こんにちは。「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野広大です。私たちのメディア運営元であるFrankPRは、SDGsへの貢献が評価され、政府SDGs推進本部より「ジャパンSDGsアワード」外務大臣賞をいただいた実績があります。その専門的知見から、今回はSDGsの普及に関する最新調査データを深掘りし、その数字の裏に隠された日本の現状と、私たちが次に向かうべき方向性を解説します。
株式会社クロス・マーケティングが発表した「SDGsに関する調査(2025年)」によると、日本のSDGs認知率は83%に達し、4年連続で横ばいとなりました。この数字だけを見れば、SDGsは国民的用語として定着したと言えるでしょう。しかし、その内実を見ると、「認知」から「理解・行動」への移行が停滞する”高原状態”と、一部で見られる「SDGs疲れ」とも呼べる現象が浮かび上がってきます。
- 本記事のポイント
- SDGs認知率83%という数字が示す「光と影」。
- テレビ、SNS…情報源によって全く異なるSDGsの「印象」。
- なぜ?「ジェンダー平等」は広く知られているのに、重要だと思われないのか。
- 「SDGs疲れ」の正体と、それを乗り越え、次の一歩を踏み出すためのヒント。
8割が知るSDGs、しかしその実態は?最新調査が示す「認知の高原状態」
今回の調査で最も象徴的なのは、SDGsの認知率(「名称も内容も知っている」+「名称は聞いたことがある」)が83%に達し、2022年からほぼ横ばいであるという点です。これは、SDGsという言葉が社会の隅々にまで浸透したことを示しています。
しかし、注目すべきは「中身」です。
SDGs認知者のうち学校や職場で教育・研修を受けた人は15%と昨年よりやや低下。
(出典: FNNプライムオンライン / PR TIMES 2025/6/24)
言葉は知っていても、その本質を学ぶ機会を得ている人はまだ少数派です。これは、SDGsが「なんとなく知っている」という段階で足踏みしている、いわば「認知のプラトー(高原状態)」に陥っている可能性を示唆しています。登山に例えるなら、多くの人が8合目までたどり着いたものの、そこから頂上を目指す意欲や道筋が見えにくくなっている状態かもしれません。
あなたはどこでSDGsを知りましたか?メディアで変わるSDGsの”顔”
今回の調査で非常に興味深いのは、SDGsに触れるメディアによって、受け取る印象が大きく異なる点です。
- テレビ、Webニュース、新聞などマスメディア
「気候変動の原因に対して自分ができることの事例」など、個人の行動を促すポジティブな情報が印象に残りやすい傾向にあります。 - YouTube
「有名人がSDGsを支持し商品や活動をPR」といった、インフルエンサーを通じた発信が強く印象に残っています。 - X (旧Twitter)
「中身がなく言葉だけ流行るSDGsに「もういいよ」的な反応」といった、冷笑的・批判的な意見が目立つという結果が出ています。
これは、私たちが「SDGs」という同じ言葉を使いながら、情報経路によって全く違うイメージを抱いている可能性を示しています。特にSNSで見られるネガティブな反応は、一部で語られる「SDGs疲れ」の兆候であり、その背景にある「見せかけの取り組み(SDGsウォッシュ)」への不信感の表れとして真摯に受け止める必要があります。
なぜ?「ジェンダー平等」の認知は高いが、重要度は低いという日本の現実
今回の調査結果で、日本の課題を最も鋭く映し出しているのが、17の目標に対する意識のギャップです。
- 認知度が高い目標TOP3:
- 貧困をなくそう
- ジェンダー平等を実現しよう
- 飢餓をゼロに
- 重要だと思う目標TOP3:
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
驚くべきことに、認知度では2位のSDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」は、重要度のランキングでは15番手まで順位を落としています。
これは、「ジェンダー平等」という言葉は知っていても、それが自分たちの社会にとって喫緊の重要課題であるという認識が、まだ十分に共有されていないことの表れかもしれません。「知っていること」と「大切だと思うこと」の間に横たわるこの深い溝は、今後の日本のSDGs達成における大きな課題と言えるでしょう。
「SDGs疲れ」を乗り越え、次のステップに進むための視点
では、私たちは「認知のプラトー」や「SDGs疲れ」を乗り越え、どうすれば「行動」のフェーズに進めるのでしょうか。専門家の視点から3つのポイントを提案します。
- ウォッシュではない「本物の取り組み」を示す
企業や団体は、耳障りの良いスローガンだけでなく、具体的な目標、進捗、さらには失敗談さえもオープンに語る「正直なコミュニケーション」が求められます。誠実な姿勢こそが、SNS時代の不信感を払拭する鍵です。 - 総論から「自分にできる各論」へ
「気候変動を止めよう」という大きな話だけでなく、「テレビで見たこの方法なら自分にもできるかも」と思わせるような、身近で具体的なアクションの提示が重要です。調査結果は、多くの人がそうした情報を求めていることを示しています。 - 「きれいごと」で終わらせない対話の重要性
「ジェンダー平等は重要度が低い」というような、耳の痛い現実から目を背けず、「なぜそう思うのか?」を社会全体で対話していく必要があります。多様な意見のぶつかり合いの中からしか、本質的な理解と共感は生まれません。
まとめ:”知っている”から”行動する”フェーズへ。SDGs達成に向けた私たちの役割
SDGsの認知率83%は、先人たちの努力の大きな成果です。しかし、その数字に安住している時間はありません。2030年の目標達成期限まで、残された時間はあとわずかです。
これからは、私たち一人ひとりが「SDGsを知っている消費者」から、その本質を理解し、企業の姿勢を見極め、自ら行動する「責任ある市民」へと意識をアップデートしていく必要があります。今回の調査結果は、そのための出発点となる、貴重な羅針盤を示してくれているのです。
執筆:脱炭素とSDGsの知恵袋 編集長 日野広大
参考資料:
- FNNプライムオンライン / PR TIMES「テレビ・新聞・WebのSDGs情報で印象に残るのは「自分ができる気候変動対策」 SDGsの認知率は4年連続横ばいの83%」(2025/6/24)
- 株式会社クロス・マーケティング「SDGsに関する調査(2025年)」
【メタディスクリプション案】
【OGP文案】
SDGs、実は「知ってるだけ」?認知率83%の裏に潜む日本の課題。「SDGs疲れ」や「ジェンダー平等」への本音など、最新調査から見えたリアルを専門家が解説。次のステップへ進むためのヒントがここに。
コメント