こんな人にオススメです
- 大企業との取引があり、Scope3やCSR調達への対応が求められている方
- SDGsへの取り組みを始めたものの、情報開示のメリットや具体的な方法がわからない方
- 人材確保や融資でサステナビリティの評価を活用したい中小企業の経営者や担当者
- サステナビリティ情報開示の国際的な枠組み(ISSB, TCFDなど)と日本国内の現状(SSBJ, コーポレートガバナンス・コード)を知りたい方
- 資金や人員不足を抱えながら、持続可能な経営を目指すための方策を探している方
皆さん、こんにちは!「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野雄大です。
最近、「サステナビリティ情報開示」という言葉をよく耳にするようになりましたね。これまでは大企業の話だと思われてきましたが、実はその波はすでに中小企業の皆さんにも押し寄せています。特に、取引先である大企業がScope3排出量の算定や人権デューデリジェンスを進める中で、中小企業も実質的な対応を求められているんです。
このニュース記事を読んで、なぜ中小企業が今、この情報開示に取り組むべきなのか、そして具体的にどんなメリットがあるのかを、皆さんと一緒に深掘りしていきたいと思います!
最新のSDGsニュース:
中小企業のサステナビリティ情報開示の現状と課題~中小企業が情報開示に取り組むメリット~(ニッセイ基礎研究所 研究員の眼 土居 優) https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=83977?pno=2&site=nli
SDGsニュースの要約
近年、企業の非財務情報、特にサステナビリティ情報(ESG)への関心が国際的に高まっており、日本でも大企業を中心に制度整備が進んでいます。しかし、中小企業においては情報開示が十分に進んでいないのが現状です。
中小企業庁の調査(2024年)によると、SDGsに取り組む、あるいは今後取り組む予定の中小企業は合わせて34.6%に達していますが、外部に情報を公開している企業はわずか4.6%にとどまっています。中小企業が取り組みを妨げている主な課題は、「取り組むことのメリットがわからない」や「何から取り組むべきかわからない」といった理解不足に加え、資金・人員の不足です。
しかし、サステナビリティ情報の開示は、取引先・金融機関からの信頼向上、優秀な人材の確保、企業イメージの向上、そしてコーポレートガバナンスの強化といった明確なメリットをもたらします。特に大企業のサプライチェーン全体での対応要請が増しているため、中小企業にとっても情報開示は事業継続や競争力強化の上でますます重要になると結論づけています。
SDGsニュースのポイント
このニュースレポートから、中小企業にとって重要なサステナビリティ情報開示のポイントを、日野編集長の視点で解説します。
- 非財務情報とサステナビリティ情報とは?
- 企業価値は、売上や利益などの財務情報だけでなく、企業理念、組織文化などの非財務情報で評価されます。
- 中でもESG(環境・社会・ガバナンス)に関する情報がサステナビリティ情報であり、企業の信頼性や持続可能性の評価に不可欠です。
- 国際的な開示の枠組みが日本にも波及:
- GRI、TCFD、そして最新のISSB基準といった国際的な枠組みが情報開示の潮流を作ってきました。
- 日本でも2023年に有価証券報告書にサステナビリティ情報欄が新設され、SSBJ基準の策定が進むなど、大企業向けの制度整備が急ピッチで進んでいます。
- 中小企業も実質的な開示対応が求められている:
- 法的義務がなくとも、大企業がScope3排出量や人権デューデリジェンス(責任あるサプライチェーン)を推進する結果、取引先である中小企業にも環境(E)や人権・コンプライアンス(S・G)に関する情報開示や体制整備が実質的に求められています。対応を怠ると、取引見直しのリスクがあります。
- 中小企業のSDGsへの取り組み状況:
- SDGsに「取り組んでいる/今後取り組む予定」の中小企業は34.6%ですが、外部に情報公開しているのは4.6%に過ぎません。
- 中小企業が抱える課題:
- 取り組みの課題は、「メリットがわからない」「何から取り組むべきかわからない」といった知識・理解の不足。
- それに加え、「資金の不足」(14.9%)や「人員の不足」(12.5%)といったリソースの制約も大きな壁になっています。
- 情報開示の具体的な4つのメリット:
- 取引先・金融機関: サプライチェーンやPRBに基づく融資審査での評価向上につながり、競争力を高めます。
- 求職者・従業員: 企業理念の可視化により、人材確保に有利に働き、従業員のモチベーション向上(エンゲージメント)にもつながります。
- 顧客・地域社会: 企業イメージや社会的信頼の向上、地域社会からの理解・支援の獲得に寄与します。
- コーポレートガバナンス: 非財務情報の把握・開示の過程で、経営資源の現状や課題が可視化され、経営管理の質を高める効果があります。
- 今後の支援制度の動き:
- 2025年には、一般社団法人サステナビリティデータ標準化機構による第三者登録・検証制度が導入され、中小企業でも分かりやすく体系的に情報開示を進められる環境が整いつつあります。
SDGsニュースを考察
中小企業にとってのサステナビリティ情報開示は、単なる**「義務」ではなく、「未来への投資」**であると捉えるべきです。特に課題となっている「何から始めるか」「メリットがわからない」という点を、SDGsの観点から考察してみましょう。
📊 情報開示は「可視化」による経営改善の第一歩
中小企業の最大の強みは、経営者と従業員の距離が近いこと、そして地域社会との結びつきが強いことです。この強みを活かすのが、情報開示による経営の「可視化」です。
環境負荷や人的資本、安全衛生などの非財務情報を体系的に把握・開示するプロセスは、実はそのまま経営管理の質を高めるガバナンス強化策になります。例えば、CO₂排出量を把握する過程で、無駄なエネルギー使用が判明し、コスト削減につながることもあります。また、女性の登用状況や従業員の研修時間を可視化することで、人的資本への投資意識が高まり、生産性向上に繋がるかもしれません。
🤝 取引リスク回避と競争力強化:SDGs目標12と17
大企業が取引先にサステナビリティ対応を求める背景には、自社のサプライチェーン全体でSDGs目標12(つくる責任、つかう責任)やSDGs目標17(パートナーシップ)を達成する必要があるからです。大企業の視点では、サステナビリティに取り組まない中小企業と取引を続けることは、Scope3排出量や人権デューデリジェンスにおけるリスクとなります。
中小企業が非財務情報を積極的に開示することは、このリスクを解消し、むしろ**「信頼できるパートナー」としての地位を確立できます。特に金融機関がPRB**(責任銀行原則)に基づきESG評価を融資に組み込む今、情報開示は資金調達の面でも競争力につながる、待ったなしの経営課題なのです。
私たちにできること
中小企業の皆さんが、この大きな波をチャンスに変えるために、日野編集長から具体的なアクションを提案します。
- 「SDGs推進指針」を足がかりにする:
- 中小企業が求める支援策の一つに「SDGs推進指針の策定・公表」があります。まずは中小企業向けのガイドラインや、SDGsとは?17のゴールと169のターゲットを徹底解説!といった基礎知識を参考に、自社の事業とSDGsの接点を「見える化」することから始めましょう。
- 「情報開示のメリット」を社内・社外に発信する:
- 「メリットがわからない」ことが最大の課題ですから、情報開示によって得られる人材確保や金融面の優遇といったメリットを、社内会議や取引先との会話で積極的に発信しましょう。
- 第三者制度を積極的に活用する:
- 2025年導入予定の第三者登録・検証制度など、中小企業向けの支援制度が整ってきています。こうした制度は、資金や人員が不足する中小企業にとって、少ないリソースで信頼性の高い情報開示を実現するための重要なツールです。
- 取り組み事例を公開する:
- 支援策として「取り組み事例の公表」も期待されています。小さな取り組みでも良いので、まずはウェブサイトやSNSで積極的に発信することが、次の一歩につながります。
サステナビリティ情報開示は、決して大企業の「義務」ではありません。中小企業が持続可能な成長を実現し、未来の社会を創るための「武器」となるのです。

コメント