風力発電とは?仕組み・メリット・デメリットを分かりやすく解説【SDGs・脱炭素】

【用語解説】風力発電の仕組みや現状は?SDGsへの貢献も徹底解説!

風力発電とは?仕組み・メリット・デメリットを分かりやすく解説【SDGs・脱炭素】

近年、地球温暖化対策や持続可能な社会の実現に向け、再生可能エネルギーへの注目が高まっています。その中でも「風力発電」は、太陽光発電と並んで重要な役割を担うと期待されている発電方法です。

この記事では、風力発電の基本的な仕組みから、メリット・デメリット、SDGsや脱炭素との関わり、そして日本の現状と今後の展望について、分かりやすく解説します。

目次

風力発電の基本

まずは、風力発電がどのようなものか、基本的なところから見ていきましょう。

風力発電の定義と仕組み

風力発電とは、風の運動エネルギーを利用して発電機を回し、電気エネルギーに変換する発電方式です。

簡単に言うと、大きな「風車(ふうしゃ)」を風の力で回転させ、その回転エネルギーを電気に変える仕組みです。

  1. 風がブレード(羽根)を回す: 風が風車のブレードに当たると、飛行機の翼と同じような揚力(ようりょく)が発生し、ブレードが回転します。
  2. 回転を増速機で速める: ブレードの回転は比較的ゆっくりなので、増速機(ぞうそくき)という歯車の装置を使って回転速度を上げます。
  3. 発電機で電気を作る: 高速になった回転力を利用して発電機を回し、電気を作り出します。
  4. 電力を供給する: 作られた電気は、変圧器で適切な電圧に調整された後、送電線を通じて私たちの家庭や工場などに届けられます。

風力発電の種類

風力発電は、設置される場所によって大きく2つの種類に分けられます。

陸上風力発電

文字通り、陸地に設置される風力発電です。

  • メリット: 建設やメンテナンスが比較的容易で、コストも洋上より抑えやすい傾向があります。
  • デメリット: 設置に適した広い土地が限られること、景観への影響や騒音問題などが課題となることがあります。

洋上風力発電

海の上に設置される風力発電です。海底に基礎を固定する「着床式(ちゃくしょうしき)」と、海に浮かべる「浮体式(ふたいしき)」があります。

  • メリット: 陸上よりも強い風が安定して吹くため、効率的に発電できます。また、陸地から離れているため、騒音や景観への影響を抑えやすいです。広大な海域を利用できるため、大規模な発電所を建設しやすい点も魅力です。
  • デメリット: 建設やメンテナンスのコストが高く、技術的なハードルも陸上より高いです。台風など厳しい自然環境への対策も必要になります。

風力発電のメリット

風力発電には、環境面やエネルギー供給面で多くのメリットがあります。

環境への貢献

  • CO2排出量が少ない: 発電時に二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを排出しません。地球温暖化対策に大きく貢献します。
  • クリーンなエネルギー源: 大気汚染や水質汚濁の原因となる物質を排出しません。

エネルギー供給

  • 純国産エネルギー: 風は自然界に存在するエネルギーであり、燃料の輸入に頼る必要がありません。エネルギー自給率の向上につながります。
  • 再生可能エネルギー: 風は枯渇することのないエネルギー源です。持続可能なエネルギー供給に貢献します。

経済効果

  • 関連産業の活性化: 風車の製造、建設、メンテナンスなど、新たな産業や雇用を生み出す可能性があります。
  • 地域の活性化: 発電所の建設や運営により、地域経済への貢献も期待されます。

風力発電のデメリットと課題

多くのメリットがある一方、風力発電には克服すべきデメリットや課題も存在します。

環境への影響

  • 騒音: ブレードの回転音や風切り音が、周辺住民にとって騒音となる場合があります。特に低周波音(人間の耳には聞こえにくい低い音)による健康影響を懸念する声もあります。
  • バードストライク: 回転するブレードに鳥が衝突してしまう事故(バードストライク)が発生することがあります。生態系への影響が懸念されます。
  • 景観への影響: 大型な風車が景観を損ねると感じる人もいます。

安定供給とコスト

  • 出力変動: 風の強さや向きによって発電量が変わるため、安定した電力供給が難しい側面があります。蓄電池の導入や他の電源との組み合わせ(ベストミックス)が必要です。
  • 発電コスト: 以前に比べてコストは低下していますが、特に洋上風力発電はまだ他の電源に比べてコストが高い場合があります。技術開発によるコスト削減が求められています。

立地制約

  • 適した場所の確保: 安定した強い風が吹き、周辺環境への影響が少なく、送電網への接続が可能な場所は限られています。特に日本では、山がちで平地が少ない、地震や台風が多いといった地理的・気象的な制約があります。

SDGs・脱炭素とのつながり

風力発電は、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」や、世界的な目標である「脱炭素(カーボンニュートラル)」の達成に不可欠な技術です。

SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」

風力発電は、クリーンで持続可能なエネルギーへのアクセスを確保するという目標7に直接貢献します。化石燃料への依存を減らし、環境負荷の少ないエネルギー供給を実現します。

SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」

発電時にCO2を排出しない風力発電は、気候変動の主な原因である温室効果ガスの削減に貢献し、目標13の達成を後押しします。

カーボンニュートラルへの貢献

2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを実現するためには、電力部門の脱炭素化が鍵となります。風力発電は、太陽光発電などと共に、その中心的な役割を果たすことが期待されています。

日本の風力発電の現状と取り組み

日本でも、脱炭素社会の実現に向けて風力発電の導入が積極的に進められています。

導入状況と目標

日本の風力発電導入量は着実に増加していますが、欧州諸国などに比べるとまだ少ないのが現状です。政府は、2030年度の電源構成において、再生可能エネルギー全体の比率を36~38%に高める目標を掲げており、その中で風力発電(特に洋上風力)の導入拡大に力を入れています。

  • 2021年度末時点の導入量: 約458万kW (陸上: 約453万kW, 洋上: 約5万kW)
  • 政府目標 (2030年): 陸上: 1,790万kW, 洋上(着床式): 570万kW (合計: 2,360万kW)
  • 政府目標 (2040年): 洋上風力 3,000万kW~4,500万kW

出典: 資源エネルギー庁などの公表データに基づき作成。最新のデータは変動する可能性があります。

主な政策 (FIT/FIP制度)

再生可能エネルギーの導入を後押しするため、日本では「FIT制度(固定価格買取制度)」や「FIP制度(フィードインプレミアム制度)」が導入されています。

  • FIT制度: 再生可能エネルギーで作られた電気を、国が定めた価格で一定期間、電力会社が買い取ることを義務付ける制度。
  • FIP制度: 再生可能エネルギー発電事業者が市場価格で電気を売る際に、一定のプレミアム(補助額)を上乗せする制度。市場連動を促し、自立的な普及を目指します。

洋上風力発電への期待

四方を海に囲まれた日本では、洋上風力発電のポテンシャルが大きいと考えられています。政府は、洋上風力発電の導入を加速するための法整備や支援策を進めており、今後、各地で大規模な洋上ウィンドファーム(集合型風力発電所)の建設が計画されています。

風力発電の未来と私たちにできること

風力発電は、技術開発によってさらなる進化が期待されています。

技術開発の動向

  • 風車の大型化: より多くの風を受けられるように、風車は大型化する傾向にあります。
  • 浮体式洋上風力発電: 水深の深い海域にも設置可能な浮体式の技術開発が進んでいます。これにより、日本の設置可能エリアが大幅に広がると期待されています。
  • 効率向上と低コスト化: ブレードの素材改良や制御技術の高度化により、発電効率の向上とコスト削減が進められています。

私たちにできること

風力発電をはじめとする再生可能エネルギーの普及は、国や企業だけの課題ではありません。私たち一人ひとりにもできることがあります。

アクションポイント:

  • 関心を持つ: 再生可能エネルギーや地球環境問題について学び、関心を持ち続けること。
  • 省エネルギーを心がける: 日々の生活で電気の無駄遣いを減らすこと。
  • 再生可能エネルギー由来の電気を選ぶ: 電力会社が提供する再生可能エネルギーの料金プランを選択する。
  • 情報を発信する: 学んだことや考えを家族や友人と共有する。
  • 地域の取り組みに参加する: 自治体やNPOなどが主催する環境イベントや再エネ導入の取り組みに参加・協力する。

まとめ

風力発電は、風の力を利用したクリーンで再生可能なエネルギー源であり、脱炭素社会の実現とSDGs達成に不可欠な技術です。メリットだけでなく、環境影響やコストなどの課題もありますが、技術開発や政策支援によって克服が進められています。

特に日本では、洋上風力発電に大きな期待が寄せられており、今後の導入拡大が注目されます。私たち一人ひとりが関心を持ち、できることから行動していくことが、持続可能な未来を築くための重要な一歩となります。

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この記事を書いた人

ファッション業界として史上初の外務省ジャパンSDGsアワードを受賞した株式会社FrankPRのスタッフです。2024年現在、日本で5社しかいない外務省と環境省のSDGsアワード受賞社長である松尾真希から直接学んできた人材不足や資金不足でもできる経営実践型の脱炭素やサステナビリティの知識を生かしてお役に立てる記事を執筆してまいります。

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