エネルギー転換の物理的課題:低排出鋼製造への道筋を探る ― 25の課題とマッキンゼーの視点

1.今回解説する脱炭素・SDGsニュース:McKinsey Global Institute-industry

SDGsの知恵袋編集部の菊尾です。
今日は下記のSDGsニュース記事について考察と意見をお伝えします。

産業部門の脱炭素化に向けた取り組みにおいて、新たな25の重要な物理的課題が特定されました。とりわけ製鉄、セメント、プラスチック、アンモニアなどの主要産業での技術革新とインフラ整備が急務となっています。特に、水素活用やエネルギー転換に向けた設備投資、低排出鋼の製造技術の確立など、具体的な課題解決への道筋が示されています。

2.ニュースの要約

プラスチックの脱炭素化は難しい課題であり、バイオベースの原料や合成原料の利用、リサイクル技術の向上が求められています。バイオナフサやE-メタノールなどの新しい原料は、競争や技術的な課題があり、スケールアップには大規模な資産の再構成が必要です。プラスチックのリサイクルは、機械的および化学的なアプローチがあり、それぞれの利点と欠点があります。さらに、他の材料への置き換えも可能ですが、実現可能性や排出削減の潜在能力は用途によって異なります。

3.SDGsニュースの主な要点

  • 産業部門のCO2排出量は全体の約3分の1を占める重要課題
  • 製鉄業界における低排出鋼生産の技術革新が必要
  • 水素インフラ整備は2050年までに数十倍の規模拡大が必要
  • エネルギー転換には既存設備の大規模な改修が必要
  • インフラ整備における投資と技術革新の両立が重要
  • 産業界全体で2050年までに90-95%の脱炭素化が必要
  • 業種別の特性に応じた段階的なアプローチが重要

4.「SDGsの知恵袋の編集部」の考察と意見

こんにちは。「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集部の菊尾です。企業のサステナビリティ実践の第一人者である松尾真希社長の指導のもと、日々サステナビリティについて学んでいます。今回は、エネルギー転換における大きな課題の一つである、低排出鋼製造を取り巻く現状と未来について、マッキンゼーが提示する25の物理的課題を踏まえながら解説します。

世界は脱炭素社会に向けて大きく舵を切りつつあります。その中で、様々な産業がCO2排出量削減に向けた取り組みを加速させていますが、製造業、特に鉄鋼業は大きな課題を抱えています。鉄鋼は、私たちの生活に欠かせない様々なものに使われており、その需要は今後も増加が見込まれると予想されます。しかし鉄鋼製造は、大量のCO2を排出する産業の一つです。McKinseyのレポートでは、この鉄鋼製造が世界のCO2排出量の約10%を占めていると指摘し、エネルギー転換における大きなハードルであることを強調しています。

最新のニュースでは、欧米や中国を中心に、低排出鋼製造に向けた技術開発や実証実験が活発化しています。水素還元製鉄、電炉製鋼といった革新的な技術の導入、そして既存の高炉プロセスにCO2回収・貯留技術(CCUS)を組み合わせる試みなどが進められています。これらの技術はCO2排出量を大幅に削減できる可能性を秘めていますが、現状ではコストや技術的な課題も多く、更には水素の製造・貯蔵・輸送インフラの未整備といった課題も抱えています。マッキンゼーは、これらの技術のスケールアップには、課題12:低排出鋼の製造として、技術的課題の克服、資金調達、政策支援、そしてステークホルダー間の協力が不可欠であると指摘しています。

マッキンゼーはエネルギー転換において、7つの領域で25の物理的な課題を特定しています。これらの課題は相互に関連しており、一つの課題の解決が他の課題の解決に繋がる可能性がある一方で、ある課題への取り組みが別の課題を悪化させる可能性も孕んでいます。以下に、鉄鋼製造に関連する主要な課題とマッキンゼーのコメントを抜粋して示します。

  • 課題5:再生可能エネルギーの電力網への統合: 電力網の安定性と信頼性を確保しながら、変動性の高い再生可能エネルギーを大量に統合することは、電炉製鋼の電力供給に影響を与えるため重要です。(マッキンゼー:送電網の強化とスマートグリッド技術の導入が不可欠)
  • 課題10:水素の製造、貯蔵、輸送: 水素還元製鉄には大量の水素が必要となるため、低コストで低炭素な水素の製造、貯蔵、輸送インフラの整備が不可欠です。(マッキンゼー:グリーン水素のコストダウンとインフラ整備が鍵)
  • 課題11:CCUSの導入: 既存の高炉プロセスにCCUSを適用することで排出量を削減できる可能性がありますが、コストと技術的な課題を克服する必要があります。(マッキンゼー:回収率の向上とコスト削減が課題)
  • 課題16:その他の産業における熱供給の脱炭素化: 鉄鋼業だけでなく、他の産業における熱供給の脱炭素化も重要であり、電化や代替燃料の利用などを検討する必要があります。(マッキンゼー:成熟した技術の導入拡大が必要)
  • 課題25:労働力のスキルアップ: エネルギー転換を支えるには、新たな技術に対応できる人材の育成が不可欠です。(マッキンゼー:教育訓練プログラムの開発と実施が重要)

松尾社長は、これらの課題解決には「全体最適の視点」が重要だと語ります。個々の技術や政策に注目するだけでなく、エネルギーシステム全体を俯瞰し、最適な組み合わせを選択していく必要があるのです。

私自身も、松尾社長の指導のもと、日々サステナビリティについて学び、企業の脱炭素化を支援する活動に取り組んでいます。企業の現場では、資金不足や人材不足といった課題に直面することも少なくありません。帝国データバンクの調査にもあるように、SDGsへの取り組みには多くの企業が難しさを感じています。しかし、7割の企業がSDGsへの取り組みの効果を実感しているという調査結果も出ています。これらの課題解決を支援し、企業が持続可能な社会の実現に貢献できるよう、今後も尽力していきたいと思います。

エネルギー転換は、私たちの未来にとって不可欠な取り組みです。低排出鋼製造は、その実現に向けた重要な一歩となるでしょう。技術革新、インフラ整備、そして何よりも様々なステークホルダーの協力と努力によって、必ずやこの課題を乗り越えることができると信じています。

SDGsの知恵袋編集部 菊尾

ファッション業界として史上初の外務省ジャパンSDGsアワードを受賞した株式会社FrankPRのスタッフです。2024年現在、日本で5社しかいない外務省と環境省のSDGsアワード受賞社長である松尾真希から直接学んできた人材不足や資金不足でもできる経営実践型の脱炭素やサステナビリティの知識を生かしてお役に立てる記事を執筆してまいります。

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