
こんにちは、「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野広大です。
最近、Netflixで「DON’T DIE “永遠に生きる”を極めし男」という衝撃的なドキュメンタリーが話題ですね。巨額の富を築いたブライアン・ジョンソン氏が、文字通り「死なない」ために年間数億円を投じて若返りに挑む姿。かたや、同じアメリカでは「100歳以上の人口が激増」し、深刻な「出生率の低下」が国家安全保障上の脅威とまで言われるニュースも報じられています。
一方は個人の限界を超えた延命、もう一方は社会全体の持続可能性の危機。この両極端な2つのニュースは、実は【用語解説】SDGsとは?17のゴールと169のターゲットを徹底解説!、特に目標3「すべての人に健康と福祉を」や目標10「人や国の不平等をなくそう」の観点から、私たちに強烈な問いを突きつけています。
こんな人におすすめです
- Netflixの「DON’T DIE」を見て、モヤモヤした方
- 「健康格差」という言葉にピンと来た方
- SDGsと私たちの「命」のつながりを知りたい方
- 高齢化社会や出生率の問題に関心がある方
ニュースの概要:「死なない男」と「高齢化する国」
今、アメリカで起きている2つの対照的な「いのち」にまつわる現実を見てみましょう。
1. 個人の挑戦:ブライアン・ジョンソンの「ブループリント」
Netflixのドキュメンタリーで描かれるブライアン・ジョンソン氏(47歳)は、自ら起業した会社を約1200億円で売却した資産家です。彼はその豊富な資金を使い、30人以上の医療チームと共に「ブループリント」プロジェクトを実行しています。
- 毎日30種類以上のサプリメント摂取
- 徹底管理された食事と運動
- MRIなどの高度医療機器による常時監視
- 遺伝子治療や、なんと実の息子の血漿(けっしょう)輸血
これらはすべて「若返り」と「死の超越」のため。彼の外見は確かに若々しいですが、その試みは「嘲笑」の対象となったり、専門家から「医学的価値はない」と批判されたりもしています。
2. 社会の現実:米国の高齢化と出生率の急落
一方で、アメリカ社会全体は大きな岐路に立たされています。
- 高齢化の加速: 100歳以上の人口が2010年から2020年で50%も増加し、8万人を超えました。65歳以上の割合も16.8%に達しています。
- 出生率の急落: 出生率は歴史的な低水準で、「人口置換水準(人口を維持できるレベル)」を大きく下回っています。これは「国家安全保障上の脅威」とまで言われています。
- 支え手の減少: これまで労働力と人口を支えてきた移民への風当たりが強まる政策も議論されており、社会のバランスが崩れようとしています。
なぜこれがSDGsにとって重要なのか?
この2つのニュースを並べると、SDGsが目指す「誰一人取り残さない」社会との間に、大きなギャップが見えてきます。
1. SDGs目標3:「健康と福祉」の深刻な格差
ジョンソン氏の試みは、最先端の医療技術への「究極のアクセス」です。しかし、ドキュメンタリーの批評にもあるように、「アメリカにはオピオイド中毒や貧困層の絶望があるのに」という視点は重要です。
巨額の富を持つ一人が「150歳」を目指す一方で、基本的な医療アクセスすらままならず、平均寿命が縮んでいる地域や層が存在する。これはまさに「健康格差」の極みです。SDGs目標3が目指すのは、一部の人の超・健康ではなく、「すべての人」の健康経営に必須のウェルビーイング(Well-being)とはなんですか?(良好な状態)なのです。
2. SDGs目標10:「不平等」が“命の格差”を生む
この問題は、経済格差がそのまま「命の格差」につながる現実を示しています。SDGs「10-3. 機会均等の確保、成果の不平等の是正」の進化: 社会の公平と公正への道筋が示すように、SDGsは成果の不平等をなくすことを目指しています。
しかし、「死なない」ための技術が富裕層に独占され続ければ、SF映画のような「永遠の命を持つ富裕層」と「限りある命の一般層」という究極の分断が生まれかねません。
3. 社会の持続可能性:出生率低下という静かな危機
ジョンソン氏が個人の延命に巨額を投じる裏で、アメリカ社会は「出生率低下」という、社会全体の“延命”に関わる危機に瀕しています。高齢者を支える若い世代が減り続ければ、年金、医療、労働力など、社会基盤そのものが維持できなくなります。
これは、SDGsゴール3.4達成への道: 非感染症疾患(NCD)による早期死亡を3分の1減少させる方法といった社会全体の健康目標を達成する上でも、大きな足かせとなります。
私たちにできること:日野広大の視点
この対比は、私たちに「テクノロジーと富を、何のために使うべきか?」という根源的な問いを投げかけます。
個人レベル:「自分の健康」と「社会の健康」を考える
ジョンソン氏のように徹底はできなくとも、自分の健康に関心を持つことは素晴らしいことです。バランスの取れた食事や適度な運動は、私たち個人ができるSDGs 3への貢献です。
しかし、もう一歩進んで、「社会全体の健康」にも目を向けてみませんか? 例えば、地域の高齢者支援のボランティアに関心を持ったり、健康格差の問題について家族で話してみたりすること。ドキュメンタリーの最後、ジョンソン氏が息子さんとの交流で人間らしさを取り戻すシーンは象徴的です。私たちもまた、他者とのつながりの中でこそ、本当の「健康」や「幸せ」を見出せるのではないでしょうか。
社会レベル:テクノロジーを「誰のため」に使うのか
ジョンソン氏の試みが、将来的に何らかの医学的発見につながる可能性もゼロではありません。しかし、SDGsの観点から言えば、その技術革新(SDGs 9)は、「すべての人」に恩恵をもたらすために使われてこそ価値があります。
私たちは有権者として、また消費者として、「一部の人のための技術」ではなく、「社会課題を解決するための技術」(例えば、貧困層向けの医療サービスや、高齢化社会を支えるテクノロジー)を支援する企業や政策を選ぶことが重要です。
まとめ:本当の「豊かさ」とは何か
「死なない男」の孤独な挑戦と、「高齢化する社会」の静かな危機。この2つの現実は、私たちにとっての「豊かさ」とは、個人の寿命の長さだけではなく、社会全体がいかに持続可能で、公平であるかにかかっていることを教えてくれます。
知ることが第一歩、そして行動することが変化を生みます。この記事が、あなたの「健康」と「社会」について考えるきっかけになれば幸いです。

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