【2025年6月施行】職場の熱中症対策ついに義務化!3割の企業が「知らない」現実と、SDGs視点で取り組むべき具体策とは?

【2025年6月施行】職場の熱中症対策ついに義務化!3割の企業が「知らない」現実と、SDGs視点で取り組むべき具体策とは?

暑い環境で働く建設作業員のイメージ

2025年6月より、職場における熱中症対策が企業の義務となります(画像はイメージです)

脱炭素とSDGsの知恵袋の編集長、日野広大です。私たちの取り組みは、政府のSDGs推進本部からも評価(ジャパンSDGsアワード外務大臣賞)をいただいておりますが、その専門的知見を活かし、今回は目前に迫った重要な法改正と、それが私たちの働き方、そして企業のあり方にどう関わるのかを解説します。

地球沸騰化とも言われる現代、夏の暑さは年々厳しさを増しています。そんな中、働く人々の命と健康を守るため、2025年6月1日から職場における熱中症対策が法律で義務化されることをご存知でしょうか。しかし、驚くべきことに、この重要な変更を「知らない」企業が約3割も存在するという調査結果が明らかになりました。

この記事では、以下の点について、SDGsの視点も交えながら専門的に、そして分かりやすく解説します。

  • 何が変わる? 2025年6月からの「熱中症対策義務化」のポイント
  • なぜ義務化? 気候変動と労働者の安全、そしてSDGsとの深いつながり
  • 企業の現状は? 帝国データバンク調査が示す認知度と対策の課題
  • 具体的に何をすべき? 企業が取り組むべき熱中症対策と先進事例
  • 私たちにできること: 持続可能な職場環境の実現に向けて

目次

ニュース概要:目前に迫る「職場の熱中症対策義務化」とは?

Forbes JAPANの報道によると、2025年6月1日に施行される改正労働安全衛生規則により、特定の条件下で作業を行う企業に対し、熱中症予防のための体制整備や手順作成、関係者への周知などが義務付けられます。

ニュースのポイント(Forbes JAPANより)

  • 施行日: 2025年6月1日
  • 対象: WBGT(暑さ指数)28以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超える作業が見込まれる場合。
  • 義務内容: 体制整備、熱中症発生時の対応手順作成、関係者への周知。
  • 企業の認知度: 「詳しく知っている」は2割未満、「知らない」が約3割(帝国データバンク調査)。
  • 対策状況の課題: クールビズや水分補給は進む一方、義務化措置に該当する「報告体制の構築」や「緊急連絡先の周知」、「熱中症の具体的把握手段(ウェアラブル機器等)」の導入は1割程度と低い。

出典: 熱中症対策義務化が目前、知らない企業3割の現実と対策 (Forbes JAPAN)職場における熱中症対策の強化について (厚生労働省)

この法改正は、単なる努力義務から法的な「義務」へとステップアップするものであり、違反した場合には罰則が科される可能性も視野に入れる必要があります。

なぜ今、熱中症対策が「義務」に?背景にある気候変動とSDGs

熱中症対策の義務化は、単に季節的な健康問題への対応強化というだけではありません。より大きな背景には、深刻化する気候変動と、持続可能な開発目標(SDGs)への意識の高まりがあります。

地球沸騰化時代のリスク:増え続ける労働災害としての熱中症

近年、夏の記録的な猛暑は常態化しつつあり、屋外だけでなく屋内作業においても熱中症のリスクは著しく増大しています。実際に、労働災害としての熱中症の発生件数も高い水準で推移しており、働く人々の安全を脅かす深刻な問題となっています。今回の義務化は、こうした気候変動がもたらす労働環境の変化への具体的な「適応策」の一つと位置づけられます。これはSDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」に直結する動きです。

SDG3とSDG8の視点:健康で安全な労働環境は企業の責務

働くすべての人々が健康で安全に仕事に従事できる環境を整備することは、企業の基本的な責務です。今回の法改正は、まさにSDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」およびSDGs目標8「働きがいも経済成長も」(特にターゲット8.8「労働者の権利を保護し、安全かつ確実な労働環境を促進する」)の達成に貢献するものです。
熱中症対策は、従業員の健康を守るだけでなく、労働生産性の維持・向上、さらには企業の社会的評価にも繋がる重要な取り組みと言えるでしょう。

企業の認知度は?帝国データバンク調査に見る深刻な現状

帝国データバンクの調査によれば、熱中症対策の義務化について「詳しく知っている」企業は17.4%に留まり、「知らない」と回答した企業が28.3%にものぼりました。

特に、建設業では認知度が約8割と高い一方、不動産業や小売業では4割程度と、業種によるばらつきも見られます。しかし、熱中症のリスクは屋外作業に限らず、空調設備が不十分な屋内や、高温多湿な環境での作業など、あらゆる業種に潜んでいます。この認知度の低さは、対策の遅れに直結しかねない憂慮すべき事態です。

具体的に何をすべき?改正労働安全衛生規則のポイント解説

では、企業は何を具体的に行わなければならないのでしょうか。厚生労働省の資料に基づくと、主に以下の3つの柱が求められます。

  1. 体制の整備:
    • 熱中症予防に関する計画の策定。
    • 熱中症予防に関する担当者の選任。
    • 作業環境に応じたリスク評価と、それに基づく管理体制の構築。
  2. 手順の作成:
    • WBGT値(暑さ指数)※の測定と、それに応じた作業中止・休憩基準の設定。
    • 作業者への水分・塩分補給の具体的な指示方法。
    • 熱中症の症状が出た場合の救急措置、緊急連絡体制、搬送手順の明確化。
  3. 関係者への周知:
    • 上記の体制や手順について、作業者や管理者など関係者全員への教育・周知徹底。
    • 定期的な訓練の実施。

WBGT値(暑さ指数)とは?:気温だけでなく、湿度、日射・輻射(ふくしゃ)熱を取り入れた、熱中症予防のための指標です。乾球温度計、湿球温度計、黒球温度計による測定値から計算されます。専用の測定器も市販されています。

さらに、企業によってはファン付き作業服の支給、休憩場所の確保と冷房設備の設置、作業時間の短縮やシフト変更、ウェアラブルデバイスによる作業者の体調管理なども有効な対策となります。

先進企業の取り組み事例から学ぶ実践的対策

記事で紹介されている企業の具体的な対策例は非常に参考になります。

  • 飲料提供の工夫: 「現場設置の自動販売機を外気温25度以上の場合、1日に2回に分けて無償配布」(大工工事)
  • 働き方の柔軟化: 「現場では元請けに時差出勤や休憩時間の延長をお願い」(鉄筋工事)、「7~9月の外出をともなう営業活動を自粛。昨年はWEB打ち合わせでなんとかなった」(卸売)、「リモートワークの強化を積極的に推進」(広告関連)
  • 経済的サポート: 「6月から9月まで熱中症対策手当を支給」(一般電気工事)
  • 服装規定の見直し: 「数年前よりノーネクタイを社内標準とし、2025年度より社員制服を廃止」(教育サービス)
  • マニュアルと体制整備: 「熱中症対策マニュアルを作成し、高温・多湿の現場では定期的な休憩と水分補給を指示。熱中症になった場合は担当者より報告し、近隣の病院を受診することを規則化」(メンテナンス・警備・検査)

これらの事例は、業種や事業規模に応じてカスタマイズできるヒントに満ちています。

まとめ:命を守り、持続可能な職場を作るために企業ができること

2025年6月からの熱中症対策義務化は、企業にとって新たな負担と感じるかもしれません。しかし、これは従業員の生命と健康を守るという、企業が果たすべき最も基本的な社会的責任の一つです。そして、気候変動が進行する中で、持続可能な事業運営を行うための「適応策」でもあります。

企業経営者や人事労務担当者の方々は、まず自社の現状を把握し、法改正の内容を正しく理解することから始めてください。そして、形式的な対応に留まらず、従業員一人ひとりの声に耳を傾け、実効性のある対策を講じることが求められます。

私たち一人ひとりも、職場の熱中症対策に関心を持ち、疑問があれば声を上げ、積極的に予防行動をとることが大切です。安全で健康的な職場環境は、企業と従業員双方の努力によって築かれるものです。この法改正を機に、すべての働く人が安心して能力を発揮できる社会の実現に向けて、一歩進んでいきましょう。



参考資料: Forbes JAPAN、厚生労働省、帝国データバンク


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