こんにちは。「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野広大です。私たちのメディアは、SDGs推進への貢献が認められ、政府SDGs推進本部よりジャパンSDGsアワード「外務大臣賞」をいただいた企業の知見を基に、信頼性の高い情報発信を心がけています。
今年も猛暑が続き、熱中症への警戒が呼びかけられています。しかし、この深刻な健康リスクは、単なる夏の風物詩ではありません。気候変動によって激化する「社会全体の課題」です。
今回は、環境省が推進する取り組みを基に、目先の熱中症から身を守る「適応策」と、その根本原因である地球温暖化を食い止める「緩和策」という2つの視点から、私たちが今すぐできる「賢い選択(COOL CHOICE)」をSDGsと結びつけて解説します。
この記事でわかること
- 気温より重要?熱中症リスクを示す「暑さ指数(WBGT)」とは
- 「適応策」と「緩和策」:熱中症対策と気候変動対策のつながり
- SDGsの視点で考える、環境省が推進する「COOL CHOICE」の重要性
- 今日からあなたも実践できる、具体的なアクションリスト
なぜ今「暑さ指数」が重要なのか?気温だけでは見えない本当のリスク
夏の天気予報で、私たちはつい最高気温の数字に目が行きがちです。しかし、熱中症のリスクをより正確に知るためには、「暑さ指数(WBGT)」に注目する必要があります。
湿度と輻射熱がカギを握る「体感の科学」
暑さ指数(WBGT)は、単なる気温だけでなく、
- 湿度: 汗の蒸発しやすさに関わる
- 輻射(ふくしゃ)熱: 地面や建物からの照り返しなど、直射日光以外の熱
- 気温
これら3つを総合して算出される、いわば「人体が感じる暑さの科学的な指標」です。特に、アスファルトに覆われた都市部では輻射熱が強く、ベビーカーに乗る子どもやペットは大人以上に危険に晒されます。
暑さ指数「28」が危険のサイン
総務省消防庁のデータでは、最高気温よりも「日最高暑さ指数」の方が、熱中症による救急搬送者数と強い相関関係があることがわかっています。特に、暑さ指数が28を超えると、熱中症患者が急激に増加する傾向があります。
これは、熱中症対策が「個人の体感」だけに頼るのではなく、科学的根拠に基づいた指標で客観的に判断すべきであることを示しています。
(引用)「暑さ指数はさまざまな気象条件などを総合的にとらえた値であることから、気温の上昇そのものよりも熱中症の発生状況との相関関係が強いとされています。」
出典:環境省 熱中症予防情報サイト
熱中症は気候変動のサイン。「適応策」と「緩和策」で未来を守る
熱中症リスクの高まりは、地球温暖化が私たちの健康を直接脅かしている明確なサインです。この問題に立ち向かうには、2つのアプローチが必要です。
① 今すぐできる「適応策」:自分の身を守る行動
これは、目の前の危険を回避するための行動です。
- 暑さ指数をこまめにチェックする
- こまめな水分・塩分補給
- 日中の外出を避ける、日傘や帽子を活用する
- ためらわずにエアコンを使用する
これらは、気候が変動してしまった現実の中で、被害を最小限に抑えるための重要な「適応策」です。
② 未来を変える「緩和策」:「COOL CHOICE」で脱炭素へ
しかし、適応策だけでは根本的な解決にはなりません。温暖化をこれ以上進めないための行動、すなわち温室効果ガスの排出を削減する「緩和策」が不可欠です。
そこで環境省が提唱しているのが、国民運動「COOL CHOICE(=賢い選択)」です。これは、日々の暮らしの中で、脱炭素社会の実現につながる製品・サービス・ライフスタイルを「賢く選択」していこうという取り組みです。
図表挿入候補:「適応策(熱中症予防)」と「緩和策(温暖化対策)」が両輪であることを示すシンプルな図。alt属性案:「気候変動対策における適応策と緩和策の相互関係」
SDGsの視点から紐解く「COOL CHOICE」の重要性
「COOL CHOICE」は、SDGsの様々な目標達成に貢献するアクションです。
- 目標3(すべての人に健康と福祉を) & 目標13(気候変動に具体的な対策を):
熱中症から身を守る行動は目標3に、その根本原因である温暖化対策(COOL CHOICE)は目標13に直結します。この2つは密接に連携しています。 - 目標7(エネルギーをみんなにそしてクリーンに) & 目標12(つくる責任 つかう責任):
省エネ性能の高い家電を選ぶ(COOL CHOICE)ことは、家庭でのエネルギー消費を抑え(目標7)、持続可能な消費スタイルを実践する(目標12)ことに繋がります。
つまり、「COOL CHOICE」は単なる環境活動ではなく、健康で持続可能な社会を築くための、統合的なアプローチなのです。
今日から始める、私の「COOL CHOICE」実践リスト
難しく考える必要はありません。「COOL CHOICE」は、日々の小さな選択の積み重ねです。
日野のリストも一部紹介しますね。
<暮らしの中で>
- 省エネ性能の高いエアコンや冷蔵庫、LED照明に買い替える
- 家族が同じ部屋で過ごし、冷房の利用を1部屋に集約する「クールシェア」
- 使わない家電の主電源をオフにする、プラグを抜く
- 窓際に「緑のカーテン」を作り、日差しを和らげる
<移動・外出の際に>
- 近所へは徒歩や自転車で移動する
- 通勤や旅行では公共交通機関を積極的に利用する
- 薄着や吸湿性の高い肌着を選び、クールビズで過度な冷房を避ける
- 体を冷やしやすいグッズや塩分を取れるおやつを持ち歩く
<企業・組織として>
- クールビズの徹底と、働きやすい服装への理解促進
- テレワークを推進し、通勤に伴うエネルギーを削減
- 事務所の断熱性能向上や、再生可能エネルギーの導入を検討
まとめ:一人ひとりの賢い選択が、涼しい未来をつくる
熱中症は、個人の注意だけで防ぐには限界があり、気候変動という地球規模の課題と向き合わなければ根本的な解決は見えてきません。
暑さ指数(WBGT)で日々の危険を回避する「適応策」。そして、暮らしの中の「COOL CHOICE」で温暖化の進行を食い止める「緩和策」。この2つを両輪で進めることが、私たち自身と、未来の世代の命と健康を守ることに繋がります。
あなたの一つの「賢い選択」が、社会全体を動かし、より涼しく、持続可能な未来を創る大きな一歩となるのです。
執筆:脱炭素とSDGsの知恵袋 編集長 日野広大
参考資料:
- 環境省 熱中症予防情報サイト「COOL CHOICE」
- 環境省「熱中症環境保健マニュアル」
- 総務省消防庁「熱中症による救急搬送状況」
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