こんにちは。「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野広大です。私たちのメディアを運営する株式会社FrankPRは、SDGsへの多角的な貢献が評価され、政府SDGs推進本部より「ジャパンSDGsアワード」外務大臣賞を受賞しました。その専門的知見を活かし、昨日に引き続き、今回の参議院選挙で大きな争点となっている「農業政策」を、SDGsという未来を測る「ものさし」で読み解いていきます。
「政治は難しい」「農業は自分に関係ない」と感じるかもしれません。しかし、各政党が掲げる農業政策は、私たちの食卓だけでなく、地球環境、そして日本の未来のあり方を左右する、SDGsの根幹に関わる重要なテーマなのです。
- なぜ選挙で「農業」がSDGsの最重要テーマなのか?
- 【SDGs視点で分析】主要な農業政策のメリットと課題
- あなたの価値観はどのSDGs目標に近い?政党選びのヒント
- まとめ:私たちの一票が創る、持続可能な食と農の未来
なぜ今、選挙で「農業」がSDGsの最重要テーマなのか?
日本の食料自給率がカロリーベースで38%(2022年度)と低水準にあることは、多くの方がご存知でしょう。これは単に国内の産業の問題ではなく、SDGsの目標2「飢餓をゼロに」で掲げられる「食料安全保障」、つまり「すべての人が、いつでも十分に安全で栄養のある食料を得られる状態」を揺るがす深刻な課題です。
近年の国際紛争やパンデミック、世界的な異常気象は、グローバルな食料供給網がいかに脆弱であるかを浮き彫りにしました。食料を輸入に頼ることは、海外の情勢次第で私たちの食卓が直接的な影響を受けるリスクを常に抱えていることを意味します。
農業の現場は、担い手の高齢化や後継者不足、肥料・燃料などの資材高騰という喫緊の課題に直面しています。これらを解決し、国内の農業をいかに持続可能なものにしていくか。各政党の政策は、日本の食料安全保障、ひいてはSDGs達成へのコミットメントを測るリトマス試験紙と言えるのです。
【SDGs視点で分析】主要な農業政策のメリットと課題
ご提供いただいた記事を参考に、各党が掲げる主要な政策が、SDGsのどの目標と深く関わっているのか、専門家の視点から解説します。
所得・価格保障:目標1「貧困をなくそう」と目標2「飢餓をゼロに」の基盤
立憲民主党や国民民主党、共産党などが掲げる、農家の収入を安定させるための所得補償や価格保障。これは、農家の経営を安定させ、安心して生産を継続してもらうための重要な政策です。
- SDGs的メリット:農家の経済的安定は目標1「貧困をなくそう」に貢献し、生産意欲の維持は食料の安定供給、つまり目標2「飢餓をゼロに」の達成に不可欠です。
- 専門的視点と課題:重要な政策である一方、その財源をどう確保するのか、市場原理とのバランスをどう取るのかという丁寧な制度設計が求められます。また、国の「みどりの食料システム戦略」が目指す、環境負荷の低い作物への転換を促すようなインセンティブを組み込めるかが、持続可能性の鍵となります。
新規就農支援:目標8「働きがいも経済成長も」と地域の持続可能性
多くの政党が公約に掲げる、新しい農業の担い手を増やすための支援策。これは、日本の農業の未来を支える人材への投資です。
- SDGs的メリット:農業というディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の創出は目標8に貢献します。また、若者が地域に定着することは、過疎化が進む農村の活性化、つまり目標11「住み続けられるまちづくりを」にも繋がります。
- 専門的視点と課題:単なる資金援助だけでなく、デジタル技術を活用した「スマート農業」の導入支援や、多様な働き方を許容する柔軟な制度(兼業農家支援など)をセットで進めることが、魅力ある産業への転換を加速させます。
有機農業の推進:目標12, 13, 15への直接的な貢献
れいわ新選組や参政党などが強く訴える、化学肥料や農薬を減らす有機農業の推進。これは、食の安全だけでなく、地球環境全体への貢献を意味します。
- SDGs的メリット:持続可能な生産と消費のパターンを確保する目標12「つくる責任 つかう責任」、気候変動対策である目標13(土壌による炭素貯留)、そして土壌や生物多様性を守る目標15「陸の豊かさも守ろう」に直接的に貢献します。
- 専門的視点と課題:有機農業への転換は、収量が安定するまでの期間、農家の収入が不安定になりがちです。この移行期間を手厚く支援する仕組みや、学校給食での採用義務化など、安定した販路を確保する政策が成功の鍵を握ります。
食の安全と消費者の選択肢:目標3「すべての人に健康と福祉を」の実現
日本維新の会や参政党が掲げる遺伝子組換え食品の表示義務化や、動物福祉(アニマルウェルフェア)への配慮。これは、消費者の「知る権利」と「選ぶ権利」を守る取り組みです。
- SDGs的メリット:安全な食へのアクセスと正確な情報は、目標3が目指す健康的な生活の基盤です。また、倫理的な消費は目標12の重要な要素でもあります。
- 専門的視点と課題:EUの「Farm to Fork(農場から食卓まで)戦略」では、食の安全、トレーサビリティ、アニマルウェルフェアが包括的に議論されています。日本の政策も、こうした国際基準との調和をどう図っていくのかが問われます。
あなたの価値観はどのSDGs目標に近い?政党選びのヒント
どの政党が「正しい」ということではありません。ご自身がどのSDGs目標を特に重視するかで、支持したい政策が見えてきます。
- 「経済的な安定と食料の安定供給」を最優先するなら(目標1, 2, 8重視)
→所得補償や価格保障、生産性向上を具体的に掲げる政党(自民党、立憲民主党、国民民主党など)の政策を比較検討してみましょう。 - 「環境と健康、未来の世代への責任」を最優先するなら(目標3, 12, 13, 15重視)
→有機農業の推進、食の安全に関する厳しい基準、アニマルウェルフェアなどを強く訴える政党(れいわ新選組、参政党、社民党など)の公約が、あなたの考えに近いかもしれません。 - 「既存の仕組みにとらわれない新しい農業」を期待するなら(目標9, 17重視)
→農協改革や規制緩和による自由な競争、テクノロジー導入を推進する政党(日本維新の会など)のビジョンに注目してみましょう。
まとめ:私たちの一票が、持続可能な食と農の未来を創る
2025年の参議院選挙における農業政策は、単に農家のため、あるいは目先の食料価格のためだけのものではありません。それは、気候変動に強く、すべての人が安心して栄養ある食事を得られ、豊かな自然環境を次世代に引き継ぐ、持続可能な社会を築くための設計図そのものです。
この記事をきっかけに、各政党が描く「食と農の未来」に関心を持っていただき、ご自身の価値観と照らし合わせて、未来を託す一票を投じてみませんか。その一票が、日本の農業、そして私たちの地球の未来をより良い方向へと導く、確かな力になるはずです。
執筆:脱炭素とSDGsの知恵袋 編集長 日野広大
参考資料:
- 農林水産省「みどりの食料システム戦略」
- 農林水産省「食料自給率・食料自給力について」
- 2025年参議院選挙、農業政策で日本の未来が変わる?あなたの暮らしと投票先のヒント)
コメント