こんにちは。「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野広大です。当メディアは、ジャパンSDGsアワードで外務大臣賞を受賞した企業の知見を活かし、国内外の最新動向を厳選してお届けしています。
全国で「メガソーラー反対」の動きが盛り上がる一方で、計画は後を絶ちません。この問題の裏側には、「環境のための事業」という名目で、実際には日本の自然を破壊し、一部の事業者だけが利益を得る構造が存在します。この根深い問題は、所有者不明の土地が放置される空き家問題とも通底しています。
なぜ「環境破壊」が一部の事業者にとって「儲かるビジネス」になるのか、その構造を深く解説します。
環境破壊で得をするカラクリ
この問題の核心は、事業コストを極限まで切り詰め、その負担を「自然環境」と「地域社会」に押し付けながら、利益だけは国が保証する制度で確実に得るという、非常にいびつなビジネスモデルにあります。
① コスト削減の仕組み:「管理不全の土地」と「ずさんな工事」
事業者が利益を最大化するためには、まず初期投資と運営費用を徹底的に安く抑える必要があります。その手法が、環境破壊と直結しています。
1. 土地の仕入れ:「空き家問題」と同じ構図
メガソーラーには広大な土地が必要ですが、事業者はこれを驚くほど安価に手に入れます。狙われるのは、管理が行き届かない山林や原野です。
- 所有者のメリット: 地方では、相続したものの活用できず、固定資産税や管理の負担だけがのしかかる「負動産」と化した土地が増えています。所有者にとって、事業者に土地を売ったり貸したりすることは、この負担から解放されることを意味します。そのため、二束三文の安い価格でも手放してしまうのです。
- 事業者のメリット: 事業者は、本来なら価値があるはずの広大な森林を、管理コスト以下の投げ売り価格で確保できます。これが、空き家が安く買い叩かれて問題の温床となる構図とそっくりなのです。
2. 開発と工事:安全と環境を「コストカット」
土地を安く仕入れたら、次は建設コストを削減します。
- 森林伐採: 本来、森林を開発するには土砂災害対策などに多額の費用がかかります。しかし、一部の事業者はこの対策を軽視し、「森林を伐採してパネルを並べるだけ」というずさんな工事を行います。
- 安価な海外製品: 太陽光パネルや関連設備は、安価な中国製品などが多く使われます。これにより初期投資を大幅に削減できます。
② 利益確定の仕組み:「固定価格買取制度(FIT)」と国民負担
コストを極限まで切り詰めた後、事業者は「売上」を確保します。ここには国が作った盤石な仕組みが存在します。
固定価格買取制度(FIT)という「約束」
これは、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が国が定めた価格で一定期間(20年間など)買い取ることを義務付けた制度です。事業者にとっては、一度発電所を作ってしまえば、20年間にわたって安定した収益が約束されることを意味します。
利益の源泉は国民の「再エネ賦課金」
では、その買い取り費用はどこから出ているのでしょうか?それは、私たち国民一人ひとりが毎月支払う電気料金に含まれている「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」です。
つまり、事業者の利益の構図は以下のようになります。
(国民が負担する高い買取価格) ― (環境破壊で安く抑えたコスト) = 事業者の莫大な利益
この仕組みがある限り、事業者は地域住民の反対を押し切ってでも事業を強行しようとします。
全国で激化する反対運動
こうした構造を背景に、各地で地域住民や自治体が事業者と対立するケースが頻発しています。
- 北海道・釧路湿原: 大阪の事業者「日本エコロジー」が国立公園周辺で建設を強行しています。この計画では、森林法で定められた許可を得ずに工事を進めたとして、北海道から一部工事の中止勧告を受けています。しかし事業者は「かなり投資しており、立ち止まることはできない」として、工事を中止しない意向です。
- 宮城・仙台市秋保町: 沖縄のレンタルオフィスに本社を置く「合同会社CES」が国内最大級のメガソーラー構想を計画。事業者の実態が見えず、市が接触困難な状況にあることなどから、地元住民や宮城県知事が「大反対」を表明し、5,385人分の反対署名が提出されました。
- 岩手・大船渡市: 福岡の「自然電力」による計画は、住民の反対運動が続く中、最終的に人件費や資材費の高騰を理由に事業者が中止を発表しました。
まとめ:環境をコストカットの道具にするビジネスモデル
結論として、「環境破壊で得をする」スキームとは、以下の流れで成り立っています。
- 仕入れ: 管理不全の森林を「負動産」として所有者から安く買い叩く。
- コスト削減: 安全対策や正規の手続きを無視して森林を伐採し、ずさんな工事で建設費を抑える。
- 利益確定: 国民が負担する「再エネ賦課金」を原資としたFIT制度により、20年間の安定した高収益を確保する。
つまり、事業者は環境保全や地域防災にかかる本来のコストを負担せず、そのツケを自然や地域住民に押し付けることで利益を生み出しているのです。これが、日本の美しい自然を蝕む問題の根深い構造です。
ソース
- **[1]**残念ながら、これからもメガソーラーは増え続けそうです。この問題の裏側には「環境破壊で得をする」という驚きのスキームがありました。空き家問題とも共通する、日本の美しい自然を蝕む根深い構造とは?(ノンフィクションライター 窪田順生)
- [2] 北海道がメガソーラー工事の一部中止勧告 2025/09/02
コメント