「SDGsや脱炭素政策の廃止」「DEI(多様性、公平性、包摂性)政策の廃止」。最近、国政政党である参政党から、こうした主張が国会で提起され、注目を集めています。
これまでSDGs(持続可能な開発目標)は、国や企業が目指すべき共通のゴールとして広く浸透してきただけに、「なぜ今、正面から批判する声が上がるのだろう?」と疑問に思う方も多いかもしれません。
この動きは、単に一つの政党の意見として片付けるのではなく、私たちの社会が「持続可能性」とどう向き合っていくのかを考える上で、非常に重要な問いを投げかけています。今回は、参政党がなぜSDGsに懐疑的なのか、その背景を紐解きながら、分断を越えて対話する道筋を考えていきたいと思います。
こんな人におすすめです
- 参政党のSDGsに対する考え方を知りたい方
- 「SDGs疲れ」や、SDGsの進め方に疑問を感じている方
- 意見の異なる相手と、建設的な対話をする方法を探している方
参政党が掲げる政策の核心とは
日本経済新聞の報道によると、参政党の政策はいくつかの特徴的な点があります。
- SDGs・脱炭素・DEIへの懐疑論:神谷宗幣代表は参院予算委員会で、トランプ前米大統領からの働きかけとして「SDGsの廃止」「脱炭素政策の廃止」「DEI政策の廃止」といった項目を質問。これらの国際的な潮流に疑問を呈する姿勢を明確にしています。
- 国債ありきの積極財政:減税と積極財政を強く主張し、その財源を「国債発行」に求めています。そのために、国の財政規律を定める財政法4条の改正まで提案しています。
- ワクチン接種への反対:国による新型コロナウイルスのワクチン接種に反対し、「接種推進策の見直し」を政策として掲げています。
- 独自の憲法草案(創憲):戦後に米国主導でつくられたとして現行憲法を否定し、「新日本憲法」の制定を主張。しかし、その草案には国民主権の記述がなかったり、基本的人権の条項が少なかったりする点に批判も上がっています。
これらの主張の根底には、「自分たちでゼロからつくる」という強い意志と、既存の仕組みや戦後の価値観への根源的な問い直しがあるようです。
なぜSDGsと対立するのか?その背景にあるもの
では、なぜ参政党はSDGsと対立するような立場をとるのでしょうか。これは、SDGsが持ついくつかの側面への反発と見ることができます。
1. グローバルな目標 vs. 国の独自性
SDGsは、世界共通の17の目標です。この「グローバルスタンダード」に対し、「国のまもり」を重視し、日本独自の歴史や文化を尊重すべきだという考え方があります。SDGsや脱炭素、DEI(ダイバーシティ&インクルージョン)といった外から来た概念が、日本の良さを壊してしまうのではないか、という警戒感です。
2. 既存の権威への不信感
新型コロナワクチンへの姿勢にも見られるように、国や国際機関(WHOなど)、専門家の見解に対する強い不信感も背景にあります。SDGsも国連が主導する目標であるため、同様に「誰かが決めた目標に従う必要はない」という反発につながっていると考えられます。
3. 「きれいごと」に聞こえるSDGsへの違和感
僕のところにも、「SDGsはビジネスの道具になっている」「大企業や意識の高い人のもので、自分たちの生活とは関係ない」といった声が届くことがあります。日々の生活に追われる中で、SDGsがどこか遠い「きれいごと」に聞こえてしまう。参政党の主張は、そうした人々の違和感や不満の受け皿となっている側面もあるのかもしれません。
分断を越えるために、私たちが考えたいこと
大切なのは、こうした主張を「けしからん」と感情的に切り捨てるのではなく、なぜそうした声が上がるのかを冷静に分析し、対話の糸口を探ることです。
科学的根拠との向き合い方
気候変動や感染症対策は、科学的な知見に基づいて進められるべき重要なテーマです。意見が分かれる時こそ、信頼できるデータや専門家の多様な意見に耳を傾け、冷静に判断する姿勢が社会全体に求められます。
「誰一人取り残さない」ための対話
SDGsの根幹には「誰一人取り残さない」という理念があります。これは、SDGsに批判的な人々をも取り残さない、という意味でもあるはずです。彼らが何に不安を感じ、何に怒りを感じているのか。その声に真摯に耳を傾け、粘り強く対話を続けること。それこそが、社会の分断を乗り越え、本当の意味で持続可能な社会を築くための唯一の道だと僕は信じています。
僕自身、学生時代に訪れたパラオで、立場の違う人々が対話を通じて合意形成をしていく姿を見てきました。時間はかかっても、対話は必ず未来を拓く力になります。
まとめ:今日からできる3つのアクション
社会の中で異なる意見が出てくるのは、健全な民主主義の証でもあります。大切なのは、その違いをどう乗り越えていくかです。
- 多角的な情報に触れる:一つのニュースや意見だけでなく、その背景や反対意見にも目を向け、自分なりに考えてみましょう。
- 自分の言葉で語る準備をする:「なぜ自分はSDGsが大切だと思うのか?」を、自分の体験や言葉で説明できるように考えてみましょう。
- 身近な人と対話する:家族や友人と、社会のあり方について話す時間を持ってみましょう。相手の意見を否定せず、「なぜそう思うの?」と問いかけることから対話は始まります。
参政党が投げかけた問いは、私たち一人ひとりが「持続可能な社会とは何か」を自分自身の言葉で語ることを求める、一つのきっかけなのかもしれません。
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