家庭の天ぷら油が空を飛ぶ!東京都の廃食用油SAF化キャンペーンでSDGsに貢献

皆さん、こんにちは。「脱炭素とSDGsの知恵袋」編集長の日野広大です。私たちのメディアは、SDGs達成に向けた企業の取り組みが評価され、政府SDGs推進本部からジャパンSDGsアワード(外務大臣賞)を受賞したFrankPR株式会社が運営しています。

その専門性を活かし、今回は「え、あの天ぷら油が飛行機を飛ばすの?」と驚きの声が聞こえてきそうな、東京都の画期的な取り組みについてご紹介します。家庭で出る使い終わった食用油(廃食用油)を回収し、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)として再生させるキャンペーンが始まりました。これは、私たちの身近な行動が地球の未来、特に脱炭素SDGs達成にどう繋がるのかを具体的に示してくれる素晴らしい事例です。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC026XD0S5A500C2000000/

この記事のポイント

  • 東京都が家庭の廃食用油をSAF(再生航空燃料)の原料として回収するキャンペーンを開始。
  • 回収期間は2025年5月2日から10月31日まで、都内約80カ所で実施。
  • 東京2025世界陸上を契機に、SAFの認知度向上と航空分野のCO2排出削減を目指す。
  • SAFとは何か?なぜ今注目されているのか?その仕組みと環境効果を分かりやすく解説。
  • 私たち市民がこの取り組みにどう参加でき、サーキュラーエコノミーに貢献できるか。
目次

東京都が開始!家庭の廃食用油を再生航空燃料(SAF)へ:その仕組みと目的

東京都は2025年5月2日、家庭で使い終わった食用油を回収し、次世代のクリーンエネルギーとして注目されるSAFの原料とするキャンペーンを開始しました。この取り組みは、都民一人ひとりが地球温暖化対策に参加できる機会を提供するものであり、SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」や目標13「気候変動に具体的な対策を」に直結します。

いつからいつまで?どこで?回収キャンペーンの概要

  • 回収期間: 2025年5月2日(金)~ 2025年10月31日(木)
  • 回収場所: 都内の区市町村施設など、約80カ所(詳細は東京都のウェブサイトなどでご確認ください)
  • 対象となる油: 家庭から出る植物性の使用済み食用油(サラダ油、菜種油、大豆油など)。
  • ※事業活動で出た油、動物性油(ラードなど)、鉱物性油(機械油など)は対象外です。
  • 出し方:
  1. 油を十分に冷ます。
  2. 油カスなどを取り除く。(こし器やキッチンペーパーなどを使用)
  3. 空のペットボトルなど、フタのできる容器に入れる。
  4. 回収場所に設置された回収ボックスへ持ち込む。
  • 回収された油の行方: 集められた廃食用油は、堺市にある国内初のSAF製造プラントへ運ばれ、精製された後、羽田空港などで実際の航空燃料として使用される予定です。

今回のキャンペーンは、9月に開催される「東京2025世界陸上」に合わせて実施されます。多くの選手や関係者が航空機で来日するこの機会に、航空分野の脱炭素化の切り札とされるSAFの存在を広く都民に周知し、環境意識の向上を図る狙いがあります。小池百合子都知事も「天ぷらの油が飛行機を飛ばす。(国際的なイベントを機に)新たなレガシーを残していきたい」と意気込みを語っています。

なぜ今SAF?航空業界の脱炭素化と地球温暖化対策

航空業界は、世界のCO2排出量の約2~3%を占めると言われており、その削減は喫緊の課題です。電気自動車(EV)のように航空機をバッテリーで動かすのは、長距離・大型機では技術的に難しく、水素燃料の実用化にも時間がかかります。そこで、既存の航空機やインフラをほぼそのまま活用でき、かつCO2排出量を大幅に削減できるSAFが、現実的かつ効果的な解決策として期待されています。

国際民間航空機関(ICAO)は「CORSIA」という国際的な排出削減制度を導入しており、各国政府もSAFの導入目標を掲げています。日本政府も「GX(グリーン・トランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」の中で、2030年までに国内航空会社の燃料使用量の10%をSAFに置き換える目標を設定しています(参考:経済産業省 GX実現に向けた基本方針)。

SAF(持続可能な航空燃料)とは?未来の翼を支えるクリーンエネルギー【専門家解説】

「SAF」という言葉を初めて聞く方もいらっしゃるかもしれませんね。SAFは「Sustainable Aviation Fuel」の略で、日本語では「持続可能な航空燃料」と訳されます。その最大の特徴は、原料の生産から燃焼までのライフサイクル全体で、従来のジェット燃料(化石燃料由来)に比べてCO2排出量を大幅に削減できる点です。

廃食用油からジェット燃料へ:驚きの技術と環境効果

今回の東京都のキャンペーンで集められる廃食用油は、SAFの多様な原料の一つです。他にも、木くずなどのバイオマス、都市ごみ、微細藻類などが原料として研究・開発されています。

身近な例で考えてみましょう。天ぷらを揚げた後の油、普段なら捨ててしまうか、固めて可燃ごみに出すことが多いですよね。この廃食用油が、化学的な処理(エステル交換や水素化処理など)を経ることで、航空機を飛ばすジェット燃料とほぼ同じ成分に生まれ変わるのです。これはまさに、廃棄物を価値ある資源に変えるサーキュラーエコノミー(循環型経済)の実践であり、SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」にも貢献します。

廃食用油由来のSAFは、原料が植物由来であるため、燃焼時に排出されるCO2は、原料となる植物が成長過程で光合成によって吸収したCO2と相殺される(カーボンニュートラルに近い)と考えられています。ライフサイクル全体で見ると、従来のジェット燃料と比較して約80%程度のCO2排出削減効果があるとされています。

国内外のSAF導入動向と日本の目標

世界的にSAFの導入は加速しており、欧州連合(EU)では航空会社に対するSAFの使用割合の義務化が進んでいます。日本でも、前述の政府目標に加え、全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)といった大手航空会社がSAFの利用を積極的に開始しており、今回の東京都のような自治体レベルでの原料回収の動きは、国内でのSAFサプライチェーン構築を後押しするものとして非常に重要です。

私たちFrankPRも、企業の脱炭素戦略コンサルティングや、再生可能エネルギー導入支援などを通じて、こうした新しい技術や社会システムの移行をサポートしています。今回の東京都の取り組みは、市民を巻き込んだ素晴らしいイノベーションだと感じています。

「天ぷら油で飛行機を」は夢じゃない!このキャンペーンが示す大きな可能性

小池都知事の言葉通り、「天ぷら油で飛行機を飛ばす」ことは、もはやSFの世界の話ではありません。この東京都のキャンペーンは、私たちにいくつかの重要な可能性を示してくれています。

市民参加で実現するサーキュラーエコノミーとCO2削減

最大の意義は、私たち市民一人ひとりが、日常生活の小さな行動を通じて、地球規模の課題である気候変動対策や資源循環に直接貢献できるという点です。これまで「ごみ」として扱われていたものが、価値ある「資源」へと変わる。この体験は、環境問題への意識を高め、さらなる行動変容を促すきっかけとなるでしょう。**SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」**にも繋がる取り組みです。

東京2025世界陸上と「新たなレガシー」への期待

2025年に開催される東京世界陸上は、世界中から多くの人々が訪れる国際的なイベントです。この機会に、日本、そして東京が、環境先進都市として具体的なアクションを示し、持続可能な社会への強い意志を発信することは、非常に大きな意味を持ちます。廃食用油から作られたSAFで選手団を乗せた飛行機が飛ぶ、そんな光景が実現すれば、まさに「新たなレガシー」として記憶されるのではないでしょうか。

私たちにできること:廃食用油リサイクルと地球に優しい暮らし

では、このキャンペーンを通じて、私たちは具体的に何ができるでしょうか?

  • キャンペーンに積極的に参加する:
  • お住まいの地域や職場の近くに回収ボックスがあるか確認しましょう。
  • 廃食用油が出たら、正しい方法(冷まして、カスを取り除き、ペットボトルへ)で回収に協力しましょう。
  • 情報を広める: この取り組みを家族や友人、SNSなどで共有し、より多くの人に知ってもらいましょう。
  • 家庭での油の使い方を見直す:
  • 揚げ物の回数を少し減らしてみる。
  • 炒め物など、油の使用量が少ない調理法を選ぶ。
  • 油を最後まで使い切る工夫をする(例:揚げ油を炒め物に再利用する際は酸化に注意)。
  • 企業の取り組みを応援する:
  • SAFを積極的に導入している航空会社を選ぶ(将来的に)。
  • 飲食店などで廃食用油リサイクルに取り組んでいるお店を応援する。

企業の方であれば、社員食堂や事業所から出る廃食用油のリサイクルルートを確立したり、従業員向けに家庭からの廃食用油回収を呼びかけたりすることも考えられます。

まとめ:小さな一滴から始まる、空の脱炭素革命

東京都が始めたこの廃食用油回収キャンペーンは、一見小さな取り組みに見えるかもしれません。しかし、多くの都民が参加することで、集まる油の量は決して少なくないでしょう。そして何より、この活動を通じてSAFの重要性やリサイクルの意義が広まり、環境意識の高い社会へと繋がっていくことが期待されます。

SAFの本格的な普及には、原料の安定確保、製造コストの低減、供給インフラの整備など、まだ多くの課題があります。しかし、家庭から出る廃食用油という身近なものを活用する今回の試みは、そうした課題解決に向けた重要な一歩であり、「小さな一滴から、空の脱炭素革命が始まる」と言っても過言ではないでしょう。

皆さんもぜひ、この機会に廃食用油のリサイクルに参加し、地球の未来のためにできることを見つけてみませんか?

さらに詳しく知るために

  • 東京都環境局ウェブサイト(キャンペーン詳細など)
  • 資源エネルギー庁 SAFに関する特設ページ
  • 国土交通省航空局 航空分野の脱炭素化に関する情報
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次