鉄のエコ化「革新電気炉」とは?脱炭素とエネルギー問題を優しく解説

革新電気炉の解説
目次

はじめに:なぜ「脱炭素」が大切なの?

最近、「脱炭素(だつたんそ)」や「カーボンニュートラル」という言葉をよく聞くようになりましたね。これは、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを、できるだけ出さないようにしよう、出ちゃった分は吸収するなどして差し引きゼロにしよう、という世界的な取り組みのことです。

地球温暖化が進むと、異常気象が増えたり、海面が上昇したり、私たちの暮らしや自然環境に大きな影響が出ると言われています。だから、未来の地球のために、社会全体でCO2を減らす努力が必要になっているんです。

鉄づくりとCO2:「産業のコメ」が抱える課題

私たちの身の回りにある自動車、ビル、橋、家電製品など、多くのものに「鉄」が使われています。鉄は昔から日本の産業を支え、「産業のコメ」とも呼ばれてきました。

でも、この鉄を作る工程では、たくさんのCO2が出てしまうという課題があります。特に、原料の鉄鉱石から鉄を取り出すために石炭を燃やす「高炉(こうろ)」という方法では、大量のCO2が排出されてしまうのです(鉄1トン作るのに、CO2が約2トンも出る!)。

世界中で脱炭素が求められる中、鉄鋼業界もCO2排出量の少ない、環境に優しい鉄づくりへの転換、つまり「グリーンスチール」の実現を目指しています。

新しい鉄の作り方:「革新電気炉」って何?

そこで注目されているのが、「革新電気炉(かくしんでんきろ)」 という新しい技術です。これは、大手鉄鋼メーカーのJFEスチールなどが開発を進めているものです。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC090CQ0Z00C25A4000000

革新電気炉とは?

  • 電気の力を使って鉄スクラップ(使い古された鉄製品など)や特殊な加工をした鉄鉱石(直接還元鉄)を溶かして、新しい鉄を作る炉のこと。
  • 従来の高炉のように石炭を大量に使わないため、鉄を作る際のCO2排出量を大幅に減らすことができます(鉄1トンあたり0.5トン〜1.5トン程度に)。

この技術が実現すれば、日本の鉄鋼業が環境に優しくなり、国際的な競争力も保つことができると期待されています。JFEスチールでは、岡山県倉敷市にある工場で、2028年頃からこの革新電気炉での生産開始を目指しています。

エコ技術の悩み:大量の電気が必要に!

ただし、この革新電気炉には大きな課題があります。それは、ものすごく大量の電気を消費するということです。

なぜ電気が必要?

  • 従来の高炉では、石炭を燃やすことで出るガス(副生ガス)を製鉄所内の発電に利用できたため、外部から買う電気は少なくて済みました。
  • 一方、電気炉では、電気の力で直接、炉の温度を上げて鉄を溶かすため、外部からの電力供給がたくさん必要になります。
  • 試算によると、革新電気炉は従来の高炉の9倍以上もの電力が必要になると言われています。

CO2は減らせるけれど、その分、たくさんの電気が必要になる。これが、新しい技術が抱えるジレンマなのです。

電気はどうする?:再エネだけじゃ足りない?

「じゃあ、太陽光や風力みたいな再生可能エネルギー(再エネ)を使えばいいんじゃない?」と思うかもしれません。もちろん、再エネはCO2を出さないクリーンな電気を作る上でとても重要です。

しかし、記事によると、JFEの社長さんは再エネだけでは難しいと考えているようです。

再エネの課題

  • 天候に左右される: 太陽光は夜や曇りの日、風力は風が弱い日には発電できません。そのため、常に安定して電気を送るのが難しいのです。
  • コスト: 不安定さをカバーするために電気を溜めておく「蓄電池」が必要ですが、これが高価で、電気代が上がる原因にもなります。

革新電気炉のような巨大な設備を安定して動かすためには、天候に関係なく、いつでも大量の電気を確実に供給できる電源が必要になります。

注目される原子力:安定して電気を作れる?

そこで、JFEが必要性を訴えているのが「原子力発電」です。

原子力発電に期待される点(JFE社長の視点)

  • 脱炭素: 発電時にCO2を出しません。
  • 安定供給: 天候に左右されず、24時間、大量の電気を安定して作ることができます。
  • コスト: (社長の主張によれば)再エネ+蓄電池よりも安価に安定供給できる可能性がある。

JFEは、自社の工場に電気を供給している中国電力の島根原発(島根県松江市)の活用(再稼働と新設)を国に求めています。

もちろん、原子力発電については、過去の事故や使用済み核燃料の処理など、安全性に関する様々な議論があることも事実です。その上で、産業界からは「脱炭素」と「電力の安定供給」を両立するための選択肢として、原子力の必要性を訴える声が出ているのです。

未来のエネルギー:社会全体の課題

鉄鋼業だけでなく、これからはAI(人工知能)を動かすためのデータセンターや、半導体を作る工場、電気自動車(EV)の普及などによって、日本全体で電気の使用量がますます増えていくと予想されています(2040年度には今より2割以上増えるという試算も!)。

CO2を減らしながら、増え続ける電力需要にどう応えていくのか。再エネを最大限に活用しつつ、原子力をどう位置づけるのか。省エネ技術をさらに進めることも含めて、日本のエネルギーの未来をどう描くかは、私たち全員に関わる重要な課題と言えるでしょう。

まとめ:サステナブルな社会のために

今回は、鉄鋼業の脱炭素化の取り組み「革新電気炉」と、それに伴う電力需要の増加、そして原子力発電への期待というニュースを解説しました。

環境に優しい社会(サステナブルな社会)を実現するためには、技術開発だけでなく、エネルギーをどう作り、どう使うかという根本的な問題を考えていく必要があります。

私たち一人ひとりが、エネルギーの大切さを理解し、日々の省エネを心がけることも、未来への貢献につながるかもしれませんね。

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