歯科業界の人材課題に挑む ― デンタルHR総研が描く「働く人の幸せ」と「患者の笑顔」の好循環

脱炭素とSDGsの知恵袋 編集長 日野広大

今回は、歯科医院の人材採用に特化したサービスを展開するデンタルHR総研株式会社の土屋雅臣代表取締役にお話を伺いました。

歯科業界が直面する深刻な人材不足という社会課題に、独自のアプローチで取り組む同社の挑戦は、SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」、目標3「すべての人に健康と福祉を」の実現に直結する重要な取り組みです。

歯科衛生士の求人倍率20.7倍 ― 業界全体の持続可能性への危機感

日野編集長(以下、日野):土屋代表、本日はよろしくお願いします。まず、デンタルHR総研がSDGsに取り組み始めたきっかけについて教えていただけますか。

土屋代表(以下、土屋):歯科業界は今、大きな転換点にあると感じています。国民の歯や口腔への関心が高まり、良質な歯科医療や医療安全の提供がより一層求められている一方で、歯科衛生士や歯科助手、そして歯科医師まで含めた深刻な人材不足に直面しているからです。

日野:具体的にはどのような状況なのでしょうか。

土屋:2020年時点で歯科衛生士の求人倍率は20.7倍という非常に厳しい数字です。歯科助手も過去10万人以上いたのが、今や7万人を切る寸前。歯科医師も今後はリタイアが進み、供給が追いつかない時代が来ることが確実です。そういった業界全体の人材課題に真正面から向き合い、歯科業界を持続可能にしていくために、私たちはSDGsに取り組むようになりました。

採用代行を超えた「医院の未来づくり」という視点

日野:なるほど、業界全体の持続可能性という大きな視点からSDGsに取り組まれているんですね。現在、特に力を入れている取り組みについて詳しく教えてください。

土屋:私たちが特に注力しているのは「目標8:働きがいも経済成長も」と「目標3:すべての人に健康と福祉を」です。具体的には、歯科医院が”人材を採用できずに困っている”という根本的な課題を解消するために、採用業務の設計から実務までワンストップで支援しています。

日野:単なる人材紹介とは違うアプローチということですね。

土屋:はい。現場では歯科医師である院長先生が診療の合間に採用を片手間で行っているケースが多く、採用ノウハウの不足が課題になっています。私たちがその部分を代行する形で”医院が採用に強くなる仕組み”を提供しているんです。

日野:「歯科衛生士をもっと笑顔に」というミッションを掲げられていますが、これはどういった想いからでしょうか。

土屋:実は、毎年7,000人近くの新しい歯科衛生士が誕生している一方で、有資格者の約6割が未就業という現実があります。理由は人間関係の悩みやライフステージの変化など、環境要因が大きい。だからこそ、ただのマッチングではなく「長く安心して働ける職場かどうか」を基準に求人設計を行い、働く人にとっても”仕事を通じた自己実現”ができる環境づくりを支援しています。

採用成功率99%、定着率97%が示す「質の高いマッチング」

日野:素晴らしい理念ですね。実際の成果についてはいかがでしょうか。

土屋:これまでに300医院以上と契約し、15,000人以上の応募を獲得、1,300人以上の採用実績があります。採用成功率は99%、定着率も97%と高く、単に人を集めるだけでなく「長く働ける人材との出会い」が実現できています。

日野:驚異的な数字ですね。具体的な事例を教えていただけますか。

土屋:ある医院では応募ゼロだったのが、導入後に36人応募、12人採用されたというケースもあります。求人広告を任せていただいた医院では、1件も応募がなかった状況から、月5〜10件の応募が来るようになった事例もあります。さらに、「定着率が上がった」「スタッフの雰囲気が良くなった」「患者さんの満足度も上がった」という声も増えており、採用が医院全体に好影響を与えていると実感しています。

地方の歯科医院に訪れた「奇跡」のような出会い

日野:印象的だったエピソードはありますか。

土屋:ある地方の歯科医院では、長らくスタッフが定着せず、院長先生も「もう人は来ないかもしれない」と半ば諦めていたんです。でも、私たちが介在して医院の魅力を丁寧に言語化し、マッチする求職者に届けた結果、理想の歯科衛生士さんが見つかって。その後「医院全体が明るくなって、患者さんも増えたんです」と涙ながらに感謝のお電話をいただいたときは、本当にこの仕事をやっていてよかったと心から思いました。

日野:まさに働く人の幸せが患者さんの笑顔につながるという好循環が生まれたんですね。

オーダーメイドで採用の仕組みをつくる独自性

日野:他社にはない、デンタルHR総研ならではの強みは何でしょうか。

土屋:私たちは、採用を「ただ人を集める作業」だとは考えていません。医院の方針や将来のビジョンに合った人と出会うことこそが、良い採用につながると考えています。そのため、医院ごとの特徴やお悩みに合わせて、「どんな人を採用するべきか」「どう伝えたら応募が来るか」を一緒に考えながら、オーダーメイドで採用の仕組みをつくっているのが私たちのスタイルです。

「本当に良い医院」の価値を伝え、働く人の幸せを実現する

日野:今後の展望についてはどのようにお考えですか。

土屋:これからの私たちは、採用チャネルの拡大を通じて、「本当に良い医院」と、そこで働きたい人との出会いをもっと増やしていきたいと考えています。世の中には、魅力的で誠実な医院がたくさんあります。けれど、まだまだその価値が知られていないだけで、人が集まらず、魅力が埋もれてしまっている。私たちは、そんな医院の力になりたいのです。

日野:最後に、歯科医院の院長先生方へメッセージをお願いします。

土屋:「人が集まらない」「採用してもすぐ辞めてしまう」―そんな悩みを抱えながらも、日々、地域の患者さんに向き合い続けている院長先生へ。私たちは、ただ採用を代行する会社ではありません。医院の想いに共感し、”一緒に未来をつくるパートナー”でありたいと思っています。

採用がうまくいくと、医院に活気が生まれます。スタッフに笑顔が増えると、その笑顔は患者さんにも伝わります。働く人の幸せが、患者さんの笑顔につながる―私たちはその循環を本気で信じています。「うちの医院は無理かも…」そう思う前に、ぜひ一度ご相談ください。どんな医院にも、可能性は必ずあります。その可能性を、採用から一緒に広げていきましょう。


編集後記: 土屋代表の落ち着いた語り口の中に、歯科業界への深い愛情と使命感を感じました。人材不足という業界全体の課題を、単なるビジネスチャンスではなく、社会的責任として捉え、「働く人の幸せ」と「患者の笑顔」の好循環を生み出そうとする姿勢は、まさにSDGsの理念そのものです。土屋代表、今回は本当に貴重なお話を伺い、ありがとうございました。

歯科医療の持続可能性は、私たちの健康な生活に直結する重要なテーマ。デンタルHR総研の取り組みが、より多くの歯科医院に広がり、業界全体の変革につながることを期待しています。

企業情報 デンタルHR総研株式会社

本社:東京都渋谷区道玄坂1−10−8 渋谷道玄坂東急ビル2F-C

公式サイト:https://dentalhr.jp/

Instagram:https://www.instagram.com/shikasaiyo

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