【SDGs未来予測】2050年、理想の地球への道は2つだけ。京大と日立のAIが示す最初の分岐点は2029年

脱炭素とSDGsの知恵袋の編集長、日野広大です。私たちのメディアは、ジャパンSDGsアワードで外務大臣賞を受賞した企業の知見を活かし、信頼性の高い情報発信を心がけています。今回は、2050年の地球の未来を左右する極めて重要な研究成果について、専門家の視点から解説します。

京都大学と日立製作所が共同で発表した「未来シナリオシミュレーター」。これは、AIを活用して2050年の地球の姿を予測し、私たちが進むべき道筋を科学的に示そうという画期的な試みです。分析の結果、私たちの未来には7つのシナリオがあり、そのうち望ましい未来はわずか2つしかないことが示唆されました。そして、その運命を分ける最初の分岐点は、わずか4年後の2029年に迫っています。

  • AIが予測する2050年の7つの未来とは?
  • なぜ望ましい未来は2つしかないのか?
  • 2029年に訪れる「最初の分岐点」で何をすべきか?
  • 企業や私たちは、この未来予測にどう向き合うべきか?

本記事では、この衝撃的な研究成果を深掘りし、私たちが理想的な未来を迎えるために「今」何をすべきかを考えます。

目次

AIが描き出す未来:7つのシナリオとたった2つの希望

今回の研究では、GDPや人口、CO2排出量といった294もの指標と、専門家の知見を取り入れた「因果連関モデル」を構築。過去20年分のデータをもとに、AIが2050年までの地球社会の変化をシミュレーションしました。その結果、私たちの未来は以下の7つのシナリオに分岐することが示されました。

  1. 地域分散・成熟シナリオ
  2. グリーン成長・協調シナリオ
  3. 地域分散・停滞シナリオ
  4. グローバル成長・気候変動シナリオ
  5. グローバル成長・格差拡大シナリオ
  6. 多極化・気候変動シナリオ
  7. 二極化シナリオ

このうち、地球環境やサステナビリティの観点で許容できるのはシナリオ1、2、7の3つだけです。しかし、シナリオ7「二極化シナリオ」は、先進国が地球資源を独占し、世界規模での深刻な格差と分断を生むため、決して望ましい未来とは言えません。

つまり、人類が真に目指すべきはシナリオ1「地域分散・成熟シナリオ」またはシナリオ2「グリーン成長・協調シナリオ」のいずれか、たった2つの道筋ということになります。

運命の分岐点:2034年までに訪れる3つの重要なタイミング

この研究が示す最も重要な点は、どの未来に進むかを決定づける「分岐点」の存在です。特に重要な最初の3つの分岐は、2034年までに集中しています。

分岐点①:2029年ごろ【格差是正】

最初の分岐点は、最も望ましくないシナリオ7「二極化シナリオ」に進むか否かを決定します。これを避けるカギは「先進国と途上国の格差」です。

  • 課題: 先進国による化石燃料の大量消費や、途上国の経済停滞が続くと、二極化シナリオに進む可能性が高まります。
  • 必要なアクション:
    • 先進国: 環境重視の政策(カーボンニュートラルなど)を早急に進める。
    • 途上国: 社会インフラ整備など、経済発展を促す支援を行う。

分岐点②:2032年ごろ【地域への分散と成熟】

この分岐点では、シナリオ1「地域分散・成熟シナリオ」への道が開かれます。カギとなるのは「地域への分散と成熟」です。経済成長は鈍化しますが、環境は良好で、国際紛争が大幅に減少する安定した未来です。

  • 課題: 少子高齢化、研究投資の不足、医療アクセスの不平等などが進むと、この道は閉ざされます。
  • 必要なアクション:
    • 先進国: 少子化対策や格差是正に本格的に取り組む。
    • 途上国: 研究開発への投資、人口対策、医療アクセス改善など社会政策を強化する。

分岐点③:2034年ごろ【グローバルな協調】

最後の重要な分岐点は、最も理想的ともいえるシナリオ2「グリーン成長・協調シナリオ」に進めるかどうかのラストチャンスです。国際格差が減少し、環境も良好なまま経済成長を維持する未来です。

  • 課題: 世界全体の協調性の欠如。特に途上国の生産性やデジタルリテラシーの停滞、先進国の高齢化が障壁となります。
  • 必要なアクション: 世界が一致団結し、途上国の生産性向上支援や、先進国の高齢化対策など、国際的な協調行動を加速させる必要があります。

このタイミングを逃した場合に残されるシナリオ(3〜6)は、いずれも人類にとって望ましくない未来だと研究は警告しています。

私たちの選択が未来を決める:今、何をすべきか?

このシミュレーションは、未来が決定されているのではなく、私たちの今の選択によって未来が創られることを明確に示しています。

  • 政府・国際機関: 2029年、2032年、2034年という具体的なターゲットイヤーを見据え、先進国・途上国間の協力を基軸とした政策パッケージを設計・実行する必要があります。特に、途上国の経済発展と環境対策を両立させるための技術移転や資金援助が急務です。
  • 企業: 目先の利益だけでなく、自社の事業がどの未来シナリオに貢献するのかをマテリアリティ分析などを通じて評価すべきです。サプライチェーン全体での人権配慮や、再生可能エネルギーへの転換は、格差是正と環境改善の両方に貢献し、望ましい未来への分岐を後押しします。
  • 私たち一人ひとり: 先進国に住む私たちは、自らの消費行動が環境や途上国に与える影響を自覚し、よりサステナブルな消費を心がけることが求められます。また、こうした未来に関する議論に関心を持ち、社会的な対話を促すことも重要なアクションです。

まとめ

京都大学と日立製作所の共同研究は、2050年の理想的な未来が、決して夢物語ではなく、今後10年間の具体的な行動にかかっていることを科学的に示しました。特に、2029年に迫る最初の分岐点までに、先進国と途上国の格差是正に向けた国際協力の枠組みを強化できるかが、私たちの未来を大きく左右します。

この研究成果を単なる「予測」で終わらせるのではなく、私たちが進むべき道を示す「羅針盤」として活用していくこと。それこそが、今を生きる私たちの世代に課せられた責任ではないでしょうか。


執筆:脱炭素とSDGsの知恵袋 編集長 日野広大
参考資料:京都大学・日立製作所 共同研究発表

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